森進一「襟裳岬」
ここ数日、狂ったように『赤い風船』を聴いている。
あの浅田美代子のデビュー曲で、
ドラマ史上に残る向田邦子さん脚本のドラマ“時間ですよ”第3シリーズの挿入歌だった、
あの『赤い風船』ある。
この曲をエンケンこと遠藤賢司が唄っているバージョンがあるのだ。
先週末、仕事をしていたら急に、本当に急に、
何かが降りてきたかのようにこのエンケン版の『赤い風船』が聴きたくなり、
以来ここ数日、毎日聴いているという次第だ。
去年の12月14日の日記にも書いたが僕は少年時代、浅田美代子の大ファンだった。
将来はお嫁さんにしたいとまで考えていた。
だから吉田拓郎と結婚すると聞いたときはショックで、ショックで拓郎が大嫌いになった。
僕が吉田拓郎を知ったのは1974年、
森進一が唄った『襟裳岬』によってである。
吉田拓郎作曲によるこの曲は、この年のレコード大賞を受賞。
たしかその表彰の場に拓郎はジーパン姿で登場したはずである。
浅田美代子が吉田拓郎と結婚したのは1977年。
なので『襟裳岬』がヒットした当時は、まだ拓郎に殺意(!?)は抱いていない。
子ども心に『襟裳岬』はいい歌だなと思ったし、それはいまも変わらない。
年末になると聴きたくなる1曲である。
で、ついついさっき聴いてしまった。
森進一という歌手はこの『襟裳岬』といい、
大滝詠一作曲による1982年の『冬のリヴィエラ』といい、
いわゆる演歌畑の人とは異なる作曲家の歌を唄わせると本当にうまい。
拓郎自らも『襟裳岬』を唄っているが、
僕の拓郎嫌いを差し引いてもやはり森進一バージョンのほうに軍配が上がると思う。
森進一も辛気くさい歌ばかり唄わず、
またポピュラーソングのジャンルの人と作品をつくればいいのになと思う。
きっとまた、幅広い層から支持されるはずである。
まあ、熱心な森進一ファンからすれば、余計なお世話かもしれないが。
吉田拓郎と浅田美代子は1983年に離婚。
その年の秋、浅田美代子はTBSドラマ“もういちど結婚”で芸能界へ復帰した。
このドラマの主演は藤竜也と最近またまたお騒がせの三田佳子。
ドラマの終盤、浅田美代子と藤竜也のキスシーンがあった。
少年時代、映画“あした輝く”で志垣太郎とのキスシーンに大ショックを受け、
そのキスシーンの前に2人がビスケットを食べていたことから、
志垣太郎はおろかビスケットまでが大嫌いになった僕ではあるが、
さすがに“もういちど結婚”のときはもうショックは受けなかった。
このとき僕は高校3年生。
ちったあ世の中がわかってきていたのだ。
浅田美代子は1956年2月15日生まれなので、僕とちょうど10歳違いである。
いまでこそ年上の奥さんや恋人は珍しくないが、
僕が子どものころはまだまだ珍しかった。
1973年に発表されたジュリーの『危険なふたり』も年上の女性との恋を唄った曲だが、
「なんで世間をあなたは気にする」(作詞・安井かずみ)という歌詞があるように、
まだまだ当時は女性が年上ということに対し、世間の目は冷ややかだったと思う。
そんななか、10歳も年上の、
しかも芸能人と結婚するんだなんて考えていたのだから、
タカハシ少年もかわいいものである。
しかし、そんな実現の可能性が限りなくゼロに近い、
途方もないことを夢見ることができるのは少年少女の特権だと思う。
そんな壮大な夢を抱く少年少女に対し、
そんなことは絶対に無理さなんてワケ知り顔で語り、
少年少女の心を無神経に傷つける大人にだけはなりたくないと思う。