ロビン・ザンダー「イン・ディス・カントリー」


今週はF1モナコGPのレースウィークである。
モナコ公国モンテカルロ市街地コース
13.34キロを78周するレースは、
まさに
F1の代名詞的レースといえる。
歴代優勝者のなかで最多勝利を誇るのがアイルトン・セナで、
昨年引退したミハエル・シューマッハと
往年の名ドライバー、グラハム・ハルが通算
5勝で続く。

モナコGPのなかで名勝負中の名勝負といえば
多くの人が
1992年のモナコGPを挙げるのではないだろうか?
この年、ウィリアムズ・ルノーを駆るナイジェル・マンセルは
開幕
5連勝と絶好調であった。
一方、マクレーレン・ホンダのアイルトン・セナは
マンセルの破竹の勢いになすすべがなかった。

モナコで過去
4勝のセナに対して、マンセルは0勝。
マンセルがついにモナコで勝つのか、
それともセナがモナコで一矢を報いるのか、
スタート前から大いに興味がもたれていた。

奇しくもこのレースは、モナコGP50回記念。
結果からいえば、まさにこれぞ
F1!!
モナコGPの歴史のみならずF1史上に残る名勝負がくり広げられた。

残り7周のとき、
トップを快走していたマンセルが突然のピットイン。
マンセルがタイヤを交換する間に
セナがホームストレートを駆け抜けた。
コースに戻ったマンセルは、
他のドライバーを蹴散らすような勢いでセナを追った。

72周を終えた時点でセナとマンセルの差は5.1秒、
次の周には
4.8秒に縮まった。
そして翌周には他のドライバーより約
2秒速い
121598という驚異的なタイムをたたき出したマンセルが
ついに
1.9秒差までセナを追い詰めた。

マシンの性能はマンセルの乗るウィリアムズ・ルノーが勝る。
しかし、セナは絶妙のライン取りでマンセルに抜かせないようブロックした。
どこからでも抜ける。
しかし、抜きどころがない。
残り
3周のバトルは、まさにこれぞF1!!
瞬きする間も惜しく思わせるほどの白熱の
名勝負であった。

僕はいつかモナコに行きたい。
モナコでバックギャモンに興じるのだ。
バックギャモンは紳士のゲームだと僕は思っている。
勝負である以上、勝つときもあれば負けるときもある。
そのときにどう振舞うか、
それがバックギャモンプレーヤーにとって重要な要素だと思う。
勝って浮かれすぎず、負けて潔く・・・それが僕の理想とするところだ。

この1992年のモナコGPにおいて、
マンセルはレース終了後の表彰式でセナにシャンパンをかけ、
セナを祝福した後、その場にへたり込んだ。
それは全力を尽くして戦い、そして敗れた偉大な敗者の姿だった。

この頃のF1中継のエンディングテーマとして流れていたのが
大好きなバンド、チープ・トリック
のヴォーカリスト、
ロビン・ザンダーが唄った『イン・ディス・カントリー』である。

この曲、そもそもは
1987年に公開された
シルベスター・スタローン主演の映画
“オーバー・ザ・トップ”で使われていたそうなのだが、
僕は知らなかった。
その後、この映画も観ていない。

なので僕にとってロビン・ザンダーの『イン・ディス・カントリー』といえば、
F1のエンディングテーマのイメージのままである。
当時、この曲が流れるなか、
ついいましがた観たばかりのレースの余韻に浸っていたものだ。

セナもいない、シューマッハもいない今年のモナコGP
観終わった後、どっぷりと余韻に浸れるようなレースになることを願う。


2007.05