シュガーベイブ「すてきなメロディー 」
松原みきの歌をはじめて聴いたとき、
伊藤銀次は「シュガーベイブのようなサウンドを、
こんな若い子が歌うようになったのか」と感じたそうだ。
シュガーベイブといえば、そう!山下達郎・大貫妙子・村松邦男に
上原裕、そして伊藤銀次も在籍していた伝説の、
あのシュガーベイブである。
唯一のオリジナルアルバム“SONGS”は
日本のポップスシーンにさん然と輝く名盤で、
中古レコード屋さんでも中古盤にしては常にいい値段で売られている。
シュガーベイブの“SONGS”を聴いたのは、わりと遅い。
高校3年生のときである。
後輩が大滝詠一のナイアガラBOXセットを買い、
それを借りて聴いたのだ。
かの名曲『DOWN TOWN』は知っていたが、
それ以外の曲は聴いたことがなかった。
そんななかで僕を夢中にさせた曲が、
山下達郎と大貫妙子がデュエットしている
『すてきなメロディー』である。
「ウォ〜ウォウォウォン♪すてきなメロディー
ウォ〜ウォウォウォン♪流れてくるでしょう」
(作詞・伊藤銀次/大貫妙子/山下達郎)という部分が特に気持ちよく、
気分のいい日などは40を過ぎたいまもついつい口ずさんでしまいたくなる。
僕もかつては、ソングライターを志したことがある。
中学生のときにお金をためてギターを買い、
華々しくその第一歩を踏み出そうとした。
これから素敵なメロディをたくさん生み出すんだと意気揚々だった。
当時、全盛を誇っていたヤマハのポプコンに出て、
スポットライトを浴びる日を夢見ていた。
が、あっけなく挫折した。
僕の手はいまでも成人男性にしては信じられないぐらい小さいのだが、少年時代はさらに小さく、Fのコードが押さえられなかったのである。
自由自在にギターが弾けて曲がつくれたら、
ものすごく楽しいだろうなと思う。
MACでつくろうと思えばつくれるのだろうが、
なんかそんなのはつまらない。
やっぱりギターをかき鳴らしながら、
素敵なメロディラインを見つけていくのがいい。
クレオパトラの鼻が1センチ低かったら世界の歴史は変わっていた、
なんていわれているが、
僕の指もあと1センチ長かったらロックの歴史も変わっていたかもしれない。
あくまで、仮説でしかないけど・・・。
メロディメーカーとしての才能はないが、作詞だけはできる。
この夏、再びギターを買い、弾きはじめたという
新撰組好きの後輩に僕の未発表の詞を数曲分託した。
すべて新撰組にまつわる詞ばかりである。
タイトルをいつくか並べると『Ban Ban 磐梯山』
『夢の油小路』『げんこつ音頭』『オレは筆まめ』
『どデカイ魁』『厳寒・斗南藩』『ラブリー明里』
『壬生寺遊戯』などなど・・・タイトルからして、
すでにもう終わっているものばかりだ(笑)。
まともな人間であれば、ちゃんと曲をつけようなどとは思うまい。
これを託された後輩も、きっと困ったことだろう。
事実、いまだに1曲もあがってきていない。
以前、これらの詞を仲間内に見せたことがある。
伝え聞いたところによると、ある1人は
「この才能を、もっとちゃんとしたものに生かせばいいのに」といったそうだ。
でもいいのである。
みうらじゅんと安齋肇の勝手に観光協会だって、
『ばってんバテレン』とか『ブッツ仏像』とか
『ロンリー・オヘンローラー』などという
奇天烈ソングを山のように発表しているのである。
何がどう評価されるかわからない。
僕のこれらの詩に素敵なメロディがつくのは、いつの日か?
そして僕の才能が評価されるのはいつの日か?
それよりなにより、そんな日は果たしてくるのか??
実に楽しみの多い人生である。