遠藤ミチロウ「おやすみ


今日は目黒区美術館に行ってくる。

自慢じゃないが、僕は絵心がない。
学生時代の図工・美術の成績はたいてい
23だった。
だから僕が仕事で描く絵コンテやサムネイルは、
実にいい加減だ。
そのいい加減なサムネイルにいっぱいト書きをつけて、
絵が描けない分を補いイメージを伝える。
それでも伝わらないときは、
最終手段でジェスチャーをする。

僕はそんなに上手じゃなくていいから、
せめてアタマのなかで描いているビジュアルぐらいは
絵で表現できればなとつくづく思う。

そんな僕が何しに美術館に行くかといえば、
いま目黒区美術館の区民ギャラリーで原マスミ展をやっているので、
それを観に行くのである。

さらに驚け!
今日はここで
14:00からエンケンこと遠藤賢司と
佐野史郎というまさに夢のようなジョイントのライブが行われるのだ。

以前にも書いたように僕はエンケンと佐野史郎が大好きだ。
僕が行かなきゃライブも始まるまいってなもなんで、
勇んでチケットを入手したのだ。

生の佐野史郎を観るのは
8年半振りである。
さらにいえば佐野史郎のライブは初体験だ。
それはもう楽しみで楽しみで仕方がない。
僕の今年のゴールデンウィーク、
最大のイベントといっても過言ではあるまい。

原マスミはイラストレーターとしてのみならず、
ミュージシャンとしても活動している。
199612月に発売された
エンケンのトリビュートアルバム『プログレマン』においても、
佐野史郎によるエンケンの初期の名曲『ハロー・バッバイ』に
コーラスとして参加している。
エンケンをリスペクトしてやまない佐野史郎と原マスミ、
そしてエンケン本人が今日どんなパフォーマンスを魅せてくれるのか?
その期待は高まるばかりである。

前述のエンケン・トリビュートアルバムは
さまざまなアーティストがエンケンの曲を
1曲ずつとり上げ
12曲が収録されているのだが、
特に若いアーティストたちはアレンジに懲りすぎていて、
正直いって期待していたほど楽しめなかった。

そんななかで、圧倒的な存在感を示したのが遠藤ミチロウである。
ミチロウはエンケンの『おやすみ』という曲をとり上げたのだが、
生ギターとハーモニカというシンプルな演奏で、
とても素晴らしかった。

余計なものはあまり加えないほうがいいという好例である。

遠藤ミチロウといえば、
1980年代はスターリンのヴォーカリストとして舞台上で全裸になったり、
豚の頭や臓物を客席に向けて投げつけたりといった
過激でスキャンダラスなステージを展開していた。

僕はスターリンには正直いってついていけなかった。
ジャックスの『マリアンヌ』のカバーは
友だちにダビングしてもらい熱心に聴いたのだが、
それ以外はさほど熱心に聴いたわけではない。
ので、僕はあまりスターリンについては偉そうなことをいえない。

1993年スターリン解散後、
ミチロウは生ギター
1本で全国のライブハウスを廻るツアーを開始。
一時期は年間
200ステージをこなしていたという。
去年の
11月には、僕がこれまた大好きな早川義夫さんと男2人で
沖縄に演奏旅行に出かけている。

このときの早川さんの日記で知ったのだが
ミチロウはお酒がダメならしい。
そしてミチロウは沖縄のコンビニで、
わざわざ公園の猫にあげるエサを買っていたという。

正直にいえば僕はずっと
遠藤ミチロウというアーティストを誤解していた。
酒なんか朝からガバガバ飲むし、
公園の猫なんて蹴飛ばしていそうな人間像を抱いていた。

僕はずっとスターリンの遠藤ミチロウのイメージで、
遠藤ミチロウを見ていたのだ。

大槻ケンヂくんの本のなかで、
ミチロウの人柄がにじみ出ているエピソードが紹介されている。

ある日、二人でエンケンのライブにゲスト出演した際、
ステージの袖でミチロウは大槻ケンヂくんに嬉しそうにこういったという。
「大槻君、舞台に出たら俺遠藤、俺ケンヂっていおうよ」

遠藤ミチロウのステージを、いまこそ観てみたい。
できればエンケンと
W遠藤で夢のジョイントをやってくれないかな。


2007.05