ニューラディカルズ「ユー・ゲット・ホワット・ユー・ギヴ」

1998年のいまごろ、よく聴いていたのが
ニューラディカルズの『
You Get What You Give』である。
「君はきっと大丈夫さ、自分の心に従いな。
困難にぶつかっても僕がついている。
しっかり手を離すな。君のなかには音楽がある。あきらめちゃダメだ」という、この歌は
1990年代に登場したアーティストのなかではベストな1曲だと思う。

ニューラディカルズは、
この曲を含むデビューアルバム
1枚で解散
(といっても、ニューラディカルズはアーサー・アレキサンダー1人のプロジェクトなのだが)
してしまったが、僕はいまなお愛聴している。
来日公演も予定されていたというのに、本当に惜しいバンドであった。

1998年といえばサッカーW杯に日本が初出場した年だが、
当時は僕も現役バリバリのフットボーラーであった。
江東区の新砂運動場をホームグラウンドに月
2回のペースで、
しかも
1回につき2試合という恐ろしいペースでサッカーに興じていた。

が、いまはやっていない。
恥骨炎という、いやはやなんともな名称の故障を抱えてしまい、
プレーを続けるのが困難になってしまったのだ。

中学2年生のころ、僕は将来サッカー選手になりたいと思っていた。
学校の三者面談の席で、
そのために私立のサッカーの強豪校に進学したいという旨を母親と教師に告げたところ、
「おまえな、サッカーでなんか食べていけるわけないだろ」と担任にいわれ、
母親もその意見に同調した。
そして、いや応なしに僕は公立校へ進学するように決められてしまった。

たしかに当時の日本のサッカー界はまだアマチュアの世界で、
職業として確立されていたとはいえない。
さらには、僕がそのレベルの選手になれたかどうかもわからない。

しかし問題は、大人の判断基準で
少年の夢をいとも簡単に壊していいのかということなのだ。
この三者面談を終えたあと、僕は絶対にこんな大人にだけはならないぞと誓った。

ニューラディカルズの『You Get What You Give』のプロモは、
ティーンネージャーたちがまわりの
いかにもつまらなさそうな大人たちを次々と捕獲していくさまが描写されている。
ティーンネージャーにとってつまらない大人たちは敵なのだ。
それは、いつの時代もきっと変わらないはずだ。

僕が属していたサッカーチームに、現役の高校生が2人いた。
千葉の柏に住んでいたこの
2人は、
いかにもその近辺で悪さをしていそうなヤンチャな面構えをしていたが、
たいていの不良小僧がそうなように根はとてもいいヤツだった。
そのうちの1人が、ハーフタイムの雑談中に僕にこういった。
「オレもタカハシさんのように、年をとりたいっす」と。


このとき僕は
30歳。
つまらない大人にはなりたくないと思って生きてきた僕にとって、
この言葉は最高の賞賛だった。

あれから、さらに10年。
現役の高校生と話をする機会などほとんどない、いまのぼくではあるが
もし高校生に同じような言葉をかけられたらどうだろう? 
きっと、僕の人生は間違ってなっかたと、
その言葉の余韻だけでしばらくはおいしいお酒が飲めるんだろうな。


2006.12