佐野史郎「夢よ叫べ」

物理学者のスティーブン・ホーキング博士が
2009年、65歳の誕生日に宇宙旅行を計画しているという。

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歳のときに筋萎縮性側索硬化症と診断され、
車椅子生活を余儀なくされているホーキング博士の、
そのあくなき好奇心と冒険心に心から敬意を表したい。
実現するには、いろいろとハードルもあるだろうが、
人類の夢と可能性を乗せて、ぜひとも実現してほしいものだ。

宇宙から地球を見てみたいとは思うが、
ジェットコースターですら乗りたがらない僕なんかは、
宇宙旅行などまず無理なハナシであろう。
とてもじゃないが、
8Gなんて世界には耐えられそうもない。
加えて僕は閉所恐怖症で、おまけに落ち着きがない。
子どもの頃から、室内でじっとしているのが苦手なのである。
映画は好きなのだが、
映画館に
2時間じっと座って観続けなければならないかと思うと、
ついついDVDになったら観ることにしよう、となってしまう。

しかし、芝居はそうはいかない。
なので、どうしても観たい芝居があるときは、
意を決して劇場へ出かけていく。

1998年の秋だったと思うが、
新宿の小さな劇場に佐野史郎のひとり芝居を観に行ったことがある。
世間的には冬彦さんのイメージが強い佐野史郎であるが、
僕と趣味がかぶる部分が多々あることから、
ぜひ一度、生の佐野史郎を観てみたいと思っていたのだ。

舞台は佐野史郎とその妻・石川真希さんも在籍していた、
状況劇場の座長・唐十郎
(現唐組座長)が作・演出を手がけ、
時効直前に逮捕された
「松山ホステス殺し」の犯人に懸けられていた懸賞金のつかい途を、
佐野史郎扮する主人公が
福井県のとある町に調査に行くという内容であった。

ひとり芝居なので、当然出演者は佐野史郎だけである。
しかも、小さな劇場だったので佐野史郎を間近に、
存分に楽しむことができた。

ご存知の方も多いと思うが、
佐野史郎はロックにも造詣が深い。
自らバンド活動もやっている。
その佐野史郎が
1995年に発表したアルバムが“君が好きだよ”である。

このCDに収められている遠藤賢司のカバー『夢よ叫べ』は、
エンケンのオリジナルに勝るとも劣らない圧倒的なパワーにあふれた佳作である。

「そうさこんな夜に 負けるな友よ 夢よ叫べ」(作詞・遠藤賢司)というフレーズを、
僕はこの年末年始、入院している友を思い浮かべながら何度も聴いた。
ひとり病室のなかで夜を過ごすだけでも気がめいるのに、
世の中はやれクリスマスだ!年の瀬だ!お正月だ!なのである。
心がくじけそうになっても、状況的に致し方ない。
そんな友に向けてのエールとして、この曲をくり返し聴いた。

おかげさまで、この友は本日ようやく退院できた。
まだまだ全快とはいかないが、
さしあたっての問題であった腸閉塞の経過が順調なため、
退院許可が下りたという。
本格的な社会復帰に向けては、
もうしばらくかかるかもしれないが、前向きに快復に努めてほしい。

60歳を過ぎて、身体のハンディキャップをものともせず、
ホーキング博士だって宇宙旅行を夢見ているのだ。
病に負けている場合ではない。
ましてや僕など、日々健康に過ごしているのだ。
何ものにも負けてはならない。夢よ、叫べ
!!である。





でも、ジェットコースターの怖さには、負けるかな()


2007.01