ZELDA「冷たくしないで」

松井常松が出演した番組で、
彼の才能の素晴らしさに驚いた直後、
さらに腰を抜かさんばかりにビックリしたことがある。

ZELDA
の演奏にビックリしたのだ。

ZELDA1980年あたりに起こった
東京ニューウェーヴなるムーヴメントのなかから出てきたガールズバンドで、
黒ずくめの衣装で文学少女の香りのする曲をよく唄っていた。

1993年、そんな彼女らが極彩色の衣装を身にまとい、
唄い演奏していたのが『冷たくしないで』という曲だった。
ホットパンツ姿で声を張りあげ唄うヴォーカルの高橋佐代子嬢を観たとき、
僕はある意味「人はここまで変化するのか」とつくづく思わされた。

帽子をかぶり、ささやくような繊細な声で唄っていた当時からは、
本当に想像できなかったのだ。
しかもこの曲・・・
ZELDAの数ある曲のなかで
僕がいまもいちばん憶えているのだがら、
やはり相当なインパクトがあったのだろう。
楽曲的にも、すぐれた曲だと思う。

僕は1度だけZELDAのメンバーと握手したことがある。
僕がたまに行っていた新宿アルタ
3Fのモッズ系のお店に
彼女たちがやってくるというので、見に行ったのだ。
たしか映画“ビリィ・ザ・キッドの新しい夜明け”の
主題歌のキャンペーンがらみでの来店だったと思う。
客はほとんどが女性ばっかで、
すごく居心地の悪い思いをしていたような印象が残っている。

ZELDAのライヴを経験したのも1度だけだ。
僕の先輩が出場した某音楽コンテストのゲストでやって来たのだ。
高橋嬢が手にしているコンパクトミラーにスポットライトを反射させ、
客席に向ける演出はなかなか素敵だったことを憶えている。

このZALDAに関する僕の2つのエピソードは、
どれも
198586年ぐらいのことだ。
以来、
ZELDAの音楽にもニュースにもなかなか触れる機会がなかっただけに、
冒頭の変身ぶりには余計ビックリさせられたのだ。

ZELDAはこの曲をリリースした3年後、
199611月にその活動に終止符を打った。
僕はバンド経験がないので、
バンドが解散するという状況がわからない。
恋人と別れるようなものなのだろうか?

離婚するようなものなのだろうか?

解散というとどうしてもネガティブにとらえてしまいがちだが、
発展的解散というのはやはりあると思う。
ただダラダラと維持していくのではなく、
新たなクリエイティビティを求めて出発するのだ。
現状にウダウダ文句をいいながら続けているより、よほどいい。
やるべきことがをやりつくしたら、次に向かうべきだ。

ZELDAの元メンバーたちだって、
きっとそれぞれのフィールドで自分自身の活動を行っているに違いない。

ZELDA
については熱心なファンとはいえない僕ではあるが、
宝島やビックリハウスに代表される
80年代のサブカルチャーを
リアルタイムで体験した同世代の1人として、
陰ながらエールを贈りたい。


2007.02