RC サクセション「君が僕を知ってる」

いわゆるロックフェスのエンディングで、
出演者が総出でジャムるとき、
演奏される曲のパターンとして
@トリを務めたアーティストの代表曲
Aロックンロール・クラシックが挙げられると思う。

Aの場合は、やはり『ジョニー・
B・グッド』あたりが
代表曲となるであろうか。

ロックンロール音楽の歴史を考えると、
どうしても洋楽が多くなるのはいたしかたないところなのだろうが、
そろそろ日本のロックシーンもジャックスのデビュー以来、
40年近い歴史を迎える。
ここはやはり、日本のロックアーティストによる、
世代を超えて歌いまくることのできる
ロックンロール・クラシックを定義したいところである。


と勝手に考え、
栄えある日本のロックンロール・クラシック第
1号に僕が選んだのが、
RCサクセションの『雨上がりの夜空に』である。


2000
年の3月。
日本武道館で忌野清志郎のデビュー
30周年を記念して
“リスペクト清志郎”なるイベントが行われた。
その昔、清志郎、チャボとともに
「渋谷の
3バカトリオ」と呼ばれていた泉谷しげるの生ギター演奏による
『雨上がりの夜空に』で幕を開け、
最初のアンコールのラストで出演者全員により再びこの曲が演奏された。

「ど〜したんだい
Hey Hey Baby♪」というサビの部分は、
まさに出演者も観客も一体になっての大合唱。
あらためてこの曲の愛され度に感服した次第だ。

いまでは、世界のキタノとなったタケちゃんが、
まだツービートで人気者となったばかりの頃、
RCサクセションのファンだと聞いて、
「この人、センスいいな」と思った。
お笑い関係者の方に対して、
差別的な発言に聞こえたらごめんなさいなのだが、
当時のお笑い界において
RCサクセションが好きというセンスの持ち主は
稀有な存在だったと思う。

僕がRCサクセションを知ったのは、中学2年生のときだった。
なぜか、
NTVの紅白歌のベストテンにRCが出演し、
そこではじめて見たのだ。

ツンツンにおっ立てた髪の毛、色とりどりステージ衣装、
ど派手なメイク、激しいステージアクション、
そして今まで聴いたことのないユニークなヴォーカルスタイル。

2の小僧にとって忌野清志郎は、まさに黒船到来ばりの衝撃であった。

“リスペクト清志郎”のコンサートで、
もっとも印象的だったのは、チャボが清志郎を紹介したときである。

「おーい、清志郎。オレたち
50だってよ。信じられるかぁ〜」
とステージの袖で出番を待っている清志郎に向かってチャボが叫んだとき、
客席で涙ぐむ人がいた。
かくいう僕も、ジーンときた。


ロックが今日のようにビジネスとして成り立つ前から、
この
2人はさまざまなものと闘ってきたのである。
理不尽なこともいっぱいあったろう。
でもこの
2人は自分たちを信じ、あきらめず、闘い抜き、
生き残り、そして多くのファンとフォローアーを生んだ。

僕なんかより、
もっともっと
RCサクセションの熱烈なファンはたくさんいるので、
あまり偉そうなことはいえないのだが、
1人のロックンロール音楽を愛する者として、
忌野清志郎と仲井戸麗市という骨太ロッカーに、
僕は心から敬意を表する。


チャボの紹介でステージに出てきた清志郎が歌いだしたのは、
渋谷陽一氏が「日本で最高のラヴソング」と絶賛していた
『君が僕を知ってる』であった。

『雨上がりの夜空に』のシングル盤の
B面の曲である。

「何から何まで君がわかっていてくれる
 僕のことすべてわかっていてくれる」と歌う清志郎に
チャボのコーラスが絡む。
1本のマイクで「わかっていてくれる」と交互に歌う2人を、
ドラムを叩きながら上原裕がとてもうれしそうに見ていたことを憶えている。

それは2000年春の、
素敵なワンシーンのひとつとして、いまも僕の心から消えない。


2006.12