ウルトラヴォックス「ニュー・ヨーロピアンズ」

3月にサントリーの角瓶がリファインされて、
CMに原田芳雄さんが出ると教えてくれたのは、
大の芳雄さんファンのYさんである。

Yさんの芳雄さんへの想いはハンパではない。
彼女の前では、僕などはまだまだひよっこの芳雄さんのファンであると痛感させられる。

どんなCMになるのか、OAが実に楽しみな広告である。

サントリーの広告は、
日本の広告の歴史といっても過言ではない。
キラ星のごとく輝く大先達が、
名作を数多くつくり出してきた。

尊敬する仲畑貴志さんもその1人で、
数々の名作コピーを書いている。

たとえば、こんな。

 ○愛想笑いのへたな酒

 
 ○ファッションで手にする酒ではない

 
 ○このウイスキーに華美な言葉は似合わない。

  ただ「角」。

 
 ○ナウなヤングのファンクなプレイだと?

     何だ、それ。いい男が。ほれ「角」

このコピーはすべて、サントリーの角瓶のものである。
なんとなく、骨太な商品イメージが伝わってくる。

角瓶は今年
70周年を迎えるという。
その節目の年の
CMに原田芳雄さんというキャスティングは、
実に納得のキャスティングだ。

さて角瓶のCMといえば、
パッと思い浮かぶのが
1981年冬のCMである。
ウルトラヴォックスというバンドをこの
CMで知った。

ウルトラヴォックスは
1975年、
ジョン・フォックスを中心に結成された
ニューウェーブ系
(ってのも、死語かな?)のバンドである。
しかし、ジョン・フォックスは
3枚目のアルバム完成後に脱退。

かわってヴォーカルとして加入したのが、ミッヂ・ユーロである。

ミッヂ・ユーロを語る場合、
世間的にはウルトラヴォックスというより、
1984年のバンド・エイドのもう1人の立役者といったほうが
通りがいいかもしれない。

このミッヂ・ユーロの加入によって
ウルトラヴォックスの音楽性はテクノ寄りに変化し、
1980年にリリースした“ヴィエナ”は、
エレクトリック・ポップの大傑作としてロック史上にその名を刻んでいる。

このアルバムに収録されていたのが
『ニョー・ヨーロピアンズ』、サントリー角瓶の
CMソングである。

はじめてこのCMを見たとき、
そのエッヂの効いたカッティングギターの音色を聴いて、
おーカッコいい曲だ
!!と思ったものだ。

が、僕のなかでは、ウルトラヴォックスといえば、
この
1曲がすべてでほとんど掘り下げることなく、
ほどなくしてミッヂ・ユーロもバンドを脱退。
その後の活動はあまりニュースにもならず、
日本においては一発屋的な印象を与えるバンドとなっている。

一発屋というと、なんとなく小バカにされがちだが、
僕はたとえ
1曲でもヒット曲があるというのは、
大したものだと思う。

音楽を志しながらもデビューできない人がたくさんいるなかデビューを果たし、
デビューはしたもののヒットしないミュージシャンもたくさんいるなか、
たとえ
1曲でも人々の印象に残る曲を世に送り出すというのはたいへんなことなのである。

僕の学生時代の先輩は、
大学生のバンドを対象に行っていた
MAZDAカレッジサウンドフェスティバル
という、
あの聖飢魔Uも輩出したコンテストで準グランプリを獲得し、
その後シングルレコードを発表した。
もちろんヒットせず、バンドは解散。
その先輩はいま、
NPOを立ち上げ環境問題に携わっている。

そんな例を身近に見ているからかも知れないが、
僕は一発屋をバカにする気にはなれない。

仲間たちと音楽の話をしていて、
一発ソングの話題で大いに盛り上がった経験はないだろうか?
僕はいっぱいある。
ということは、なんやかんやいって、
時を経てもみんなの印象に残っているということなのだ。
それは、やっぱりすごいことだと思う。

広告にも印象深いものが数多くある。
マニアックなハナシになるが、
原田芳雄さんが出演した
CMで僕が印象に残っているのは、
故松田優作と宇崎竜童と一緒に出たキリンライトビールの
CMと、
同じくキリンのシャウトというビールの
CMである。

特に後者は、芳雄さんが「伝説の男」を自称する野球選手に扮し、
登場とともに観客に野次られたり、
試合後のロッカールームで外国人の同僚に
「野球はチームワークだ。日本の“和”を知らないのか」と怒鳴られたりといった
コミカルな演出が面白かった。

70年目の角瓶。
さて、この春どんな
CMが届けられるのか。
いち視聴者として、楽しみである。


2007.02