とし太郎とリバーサイド「陽よりまぶしく、風より激しく」

サッカーに興味がない人でも、
ディエゴ・マラドーナの名前は知っているという人は多いのではないだろうか?
もはや説明不要のアルゼンチンが生んだサッカーの天才である。

このマラドーナが国際舞台でデビューを飾ったのは、
1979年に日本で開催された“ワールドユースサッカー選手権”においてである。
当時、中学
2年生のサッカー小僧だった僕は、
連日NHKで放送された中継を食い入るように見ていた。

大会はマラドーナとディアス
(元横浜マリノス)を擁する
アルゼンチンがソ連を破り優勝した。
僕らはマラドーナのすごさについて語り、
そして練習で何度もマラドーナのプレーをまねしたものだ。

ちなみに決勝終了後、
一人の少年が観客席からグラウンドに下りて、
マラドーナとディアスに抱きついた。
その少年の名は、川平慈英という。

日本はこの大会に開催国として出場したのだが、
早々に予選で敗退した。
この大会で唯一得点を決めたのが、
当時法政大学の学生だった水沼貴史
(元横浜マリノス)である。
僕はこの
1点が、後の日本サッカーの未来につながったと
若いサッカーファンをつかまえ、よく説教を垂れたものだ。

1993年、Jリーグが開幕したとき、
水沼貴史をはじめ柱谷幸一、風間八宏、名取篤などといった
1979年のワールドユース組がまだ現役でプレーしているのを見て、
とてもうれしかったことを憶えている。

ところで、とし太郎とリバーサイドというグループを知っている人はいるだろうか?
彼らの『陽よりまぶしく、風より激しく』という曲を知っている人がいたら、
その人はかなりのサッカー通といっていいと思う。

実はこの曲、
1979年のワールドユースの大会テーマソングだったのである。
この曲をはじめて聴いたのは、
大会に先立ってなぜか
NTVで放映された
ワールドユース日本代表のアニメ番組であった。
そして、サッカー部の仲間から
この曲がシングルとして発売されていると聞いて、
勇んで購入した。

「いま美しい君を見た 陽よりまぶしく風より激しく」
というフレーズを何度も口ずさみながら、
部活を終え帰宅してからもサッカーボールを蹴っていたことを思い出す。

前にも書いたとおり、僕はサッカー選手を目指していた。
そのことだけを夢見て、
純粋な気持ちでサッカーボールを蹴り続けていた日々の大切な想い出の
1曲である。


残念ながら、とし太郎とリバーサイドのこのレコードは、
もう僕の手元にはない。
でも、僕はいまだに歌える。
この文章を書きながら頭のなかで歌詞を思い浮かべていたら、
すべての歌詞が出てきたのだ。

モノはなくなっても、想い出は残る。
人間の幅って、どれだけモノやお金をもっているかではなく、
どれだけ素敵な想い出をもっているかで決まるような気がする。
そして、素敵な想い出をいっぱいもっている人のまわりには、
いい奴らが集まってくると思う。

素敵な想い出といい仲間たち、
それが本当の財産なのではないだろうか?


2007.01