ピンク・フロイド「吹けよ風、呼べよ嵐」
先週、ある友人から「子供を官僚に育てるためのごはん」なる
仰天モノの女性誌の特集について話を聞き、愕然とした。
僕が小学校のころ、やたらとアタマのいいヤツがいたのだが、
そいつも卒業文集に将来の夢として「国家公務員」と書いていた。
僕とはいえば、以前にもチラリと書いたように、
プロレスの世界チャンピオンになると書いた。
読者よ!友よ!! どっちの夢が子どもらしいであろうか?
そいつが国家公務員になれたかどうかは知らない。
そもそも国家公務員になって何をやりたいと夢を抱いたのだろうか?
たしか1990年代になったばかりの頃、
“朝まで生テレビ”を観ていて猛烈に腹が立ったことがある。
観客の1人が自分は将来官僚を目指しているという発言をしたのだが、
その理由というのが「ヒトをアゴで使いたい」というものであった。
しかし、これは何も珍しいケースではないように思う。
誤解を恐れずにいえば、
だいたい公務員になりたいとか政治家になりたいとかいっている人間の多くは、
自分のためをまず優先し、
市民のためとか国民のためとか有権者のためなんて意識は希薄なのだ。
だから、生活者の不利益になることも平気でできるのだ。
以前、タケちゃん(ビートたけし)が
「官僚というのは、親が『おまえ国のために死ね』ぐらいいって、
それでもやりたいというヤツしかなっちゃダメだと思う」
というような発言をしていたのを聞いたことがあるが、
僕も同感である。
「子供を官僚に育てるためのごはん」なんて記事を、
ふむふむとうなずきながら読んでいるような親は、
まさかこのようには考えまい。
官僚なんて、ひとつのブランドぐらいにしか考えていないように思える。
明治政府誕生から約140年。
明治政府がとった中央集権・官僚制という国のシステムはもはや限界にきている。
時代はひと回りして、また幕末なのだというのが僕の持論である。
ここ20年の日本を見ていると、幕末と酷似している点がすごく多い。
長らく日本は農作物や金融を中心に経済的な鎖国状態にあったと僕は思う。
それが黒船の襲来よろしく、次々と外圧によって市場を開放した。
政治の腐敗はもはや説明する必要はない。
世情不安もそう。
大人・子どもを問わず凶悪事件が多発し、治安が著しく乱れている。
天変地異も多い。
さらにこの夏は深刻な水不足が懸念されている。
これで飢饉がおきたら、ますます幕末と一緒である。
こんな時代に、ノーテンキに
「子供を官僚に育てるためのごはん」なんて特集を組んでいる場合ではない。
どうせなら「子供を坂本龍馬のように育てるためのごはん」ぐらいやってほしい。
だいたい子どもなんて親の思い通りになんてならないものだ。
僕が小学校の卒業文集にプロレスの世界チャンピオンになりたいと書いたのを見せたら、
親はなんともいえないあきらめの表情を浮かべていた。
僕がプロレスに夢中だったころ、
世のプロレスファンを震撼させていたのが、
ザ・シークとアブドーラ・ザ・ブッチャーの極悪コンビである。
この2人が入場するときに流れていたテーマソングが、
ピンク・フロイドの『吹けよ風、呼べよ嵐』である。
少年よ!
少女よ!
官僚になってほしい、な〜んて親の希望はどこ吹く風で、
自分のやりたいことをやりなさい。
僕はそんな人間こそが、この国に新しい風を吹き込むと思う。