ニック・ロウ「恋する二人」
いきなりではあるが、タカハシ家は浄土宗である。
なので、芝の増上寺によくお詣りにいく。
なかでも毎年1月3日の増上寺詣りは僕の年中行事のひとつである。
そして増上寺をお詣りしたあと、箱根駅伝を沿道から応援するのだ。
昨日も増上寺をお詣りしたあと、
御成門の前で各校のランナーに声援を送った。
僕の隣には王子からひとりでやってきたというおばあちゃんがいて、
ついつい話し込んでしまった。
なにを隠そう僕は「立ち話のトシ」との異名をとるほどの話し好きなのだ。
そんなオーラが出ているのかどうかは知らないが、
僕はよく年配の方と話し込む。
僕の住んでいるマンションの上の階に大家さんが住んでいらっしゃるのだが、
お会いするとついつい話し込んでしまう。
大家さんはご主人さんを亡くされていて、
娘さんたちと一緒に暮らしている。
お花が大好きで、マンションの玄関先は
ちょっとしたフラワーガーデンになっている。
で、大家さんはよく玄関先でお花のお手入れをしているのだ。
そこに僕が居合わすと、得意の立ち話がはじまってしまうのだ。
だいたい30分は話し込む。
僕はおばちゃんか?
昨日、会ったおばあちゃんとは、
結局最後のランナーが通過するまで、ずっと一緒に声援を送っていた。
このおばあちゃんも毎年、御成門近辺で観戦しているらしい。
別れ際、「じゃあ、また来年元気でお会いしましょうね」といって別れた。
別に善行を積んだとかというほどのことではもちろんないのだが、
何かおばあちゃんの話し相手になったことが、
少しだけいいことをしたように思え、
お正月早々とても温かな気持ちになれた。
今年は僕も走る。
よくマラソンランナーは走っているときに何を考えて走っているんだろう、
という疑問を抱く人がいるが、
以前増田明美さんに聞いたところによると、
頭のなかで歌を歌っていることが多いという。
しかも、好きな曲を繰り返してだ。
箱根駅伝の解説を務めた瀬古さんのマイソングは
村田英雄の『王将』だったということを、増田さんに教えてもらった。
ちなみに鈴木弘美さんのマイソングは今井美樹の『プライド』で、
有森裕子さんは映画『トップガン』の歌だという。
きっと『デンジャーゾーン』あたりであろう。
昨日、箱根駅伝を観戦した後、
僕も走る際のマイソングを決めようと思った。
僕はやはりポップな歌がいい。
で、決めたのがイギリスのポップ職人
ニック・ロウの最大のヒット曲『恋する二人』である。
これなら、リズムも走る際には最適だ。
実に気持ち良く走れそうである。
テーマ曲も決まったところで、次はジョギングシューズの調達だ。
そうなのである。
僕はいまジョギングシューズを一足ももっていないのである。
加えてジャージも夏用のペラペラなものしか今はもっていない。
果たして、僕が走り始めるのはいつになることやらではあるが、焦ることはない。
しかるべき時期がきたら始めればいいのさ、と思っている。
僕のなかでは春先あたりでいいかなと思う。
春の陽光と心地よく風のなかを、
ニック・ロウの『恋する二人』を頭のなかでリフレインさせながら走る。
実に心地よさそうではないか。
早く春にならないかな。