岡晴夫「東京の花売り娘」


去る117日の日記で、
“金曜日の妻たちへ”が再放送されていることを書いた。
毎週録画しては熱心に観ているのだが、
あらためていま観ても実にいいドラマである。

このドラマに古谷一行の後輩役で加藤健一さんが出ているのだが、
金妻に出ている加藤健一さんを観ていたら、
どうしてもある映画が観たくて観たくてたまらなくなった。

その映画とは1984年に公開された“麻雀放浪記”である。

“麻雀放浪記”は阿佐田哲也さんの原作をもとに、
イラストレーターの和田誠氏が監督を務めた作品で、
主人公の「坊や哲」を真田広之が演じ、
鹿賀丈史さん、高品格さん、加賀まりこさん、大竹しのぶさん、
名古屋章さん、内藤陳さんといった個性あふれる顔ぶれが脇を固める名作である。

終戦直後の雰囲気を出すため映像はモノクローム。
BGMに岡晴夫さんの『東京の花売娘』が効果的に使われていた。

高品格さん演じる「出目徳」に敗れた鹿賀丈史さん演じる「ドサ健」が、
再び「出目徳」と勝負をすべく、その資金づくりをする。
恋人である、大竹しのぶさん演じるまゆみを女郎にして。

このまゆみを買ったのが、
加藤健一さん演じる「女衒の達」である。
しかし「女衒の達」は、「ドサ健」にお金を渡すが、
まゆみを女郎にはしなかった。
まゆみを質草として預かり、
「ドサ健」にお金を貸したのである。
利子は
1割。
翌日の正午までにお金を返さなければ、
まゆみは女郎となるといった流れのなかでストーリーはラストへと向かう。

この「女衒の達」がとにかくカッコいいのである。
この加藤健一さん演じる「女衒の達」をどうしても観たくて、
“麻雀放浪記”が観たくなったのである。

そして昨日の午後、とうとう辛抱たまらなくなって
“麻雀放浪記”を探しに出かけた。
最初、近所のレンタル屋さんで探したのだがなかった。
次に白山通り沿いのレンタル屋さんに行ったのだが、ここにもなかった。

かくなる上はしかたがない。僕は神保町界隈へと向かった。
とある中古ビデオ屋で売っているのを以前見かけたので、
それを買いに行ったのである。

土曜日の昼下がり、多くの人々で賑わう後楽園を横目にしながら、
ホテホテと白山通りを歩いて、目指す中古ビデオ屋さんへと入った。
“麻雀放浪記”はあった。
まるで、僕に買われるのをじっと待っていたかのように、
以前見かけたときと同じ棚にひっそりと置かれていた。

僕はホクホク顔で、パッケージを手に取った。
そして、そそくさとレジに向かおうとしたのだが、
そのときある考えが僕のアタマをよぎった。
その考えとは・・・別に万引きしようと思ったワケではない。
当たり前だ。
せっかく来たのだから“麻雀放浪記”だけを買って帰るのもなんなんで、
ほかにナニかないか探してみようと思ったのだ。

そして、僕は奇跡に遭遇した。

先週木曜日の日記でチラリと触れた
ジョージ・ハリソンプロデュースの“上海サプライズ”を見つけたのである。

“上海サプライズ”は、ずっとまた観たい映画の1つであったのだが、
現在はソフト化もされておらず、なかば幻の作品となっていたのである。
数年前にどういうワケか深夜に
1度放映されたのだが、
僕はそのとき録画に失敗した。

その“上海サプライズ”が目の前にあったのである。
僕はひったくようにして、そのパッケージを手に取り、
今度こそそそくさとレジに向かった。
ずっと観たいと恋いこがれ続けた“上海サプライズ”を見つけた以上、
もはや長居は無用である。
レジでお金を払い、僕は弾むような足どりで、
倖田
來未のファンで賑わうドーム前をすり抜け帰宅した。

この“上海サプライズ”。
ジョージが届けてくれたサプライズプレゼントだと、僕は信じている。


2007.12