リック・スプリングフィールド「ドント・トーク・トゥ・ストレンジャー」


今日の午後、久々に外出した。
どのぐらい久々かというと、日曜日の午後以来である。
日曜日から今日に至るまで
1Fのポストをのぞきに行く以外、
丸々
3日間外に出ていなかったのだ。
我ながら恐ろしい生活である。

今日は後楽園近くにちょっと用事があって外出したのだが、
思ったほど寒くないし仕事も一段落したので
そのまま神保町界隈へと散歩に出かけた。

黒い怪しげなロングコートのポケットに手をつっこみ、
ホテホテと歩きながら先週の“タモリ倶楽部”で久々に見た
原田芳雄さんのご子息・喧太くんについて考えながら歩いていたら、
頭上から悲鳴が聞こえてきた。
何事か
!!と思ったら、ジェットコースターの乗客たちのものであった。

まったくジェットコースターなんぞに乗るモンの気が知れん、
などとアタマのなかで独り言をつぶやきながら、
さらに喧太くんについて歩きながら考えていた。

喧太くんは、どうしても芳雄さんの息子ということで、
なにか甥っ子のような印象を抱いてしまうのだが、
1970年の3月生まれ。
僕と
4歳しか違わない。
甥っ子どころか弟の年代である。

喧太くんはプロのギタリストを目指して
中学を卒業するとロンドンへ渡った。
という話は僕が
20歳ぐらいの頃に知っていたのだが、
その後、吉川晃司のバックバンドのギタリストになっていたというのは知らなかった。
僕がそのことを知ったのは
1993年だった。
教えてくれたのは高校時代の友人だった。

当時、デビュー
10周年ということで吉川の映像がよくテレビで流されていたのだが、
そこで僕は遅ればせながら吉川の『せつなさを殺せない』のプロモを初めて観た。
そのプロモに映っていたギタリストは実にカッコよくて、
演奏する立ち居振る舞いもに見事にキマっていた。
そして前述の友人に「吉川のバンドのギタリストってカッコいいな」と話したところ、
喧太くんであることを教えてくれたというワケだ。

喧太くんはいまもギタリストとして活動している。
去年の
11月に行われた芳雄さんのライブにもゲストとして登場したという。
僕は一度も生の喧太くんを観たことがない。
“タモリ倶楽部”で久々に観た喧太くんは相変わらずカッコよかった。
芳雄さんのライブも観たいが喧太くんのライブにも行きたいな、
なんて考えながら僕は神保町へ向かっていたのである。

神保町へ行くと行っても目的があるワケではない。
まさにブラリとした散歩である。
ここのところしばらく行っていない「さぼうる」に行ってみようかなと思ったのだが、
タバコもライターも持ってきていなかったのでやめた。
「さぼうる」とは神保町の駅のすぐそばにある老舗の喫茶店で、
ここのイチゴジュースはめちゃめちゃうまい。
日本一といっても過言ではないだろう。
僕はこのイチゴジュースのためだけに、よく「さぼうる」へと足を運んだものだ。

「さぼうる」行きを諦めた僕は、
白山通りから一本入った裏通りへと向かった。
ここによく行く中古レコード屋さんがあるので、
これまたしばらくぶりに行ってみようと思った次第である。

段ボール箱に入れられた店頭のジャンク品というかセール品を見ていたら、
“リック・スプリングフィールド・グレイテスト・ヒッツ”なる
CDを見つけた。
どれどれと手にとって収録曲を確認したら、
『ジェシーズ・ガール』から『ドント・トーク・トゥ・ストレンジャー』
『アフェア・オブ・ザ・ハート』『ヒューマン・タッチ』など、
僕が
10代の頃よくラジオから流れてきた懐かしのヒットメロディのオンパレード♪
つい先日、所用で秋葉原に出かけた際、とある電気店の店頭で
リック・スプリングフィールドの昔のプロモが流れていたのを見たばかりということもあって、
ついつい買うことに決めた。

リック・スプリングフィールドといっても、
いまどきのナウなヤングにはあまりなじみがないかも知らないが、
僕が
10代の頃はハンサム系の超人気スターであった。
リック・スプリングフィールドの曲のなかでは
『ドント・トーク・トゥ・ストレンジャー』が一番好きで、
高校時代はよく聴いたものだ。
さっき帰宅して、さっそく久方ぶりに聴いてみたのだが、
いま聴いても実にいい曲であった。

この中古レコード屋さんにおいて、
他にもなにかないかなといろいろと物色したところ、
あるわあるわ
80年代の名盤・バカ盤が!!

いまはすっかり俳優として活動している杉本哲太が在籍していた
紅麗威甦の
LPまであったぞ。
紅麗威甦と書いてグリース。
いま振り返ってもスゴイ言語感覚である。
当時もいまも、とてもついていける世界ではない。

そんななかで、吉川晃司のデビューアルバム
“パラシュートが落ちた夏”を見つけた。
僕は熱心な吉川ファンではないのだが、
このアルバムは佐野
(元春)くんの『アイム・イン・ブルー』のカバーや
原田真二による歌が収められていた。
2曲ともラジオで聴いたことがある。
白いスプリングコート姿でギターを持っている吉川の写真が使われた
ジャケットを見ていたら、急に聴きたくなってきてしまった。

僕はリック・スプリングフィールドのベスト盤と吉川のデビューアルバムを手に、
そそくさとレジへと向かい、ホクホク顔で帰ってきた。

2枚合わせて400円。
それでホクホク顔である。
我ながら実に安上がりなオトコだ。


2007.12