高中正義「ブルー・ラグーン」


今日は朝からNHKに行ってきた。
もちろん仕事で・・・は、ない。
NHK総合テレビで月〜金曜日の13:05から放送されている
“スタジオパークからこんにちは”の公開録画を観に行ってきたのである。

曲がりなりにもマスコミギョーカイの末席に居座る僕が、
なにゆえ一般視聴者に混じって公開録画に出かけたかというと、
もちろんそれには深いふかーいワケがある。

ゲストが原田芳雄さんだったのだ。
しかもライブ演奏を行うのである。

今日、芳雄さんが“スタジオパークからこんにちは”に出演されるという情報を聞いたのは、
先月
29日に行われた芳雄さんのバースデーライブの終了直後である。
聞いた以上は、行かねばなるまい。
これは任務だ
! 使命だ!! 
オレが行かずにダレが行く
!!! 
オレが行かずんば番組も始めようがあるまいて、ワッハッハ
!!!!などと勝手に考え、
呼ばれてもいないのにすぐさま行くことに決めた。

“スタジオパークからこんにちは”は公開生放送である。
僕は「
31413:05〜 NHK総合」とDVDの録画予約を早々と済ませ、
指折り数えて今日という日を待った。

が、昨日の朝、新聞を見てちょっとした異変に気づいた。
“スタジオパークからこんにちは”の放送時間が、
国会中継になっていたのである。
もしや明日も国会中継では
!? 
となると芳雄さんの“スタジオパークからこんにちは”出演は中止もしくは延期になってしまうのか
??
僕は無性に不安になり“スタジオパークからこんにちは”のホームページを見た。
動揺しながらマウス操作ももどかしく「これからの放送予定」を見たところ、
しっかり芳雄さんの写真と名前はそこにあった。
そして、いちばん下に「収録のみ」という文字を発見した。

生放送はないものの収録は行うんだ♪ 
僕はホッとして、明日
(つまり今日)を待つことにした。
そして、あとは僕の運次第だなと決意を新たにし、
さっきまでもどかしげにマウスを握っていた手でガッツポーズをつくった。

“スタジオパークからこんにちは”の観覧自体は
もちろん無料
(ただし、スタジオパークへの入場料200円は必要)なのだが、
実際にスタジオのなかに入れるのは約
30名だけなのである。
観覧希望者がそれより多い場合は、抽選となる。
「人生そのものがギャンブルさ」と常日頃からうそぶいている僕ではあるが、
ナニを隠そうクジ運は良くない。
今年の年賀状お年玉くじは見事に
1枚も当たらなかった。
果たして、そんな僕が抽選をかいくぐってスタジオ内に潜入することができるのか
?

今日の10時過ぎ、
僕は一抹の不安を抱えながら雨降るなかをホテホテと後楽園の駅へと向かった。

南北線→半蔵門線→千代田線と乗り継いで
明治神宮前に着いたのは
1050分ぐらいであった。
そこから僕は待ち合わせ場所である原宿駅に向かった。
同じく芳雄さんを応援している友人と一緒に行く約束をしていたのだ。
すぐに合流できた僕らは、イソイソと
NHKへと向かった。
NHK方面に向かう人のすべてが
“スタジオパークからこんにちは”の公開録画に行くように見えて仕方がなかった。
30名の枠を争う競争相手に見えたのだ。

ほどなくNHKに到着した僕らはさっそく入場チケットを購入し、館内へと入った。
ら、入口のすぐ脇に、ステージと客席が設けられていた。
スタジオ観覧の抽選は
12時からということだったのだが、
すでに
10名近くの人たちが並んでいたので僕らも慌ててその列に加わった。

ドキドキしながら12時が来るのを待っていたら、なにやら館内放送が聞こえた。

実は今日のゲストは芳雄さんだけでなく
クミコ、カノン、
DEPAPEPEと他に3組いたのだ。
入口脇ということもありあたりがザワついていたのでよく聞こえなかったのだが、
どうやら
2組ずつ別の場所でライブを行うというようなことをいっていた。

小学生のころの通信簿に「落ち着きがない」と書かれ続けた
オッチョコチョイな僕のことである。
間違って違うところに並んでしまっている可能性は否定できない。
僕は念のため、近くにいた係員の人に
芳雄さんのライブはここで演るのですかと聞いた。

