新沼謙治「おもいで岬」


今日は朝から麻布十番へと行って来た。
とある会社から、
自動車販売店の仕事のオファーを受けたので
打ち合わせに行って来たのだ。
仕事の内容自体は面白そうなのだが、
なにせ制作するツール数が多い。
一瞬、こなし切れるかなと不安がアタマをよぎったのだが、
ここは弱気になってはダメと自分に喝を入れ、
快諾して来た。
しばらくは忙しい日々が続きそうだが、
それはそれでありがたいこと。
世の中が僕を必要としている限り、
がんばろうと思いその会社をあとにした。

麻布十番には、友人デザイナーが勤めている会社がある。
せっかくなので、お昼を一緒に食べることにした。
友人がよく飲みにいくというお店に入ったとたん、
流れてきたのがジュリーの『あなたに今夜はワインをふりかけ』。
なんたるタイミングの良さ。
僕のジュリー好きを知っている友人も
「タカハシさんが来たとたんにジュリーとは
タイミング良すぎだわね」と笑っていた。

しかし、この曲に関しては、
もっとすごいハナシがあるのである。
読者よ
!友よ!! まあ、ハナシ半分に聞いてもらってかまわないが、
実は昨日この曲を唄っているジュリーの映像を
ついにY
ouTubeで見つけたのである。

昨日は先日亡くなった阿久悠さんのお別れの会が
都内のホテルで催された。
このニュースを見て、ジュリーの懐かしの映像を観ようと思ったら、
たまたま見つけたのである。

この素晴らしいタイミングの良さ。
しかもいま、僕はボジョレー・ヌーヴォ解禁にまつわる
キャンペーンの仕事も手がけている。
きっと、この仕事がいい結果につながると信じて止まない
ノーテンキな僕である。

この友人デザイナーは来月で会社を辞める。
以前、電話でそのことを告げられたとき、
彼女は別の仕事をしようと思うといっていた。
今日、お昼ごはんを食べながら、その話題になった。
彼女はもうデザイナーとしては疲れたので、
やっぱり別の仕事をはじめるという。
まだ勤めている会社の社長以外には話していないという、
彼女の将来のビジョンを聞かせてくれた。
彼女は美容系のサロンを始めたいというのだ。
これからはじめる仕事について、
おおまかなアウトラインを聞かせてもらったのだが悪くはないなと思った。

この友人は僕よりちょうど1歳年上で、
僕と同じく
20年以上、広告の仕事に携わってきた。
デザインの仕事に疲れたという彼女の気持ちもわからなくはない。
同じ時代を、同じ業界で生き抜いて来た仲間の一人として
彼女の再出発に心からエールを送りたい。

昨日、阿久悠さんのお別れの会の模様がニュースで流れたとき、
新沼謙治がチラリと映った。
新沼謙治はピンクレディーと同期である。
彼らがデビューした年の大晦日、
レコード大賞での出来事を僕はいまも憶えている。

司会は森光子であった。
森光子が各新人賞受賞者にインタビューをしていたのだが、
ピンクレディーの次は新沼謙治であった。
が、森光子は何をとち狂ったのか、
新沼謙治に対して「えー、角川さんは」と
同じく新人賞受賞者であった角川博の名前を口にした。
新沼謙治は東北人らしい朴訥とした口調で
「お、おら、新沼だ」といい、会場を爆笑のうずに巻き込んだ。

こんな、どうでもいいことを僕はよく憶えている。
よほど僕のアタマのなかのハードディスクは大容量らしい
()

新沼謙治といえば代表曲として
『嫁に来ないか』を思い浮かべる人が多いと思うが、
僕はこの曲よりデビュー曲の『おもいで岬』が好きだった。
作詞はもちろん阿久悠さんだった。
ピンクレディーと新沼謙治。
この
2組の歌を比較しても阿久悠さんの世界の幅広さがうかがえる。
阿久悠さん、あらためてすごい方でした。合掌。

そういや今日は阿久悠さん原作の映画
“瀬戸内少年野球団”
(監督・篠田正浩)でも主演を務めた
夏目雅子さんの命日でもあるという。
ふたたび、合掌。
実に美しい方でした。


2007.09