宇崎竜童「ジゴロ・ライセンス」


今日219日は僕の誕生日である。
ちなみに昨日は、僕が大好きな中村敦夫さんのお誕生日であった。
敦夫さんは
1940年生まれ。
ジョン・レノンと同い年である。
さらにいえばこれまた僕が大好きな原田芳雄さんも
1940年生まれで、
芳雄さんは
229日生まれである。
あらためて考えてみると子どもの頃から大好きだった
2人の俳優が、
同じ年の同じ
2月生まれというのはなんとも興味深い。

芳雄さんは閏年生まれなので、今年が17回目のお誕生日である。
前々から芳雄さんのお誕生日には
バースデーライブが開催されると聞いていたので楽しみにしていたのだが、
今年初頭の時点ではライブの予定はないとのことだった。
残念に思っていたところ、
1月半ばの週末、
突如としてライブ決定の知らせを聞いた。
一昨年の
11月、芳雄さんの歌手生活30周年記念ライブに
仕事で行けなかった無念を晴らすときが来たのだ。
しかも個人的には
14年ぶりの芳雄さんのライブである。
いまから楽しみで楽しみで仕方がない。
もちろんチケットは確保した。
今度という今度は、芳雄さんのライブに行くのだ。

当日はゲストも予定されている。
果たして誰が出演するのか
? それも興味津々である。

一昨年のライブのときは宇崎竜童さんが来たらしい。
宇崎さんといえば、
ダウン・タウン・ブギウギ・バンドから今日に至るまで多彩な活動を行い、
さまざまな名曲を発表されているが、
なかでも僕がいちばん好きなのは
1983年に発表された
In and Out
というアルバムのオープニングナンバー『ジゴロ・ライセンス』である。

このアルバムが発表された夏にTBSで放映されたドラマ
“夏に恋する女たち”で芳雄さんはホストの役を演じた。
よく僕はこのドラマを観たあとで“ジゴロ・ライセンス”を聴いたものだ。
もちろん、さすがに「よし
! オレもホストを目指そう!!」とは思わなかったが。

それはさておき、昨日は敦夫さんの誕生日なので、
なにか面白いものはないかなと
「中村敦夫」で検索をかけてみた。
ら、“木枯し紋次郎”について詳細に記されている
1つのブログを見つけた。
本来であればブログ名や
URLをここで公開し、
1人でも多くの人たちにこのブログを見てほしいのだが、
ご本人の承諾も得ず勝手にブログの宣伝をするのもいかがかなと思うので
省かせていただく。

このブログを書いているのは福岡在住の女性の方で、
僕より
10歳年上である。
まさにリアルタイムで“木枯し紋次郎”を体験できた世代ではあるが、
この方が“木枯し紋次郎”と出会ったのは
2006年の秋だという。

読者よ! 友よ!! 「線維筋痛症」という病気をご存知だろうか? 
昨年
22日、日本テレビのアナウンサー・大杉君枝 (旧姓・鈴木) さんが自殺したとき、
大杉さんがこの病気に苦しんでいたということを知るまで、
恥ずかしながら僕はそんな病気がこの世に存在することを知らなかった。
全身に激しい痛みが生じる原因不明の病気で、治療法も確立されていない。

昨日発見した“木枯し紋次郎”のブログを書かれている方も、
この「線維筋痛症」を
5年前に発病し、
国内でただ
1か所この病気について独自の治療を行っている福岡市内の小さな医院を頼り、
最後の賭けのつもりで福岡に住まいを移したという。
そこで再放送をしていた“木枯し紋次郎”と出会い、
病気と闘いながら
1日中紋次郎について考えをめぐらせているうちに、
サイトを立ち上げようと思ったそうだ。

しかし爪や髮への刺激、洋服のこすれ、音、湿度や温度の変化などによっても
全身に激痛が走る「線維筋痛症」と闘いながらの毎日である。
そう簡単にパソコン操作もできない。
だが、治療を続けていくうちにお医者さんから
130分だったらパソコンを操作してもいい」との許しが出たという。
それをこのブログを書いてらっしゃる方は「奇跡のような話である」と書いてらした。

それを読んで僕は、強い衝撃を受けた。
日々絶えず襲ってくる激痛と闘いながら、
130分という限られた時間のなかで文章を綴っているのである。
それに比べて、僕がやっていることなんていったい何だろうと思ったのだ。

サラリーマン時代と比べて、
いまは自由になる時間が数倍も数十倍にもなった。
30分なんて時間は1日のなかでいくらでも作れるし、
いくらでも好き勝手に使える。
ありがたいことにアタマもカラダも健康体だ。
やろうと思えば何だってできるのに。

僕はまだまだ甘いなと自分自身を省みた。

この“木枯し紋次郎”に関するブログは、
紋次郎に対して詳細に調べ上げ書かれている。
さらにただ事実関係を記すだけでなく、
そこにはしっかりとした筆者の視点も盛り込まれている。
テレビドラマ“木枯し紋次郎”に関する文献は、
僕の知る限り敦夫さんの自叙伝や
DVDのボックスセットに収録されたブックレット以外ほとんどないといって等しいなか、
これはまさに貴重な資料といっても過言ではない。

それを闘病中の、1人の女性がつくっているのだ。
しかも商業主義とは無縁のところで。

アップル社のマッキントッシュの登場によって、
デザインの世界は大きく様変わりした。
ちょっとマックの操作を覚えれば、
誰でも簡単にデザインらしいことができるようになった。
その分、デザイナーがやるべきことは増えたが、
マックによってデザイン人口の裾野が広がったことは間違いないと思う。

そのため、広告や宣伝物づくりを自社で簡単に行う企業も増えた。
さらにはデザインだけではなくコピーも、
クライアントやあるいは担当デザイナーが考えることも珍しくなくなっている。
そんな風潮に対して僕はよく同世代のクリエイターたちと
「ド素人はすっこんでろってえんだ」などと話していたものだが、
逆に僕が「すっこんでろ
!!」といわれる可能性もある。

プロはプロとしての仕事をして、はじめてプロである。
プロでもない人がやることにプロが負けてしまっては、
もはやプロなどは必要ない。
相手が素人だからといって甘く見てはいけないのだ。

僕は昨日この“木枯し紋次郎”のブログを拝見し、
深く感銘を受けるとともに背中に長ドスを突きつけられた気分になった。

昨日そんな気分でテレビをつけたら、
一昨年に公開されたリメイク版の“犬神家の一族”が放映されていた。
ちょうどシーンは敦夫さんが出ているところだった。
敦夫さんの誕生日に“木枯し紋次郎”についての衝撃的なブログを発見し、
自分を反省したあとテレビで敦夫さんを視る。
偶然というには、あまりにもできすぎた偶然なのだが、
僕はその偶然をどこかの誰かがくれた誕生祝いだと思っている。

ちょうど20年前のいまごろ、
日本テレビでは当時まだ新人だった鈴木君枝アナが、
番組と番組のあいだに次の番組の宣伝をするコーナーを担当していて、
僕はよく観ていたことを憶えている。

若くて、キレイで、かわいくて、溌剌とした笑顔が印象的な方だった。

僕は天国なんて信じないが、もしそのような場所があるなら
大杉君枝さんが痛みや苦しみとは無縁の毎日を過ごしているといいなと思う。
そして、いまさまざまなトラブルを抱えながら必死に生きている人たちの
1人でも多くが
1日も早くトラブルから解放され、人生を謳歌できるようになってほしいなと、
何の痛みも苦しみも共有できていない僕がこんなことをいうのも無責任ではあるが、
心からそんな風に願う。


2008.02