案の定、僕らは違うところに並んでいた。

慌てて教えてもらった場所へと移動した。
ら、である。
ガラス越しに見えるスタジオのなかで、
芳雄さんがリハーサルを行っていた。
読者よ
! 友よ!!
このときの僕の至福っぷりを想像してみてほしい。
ガラス
1枚隔てただけの至近距離で、
芳雄さんが唄っているのである。
まさにジョージ・ハリソンのアルバムタイトルではないが
Cloud 9!!
天にも昇る心地であった。

ほどなくリハーサルが終了し、芳雄さんがスタジオをあとにした。
まだ
12時までは時間があったのだが、
僕らはスタジオ前の抽選場所に並ぶことにした。
僕らの前には
2人の先客がいた。

12時が近づいてくるにつれ抽選場所には次々と人が集まってきた。
30名以下なら無条件でスタジオのなかに入れるが、
30名を超えた場合は早く並んでいようがギリギリに来ようが関係ない
過酷な下克上の世界が待っているのである。
ざっと見たところ、並んでいる人数はギリギリ
30名を下回っていた。
もうこれ以上、誰も来ないでくれ。
そう願いながら待つ
12時までの数分間は、とてつもなく長い時間であった。

12時を回り、観覧希望者が締め切られた。
僕らは抽選という過酷な試練を経ることなく、
スタジオのなかに入る権利を手にした。
整理券代わりに番号が記されたコインが配られた。
僕らは
3番・4番を手にした。

ライブは芳雄さんとクミコが僕らがいるスタジオのなかで、
そしてカノンと
DEPAPEPEが最初僕らが間違って並んでいた入口脇で行われた。

僕は芳雄さん以外の他のゲストについては何の予備知識ももっていなかったのだが、
それぞれに素晴らしい演奏であった。
なかでも
DEPAPEPEの音楽はアコースティックギターによるデュオで、
実に爽快な印象を受けた。
元サディスティック・ミカ・バンドの高中正義の音楽を
アコースティックギターで演奏したら、
きっとこんな感じになるんだろうななどと考えながら、
スタジオ内のモニターから流れるその爽やかな演奏に聴き入った次第である。

高中正義といえば、ギターにまつわる個人的な想い出が1つある。
僕が中学生のころ、高中正義は多くのギター小僧にとってまさに憧れの人であった。
高中正義の『ブルー・ラグーン』を聴きながら、
僕もあんな風にギターが弾けるようになったらいいななどと思い、
シコシコと毎日ギターを練習していた。

そんなある日、近くの楽器屋さんで高中正義のロゴマーク入りのピックを見つけたので、
それをさっそく買ってきた。
そして、ろくすっぽ勉強もせずに連日連夜、その高中ピックでギターを弾き続けた。

しかし、僕が高中正義の『ブルー・ラグーン』をマスターすることはなかった。
以前にもチラリと書いたが、
僕は指が短すぎて押さえられないコードが多すぎたのである。

そしていつしか、僕のギターは高中ピックとともに、
押し入れの奥深くにしまわれ続けることになった。
無念である。

僕の泣き言はいいとして、
実は今日「あっ、こういうのいいな」と思ったことがある。

それはクミコが唄い終えて、自分の席に戻ったときのこと。
彼女はテーブルの上に置かれたグラスの水をひと口飲んだ。
グラスにはストローが差してあった。
彼女はストローを唇から離し、グラスをテーブルに置いたあと、
さりげなくストローの飲み口を指先で拭いたのだ。

僕は女性がタバコを吸うことに対しては、なんの抵抗も感じないのだが、
フィルターに口紅がベッタリついている吸い殻は、
あまり美しいものではないなとどうしても思ってしまう。

そんな僕だからかもしれないが、
ストローの先についた口紅をそっと拭うクミコの振る舞いは、
実に素敵な大人の女性の姿であった。

芳雄さんの演奏については、もはや何もいうことはない。
その演奏を客席の最前列、芳雄さんから
2メートル弱という間近で聴けたのだ。
幸せ者である。

今日の模様は18()に放送される予定だそうだ。
唄う芳雄さんの目の前で、ハデなシャツに黒いジャケット姿の
インチキ臭い
40オトコがもし映っていたら、それは間違いなく僕である。


2008.03