渡辺美里「恋したっていいじゃない」
昨日の夕方、渋谷まで打ち合わせに行ってところ、
ハチ公前でダミ声のオヤジが大音響でガナリ立てていた。
右翼の街宣か!?と思い、
駅前のスクランブル交差点を渡るべくその声の方へと近づいていったら、
国民新党の亀井静香であった。
僕は政治家の、こういうセンスが信用できない。
なぜ、街頭でガナらなければいけないのだろう。
あれは、ただの騒音である。
伝えたいことがあるのであれば、大所高所から騒音をまき散らすのではなく、
もっと別のやり方があるはずだ。
これに対して実は僕には、ひとつのアイディアがある。
けど、いまは教えない。
打ち合わせの内容は、想像していたとおり急を要するものだった。
僕は大急ぎで、打ち合わせの内容をまとめ、
この仕事を一緒にやっているデザイナーに指示を出すべく連絡をとろうとした。
しかし、デザイナーがつかまらない。
ケータイにメールをしても返事がないし、電話にも出ない。
思わず先週火曜日の悪夢がよみがえる。
撮影に来るはずだったデザイナーがバイクにひかれそのまま検査入院し、
丸1日半連絡が途絶えたことをついつい思い起こしてしまったのだ。
結局、連絡を取ろうとしたデザイナーからは夜中になっても音沙汰がなく、
僕は心配で何度も目が覚めた。
このデザイナーになにかあったら、すぐさま次の体制を整えなければならない。
時間のない仕事なのに厄介なと思いつつ、
とりあえず朝起きてからスグ、再度デザイナーに連絡をとった。
ら、連絡がとれた。
なんでも昨日、
ケータイを忘れたまま出かけて夜中まで仕事をしていたため、
連絡が取れなかったという。
「バカヤロー」と思いつつも僕はとりあえずホッとした。
そして仕事の概要を説明し、
お昼ごはんを食べながら打ち合わせをする約束をした。
このデザイナーは、前にもこの日記に登場した僕の後輩である。
仕事の話の前に、ごはんを食べながら近況を語り合った。
僕がこの1週間、風邪で断末魔の日々を送っていたことに対し、
彼女は「だいだいタカハシさんは働き過ぎなんですよ」と説教を垂れた。
本来であれば「天下取りを目指すオレに対してナニをぬかすか!!」
と一喝してやりたいところだが、
なんてったって風邪をひいてしまったのは事実だし、
おとなしく彼女のいうことに耳を傾けていた。
ひと通り僕に対する説教が終わった後で、彼女は自分の近況を語り始めた。
「どうも彼氏ができそうなんですよ」とちょっと照れ笑いを浮かべながら、
彼女はいった。
相手はといえば、
僕が彼女に対することを書いた翌日に会うといっていた小学校時代の同級生である。
やはり僕が想像したとおり、
この同級生は彼女と付き合うことが目的で「会いたい」といってきたようなのだ。
最初、久々に再会した当日は、
「聞きたいことがあるので会ってほしい」といってきた割には、
いったいなにを聞きたかったんだろう?という感じのまま別れたらしい。
が、後日「また会ってほしい」という連絡が来て会いに行ったところ
「付き合ってほしい」といわれたそうだ。
「いいことじゃないの」と僕は、後輩の恋愛話を素直に喜んだ。
でも彼女はどこか迷っているようだった。
「前に告白したときと比べて、
私のなかではカッコいいという印象が薄れているんですよ」という彼女に対し僕は、
「んなこといってないで、
また付き合い出したら別のカッコよさだって発見できるかもしれないじゃない。
別にキライというワケじゃないんでしょ? だったら、
とりあえずは付き合ってみるのもいいんじゃない。
それで、どうしてもイヤだったら、
そのときはそのときで考えりゃいいじゃん」と無責任に煽った。
このとき僕の頭のなかでは、
渡辺美里の懐かしいヒット曲『恋したっていいじゃない』が鳴り響いていた♪
彼女にはいま、ボーイフレンドが必要なのだ。
「んー、そうですね。とりあえず、ちょっと落ち着いてみますか」といって、
白身魚のフライをお箸でつまみながら、彼女は明るい笑顔を見せた。
来週、その同級生とまた会う約束をしているという。
そのときに、付き合うか否かの返事をする約束だったのだそうだ。
これで少しでも彼女が、幸せな時間を過ごせるようになればいいなと願う。
彼女には、結婚願望がない。
子供は絶対に産まないと決めている。
幼児期に親に受けた仕打ちがトラウマになって、
自分自身が親になる自信がないからだという。
僕もその気持ちは多少なりとも理解できる。
これから彼女がどういう人生を歩んでいくのかは知らない。
子供を産む幸せもあれば、子供を産まない幸せもある。
どんなカタチであれ、素敵な人生を送ってほしい。
いまふと思ったのだが、
そんなことを心から願っている僕は彼女の先輩というより、
なんだか親戚の伯(叔)父さんのようだ(笑)