大貫妙子「夏に恋する女たち」

もはやビング・クロスビーのホワイトクリスマスを超える、
クリスマスのスタンダードナンバーとなったといっても過言ではない
山下達郎の『クリスマス・イブ』を含む
アルバム“
Melodies”が発売されたのは、1983年の6月である。

そんな
6月のある日、
ラジオを聴いていたら山下達郎がゲストで出演していた。
「なぜ、クリスマスソングが入ったアルバムを
6月に発売したのですか?」
と質問された山下達郎は、例によって鼻っ柱の強そうな口調で、
「レコードというのは
1年中聴くわけだから、
別に
6月に発売するからといって
クリスマスソングが入ってちゃいけないってことはないでしょ」
というようなことをいっていた。

あれから
23年。
この歌は
1年中どころか、23年にもわたり聴かれ続けているのだ。
すごいことである。

ご存知のとおり、山下達郎は
シュガーベイブというバンドで
1975年デビューした。
このシュガーベイブにいたのが、大貫妙子と村松邦男である。

1983年といえば、この2人に関してちょっとした想い出の曲がある。

まずは大貫妙子。
“ふぞろいの林檎たち”の後番組として放映された
“夏に恋する女たち”という
TBSのドラマに、
敬愛する原田芳雄さんがホスト役で出ており僕は毎週見ていた。
で、このドラマの主題歌を歌っていたのが大貫妙子である。
ドラマと同名のこの曲は、
大貫妙子の透明な声質とマッチした名曲で、
この曲を耳にするたびに高校
3年生の頃の夏休みを想い出したものだ。

実はこの曲が入ったレコードもCDもずっと持っていなかったのだが、
先日、近所のレコードショップで見つけた、
得体の知れないコンピレものに含まれていたので、
ついつい買ってしまった。
23年目にして、わが家に『夏に恋する女たち』がやってきたというわけだ。

この『夏に恋する女たち』は、
放映が
8月〜9月の2か月間という実に変則的なドラマであった。
そして、夏が完全に過ぎ去った
1983年の秋に発売されたのが、
村松邦男のファーストアルバム“
GREEN WATER”である。

このアルバムからシングルカットされた『僕のカールズ』は
実に良質のポップソングであった。こ
の曲はシングル盤を買ったのだが、残念ながらいまは手元にない。

夏休み前に部活動から引退し、
完全な受験生生活となった高校
3年生の夏から秋からかけての
なんとも不安定な時期のワンシーンを、この
2つの曲は想い出させてくれる。

この時期は、本当にいろんな不安や不満を抱えながら生きていた。
もし、タイムマシーンがあったら、当時の僕のところにいって
「そんなこと、なんとでもなるさ。心配するなよ」と声をかけたい。
まわりの大人たちを敵視し、大人そのものを否定していた僕に、
「大人になるのも、そんなに悪いことじゃないよ」といってあげたいものだ。

最後に、この年のクリスマスの想い出をひとつ。
24日、終業式を終えた我々は、
野郎だけでわが家でクリスマスパーティを開いていた。

なにかにつけバカヤローだった我々は、
彼女がいようがなにしようが男同士の友情を優先させたものだ。
この日もそうで、女人禁制のクリスマス・イブを過ごしていた。
もちろん、メインの
BGMは山下達郎の『クリスマス・イブ』。
エアチェックしたテープを何度もくり返し聴きながら、
クイックイッといっちょまえにグラスを空けていた。

ら、急に猛烈な眠気が襲ってきて、起きていられなくなった。
そう、このとき、僕ははじめて酔いつぶれたのだ。
いってみれば、酒飲みとして大人の第一歩を踏み出した日なのだ。

もうすぐ2006年のクリスマスがやってくる。

僕がこんなことをいうのもなんだが、
すべての人に素敵なクリスマスが訪れてほしいと思う。


2006.12