中川五郎「25年目のおっぱい」


山本モナが巨人の二岡と
「熱い一夜」を過ごしたというニュースが世間を騒がせているが、
原田芳雄さんと同じく「アイ・ドント・ライク・ジャイアンツ」な僕は
二岡がナニをしようが知ったこっちゃないし、
山本モナにもまったく興味がない。

しかし、僕はどうしてもこの一件で知りたいことがある。

それは「なぜ、五反田のラブホテルだったのか?」ということである。
かたやプロ野球選手、かたや芸能人である。
同じしけこむにしても、もう少し違った場所はなかったのだろうか
?

報道によれば、二人は新宿二丁目で飲んだあと、
タクシーで五反田に向かったという。
新宿から五反田に向かうというのが、まず不思議に思ったのである。

五反田という街には、たしかにラブホテルはたくさんある。
でも、わざわざ新宿から向かうほどの街ではないと思うのだ。

ひょっとしたら五反田のラブホテルにはすごい仕掛けがしてあって、
「通」の間では有名なのかもしれない。
それなら納得である。
「五反田にすごいホテルがあんだよ。行ってみない
?」と二岡がウッシッシと誘い、
山本モナがそれに乗ったということはあり得なくはない。
逆に、山本モナが「五反田にいいホテルがあるんですよ。どうせなら、そこで」といって
ウッフーンと誘ったのかもしれない。

もし芸能ジャーナリズムがこのネタを追いかけるのであれば、
ぜひともここらヘンを突っ込んで調べてほしいものである。

世の論調としては、
報道番組のキャスターをしている女性と妻子ある有名なプロ野球選手が、
ただならぬ関係と思われるであろう行動をとったことに対し
倫理的な非難の声が上がっているが、
僕はそんなことはどうでもいいと思う。
だいたいにして、
その行動自体を非難できるような高潔な人間がいったいどれほどいるというのだ。

少なくとも僕はできない。

飲んでいて、意気投合して、
一夜を過ごしたなんてことは決して珍しいことではないし、
「性欲」というものの前では
芸能人もスポーツ選手も一般の
OLやサラリーマンもなんら変わりないと思う。

かくいう僕も、そんなことを何度も経験してきた。

以前、ある女性とゴハンを食べに行こうと約束をしたことがある。
恵比寿に美味しい中華料理のお店があるので、
ぜひ一緒に行こうと誘われたのだ。
待ち合わせをした時間が比較的早い時間だったので、
ゴハンを食べお店を出た時点で
9時過ぎぐらいだった。
まだ時間が早いから飲みに行こうということになり、
僕は美味しい中華料理を食べさせてもらったお礼を兼ねて、
新宿にある行きつけのバーに誘った。
なかなか静かで落ち着いたバーなのだ。
そこで飲んでいるうちに、僕は目の前にいる女性を口説きたくなってきた。
僕のなかの「性欲」がいたずらをはじめたのである。

僕は、ありとあらゆるボキャブラリーを駆使して、
なんとか合意をとりつけた。
この時点ですでに二人ともかなりの量のお酒を飲んでいたのだが、
相手の女性はめちゃめちゃお酒が強かった。
バーを出たあとも、まだ飲もうというのである。
僕はもうお酒よりも「性欲」優先の状況下にあったので、
とっとと歌舞伎町あたりのラブホテル街へと向かいたかったのだが、
そんな僕に対し、その女性はこういった。

「私を抱きたいならラブホテルとかじゃイヤよ。
ちゃんとしたホテルをとって。
そして、その前にホテルのバーに付き合って」

ちなみにこの女性、ものすごい美人かといえばそうではない。
美人の尺度は個人的に違うと思うが、
その女性は社民党の福島瑞穂党首のような感じの人で、
僕のなかでは「なにがなんでも口説きたい美人」というタイプではなかった。
なのに、なぜ口説いたかといえば、
まさに「性欲」がいたずらをしたとしかいいようがない。
平たくいえば「今夜、このヒトとデキる」という期待感が僕のなかで股間とともに膨らみ、
制御不能となってしまったのである。

「性欲」の前にすべての自己制御を失っていた僕は、
彼女の申し出通り新宿西口の某有名ホテルに部屋をとり、
チェックインする前にバーで飲んだ。

という話を、後輩にしたことがある。
この後輩の同僚が
「女性を口説くときには、ホテル選びも大切だ」と力説していたという話を聞いて、
僕の経験談をこの後輩に教えてあげようと思ったのである。

「いやあ、さすがタカハシさん、やりますね」と、
その後輩は僕が女性のいうがままにホテルをキープしたことに感心していた。

「スゲエだろ。でもよ、この話にはオチがあるんだよ」と僕は言葉を続けた。

「部屋に入った時点で完全に飲み過ぎていたから、
もうオレのチョロ松が役に立たなくて、途中までしてあきらめちゃったんだよ。
高いお金を払って、ただ横になりに行ったようなもんだよ。
次の日も仕事だったんで目覚めたら支度して、
そのまま
8時ぐらいにホテルを出てきちやったし。どうだ、情けねぇだろう」

僕のこの自虐的な実話に、後輩が大爆笑したのはいうまでもない。

山本モナは今回、ラブホテルには入ったが
お酒を飲んだだけで二岡を残して途中で帰ったとコメントしているそうだが、
そんなコメントは説得力がない。
誰がそんな話を信じるかってなもんだ。

どうせなら二岡が飲み過ぎたために僕と同じようなことになって、
不首尾に終わりましたとコメントしたほうが、
肉体的な関係を否定するのであれば、よっぽど真実味があると思う。
たしか、こういった場合であれば、
少なくとも法的にはいわゆる「不貞行為」とはならないはずである。

二岡くん、参考にしたまえ。

それにしても今回の二岡といい、以前の僕といい、
つくづく男って「性欲」の前では情けない。

かつて大好きな早川義夫さんの作品のなかに
『悲しき性欲』という歌があるということをチラリと書いた記憶があるが、
僕はこの歌を聴いてあらためて早川さんというのは「正直な歌づくり」をしているなと思った。
飾らず、カッコつけず、
真に自分のなかからわき上がってくる言葉を素直につむいでいると感じたのだ。

そんな早川さんに対し
「僕はね、共演した女の子とは全員ヤッちゃうんだよ」などといって、
羨ましがらせているアーティストが中川五郎ちゃんである。
でも僕は、それは五郎ちゃんのタチの悪いジョークだと思う。

五郎ちゃんの曲に『25年目のおっぱい』という曲がある。
奥さんの青木ともこさんが
25歳の誕生日を迎えた夜のことを唄った歌だ。
1976年に発表された同名のアルバムは廃盤となっているので、
なかなかこの曲を聴く機会はないと思うが、
ぜひ多くの人に聴いてほしい名曲中の名曲である。

どのぐらい名曲かといえば、
僕のなかではジョン・ノレンの『ウーマン』をしのぐ女性讃歌なのである。


2008.07