増田恵子「すずめ」


僕が高校生のころ、
ピンクレディーのケイちゃんこと増田恵子が『すずめ』という曲を発売した。
当時、大人気番組だったオレたちひょうきん族の
“ひょうきんベストテン”でもさっそくとり上げられ、
誰かが増田恵子に扮してこの『すずめ』を唄っていた。
このとき、増田恵子に扮していたのが誰だったのか、
懸命に想い出そうとしたのだがダメだった。

“ひょうきんベストテン”のなかで増田恵子に扮した誰かが
「すずめ すずめ」と唄っていると、
舞台がだんだん下がっていき沈んでしまうという演出がされていて、
僕は「くだらねぇな」といいながら大爆笑したことを憶えている。

スズメといえば最近、ちょっぴりうれしい発見をした。
ウチの隣の建物の、
ちょうどウチの台所の窓から真正面にところにある丸い小さな隙間に、
スズメの巣を発見したのだ。
スズメはどうも
2羽いるようで、
毎日せっせとせっせと巣づくりに励んでいる


鳥の巣づくりというのは大変な作業だと思う。
木の枝やら枯れ草やらを
11本運んできて、巣をつくるのである。
その労力たるやハンパではない。
僕は鳥の巣づくりに対して敬意を表する。

昔、リクルートの週刊住宅情報の広告にこんなコピーがあった。
「女房のおやじに、家の一軒ぐらい持てん奴は・・・・・・と言われたときは、ムッとした。
今、ムスメの彼に、同じことを言っている。順ぐりだね。」

書いたのは僕が尊敬してやまない、
仲畑貴志さんである。
たしかに結婚して、マイホームを建ててこそ、
オトコは一人前という概念があった。
今もそうなのだろうか?

僕は自慢じゃないが、
マイホームがほしいと一度も思ったことがない。
もちろん買ったことも一度もない。
まさに「家の一軒ぐらい持てん奴は・・・」の典型である。


「毎月の家賃分で住宅ローンを組めるでしょ」という人はいる。
たしかに理屈はそうなのだが、別にほしいと思わないのである。
「毎月の家賃なんて、捨てているようなものだ」という人もいるが、
そうは思わない。
毎日毎日、雨風をしのぐ場所を提供してもらっているのだ。
それの代償としての家賃なわけで、
捨てているなんていっては失礼だと思う。

僕が偉そうにいうのもなんだが、
人生において大切なのはマイホームをもっているか否かではなく、
「帰りたい家があるか否か」だと思う。
たとえ狭い賃貸のアパートに住んでいても
心から「帰りたい」と思える家を持っている人のほうが、
大豪邸のオーナーなのだがあまり帰宅したがらない人より、
よほど幸せな人生なのではないかと思う。

わが家の隣でせっせと巣づくりに励むスズメくんたちを見ていたら、
ささやかでも幸せであることの大切さについて考えさせられた。


2007.05