ラウドネス「クレイジー・ナイト」


たいへん恥ずかしい話なのだが、
僕は小学
6年生のころまでオネショをしていた。

そんな僕が先週土曜日の朝、
寝ている間にウンチをもらしそうになった。
ウンチがもれそうになっている夢を見たのである。
僕は慌てて飛び起き、トイレにかけ込んだ。
ここ数年で最大級というか、最悪クラスの猛烈な下痢だった。

と、いきなり尾籠なハナシで申し訳ない。
ちなみにこのハナシ・・・以下の内容とはまったく関係ないので悪しからず
()

すんでのところでトイレに駆け込んだおかげでなんとか大惨事をまぬがれた僕は、
このまま起きていようと思い、朝刊を読み出した。
朝の
6時半ぐらいだった。

朝刊をひと通り読み終えてしまったあと、
あろうことか僕はまた眠ってしまった。

次に目が覚めたのは11時半過ぎであった。
これまた、ここ数年で最大級というか、最悪クラスの強烈な寝坊であった。

再び慌てて飛び起き、僕は身支度をはじめた。
そして午後
1時ぐらいに、
ジョージ・ハリソンを偲ぶために東京ドームへと出かけた。
東京ドーム前に着いてみると行列ができていた。
1991年、ジョージ・ハリソンがエリック・クラプトンらとともに来日した際、
最終公演を行ったドーム前でジョージを偲ぼうではないか、
という人たちの行列ではもちろんない。
キンキ・キッズのコンサートグッズを買い求める人たちの列であった。

若いギャルやかつてのギャルたちのウキウキとした姿を横目にしながら、
ジョージが亡くなったとされる
1時半、
僕はドーム前から東の空に向かってジョージの冥福を祈った。
空はスッキリと晴れ上がり、
ポカポカした陽気の気持ちのいい午後であった。
僕はスカパーの番組ガイドを買ったあと、
ホテホテと春日通りの坂をのぼり帰宅した。

パラパラと買ってきた番組ガイドを見ていたら
R35」だの「アラフォー」だのという単語が目に入った。
いずれも
80年代から90年代前半にかけてのミュージックビデオを流す番組情報であった。


以前もチラリと書いたが、
僕は「
R35」というマーケティング的な概念が嫌いである。
なんとなくハナについて仕方がないのだ。
同様に「アラフォー」という言葉にも違和感を覚えずにはいられない。

「アラフォー」とは“Around 40”の略で、40歳前後の女性を指すらしい。
同名のドラマが今年
TBSで放映されたそうだが、僕は観ていない。

なんでイチイチ「R35」だの「アラフォー」だの
世代的なカテゴリーを設けたがるのだろうか
?
世代的には同じであっても1人ひとりの趣味・嗜好や個性は違うワケで、
そんな個性を無視してひとくくりにするのはどうなのだろうと思ってしまう。
ましてや
80年代のミュージックビデオを流す番組に、
そんな概念は必要ないのではないかと思う。
僕が
60年代の音楽を10代のころに聴いて夢中になったように、
素晴らしいものはいつの時代も素晴らしいのだ。
80年代の音楽はなにも「R35」や「アラフォー」の人たちだけのものではない。

そんなことを思いつつ、
僕はこれまた以前チラリと書いたことがある
1993年放映のドラマ“チャンス!”のなかで
三上博史が演じた本城裕二ばりにひと言「ハッ
!!」と吐き捨てるような声を発し、
番組ガイドを閉じた。

翌朝、つまり昨日は朝515分に起きた。
もちろんジョージ・ハリソンが亡くなった日本時間の午前
6時半に合わせて
1966年にビートルズがコンサートを行った武道館へと行き、
そこでジョージを偲ぼうという目論見のためである。

外はまだ真っ暗だった。
土曜日の昼間はあんなに混雑していたドーム前も、
グッズ売り場のテント前に警備員が立っているだけだった。
さすがに、こんな朝早くから出歩いている人間はそういまいて、
ワッハッハなどと考えながらドーム前を通り過ぎ、
後楽園の
WINSの前に差しかかったらナントすでに56人が集まっていた。
きっと、有料指定席をとるために朝早くから並んでいるのだろうが、
それにしてもまだ夜も明けきらぬ朝の
6時前である。
この人たちは、いったいどこからどうやって来たのだろうか
?
あらためて競馬ファンの情熱を目の当たりにした思いであった。

その後、無事に6時半前に武道館に着き、ジョージを偲んだ。
こうして朝からひと仕事を終えた(!?)僕ではあるが、
このまま帰るのももったいないので
さらに御茶ノ水→湯島→本郷三丁目というルートをウロチョロと歩きまわり、
8時半前に帰宅した。

この道中、東大の構内を我が物顔で闊歩していたとき、
僕はある
1つの概念がアタマに浮かんだ。
「ラウフォー」という概念である。
「ラウフォー」とは
Loud(騒々しい)を語源とした“Loud 40”の略で、
不惑の
40を過ぎても小さくまとまらずに「反抗的でやかましいヤツ」を指す。
つまり僕のような人間のことを指す言葉である。

さらに50代になっても60代になっても70代になっても、
そんな姿勢で生きている人たちを僕は敬愛を込めて
「ラウダー」
(Louder)と名づけようと思った。
もちろん
10代であれ、20代であれ、30代であれ「ラウダー」はいてもいいのだが、
若いころは「反抗的でやかましい」のはある種当たり前と思うので、
「ラウフォー」からが真の「ラウダー」への登竜門としようと思ったのである。

R35」や「アラフォー」よりは
「ラウフォー」のほうが断然カッコいいぞと自画自賛しつつ、
さっそくこの「ラウフォー」をあちらこちらでいいふらし、
友人連中から「またバカなことをいいはじめた」と笑いをとってやろうと思いつつ帰路についた。

10時半過ぎ、またしても後楽園のWINSでターフィーくんと満面の笑みで戯れたあと、
競馬のジャパンカップを観戦しに東京競馬場へと向かった。
けど、枠連と馬連で挑んだジャパンカップの馬券は見事に外れた。
1着になったスクリーンヒーローは当初、期待の馬をピックアップした際に入れていた。
が、最後の最後で外した。

本来であれば、嗚呼しまった!!と後悔するところなのだが、
僕はサバサバしていた。
なぜなら
2着のディープスカイも3着のウオッカも、4着のマツリダゴッホも
僕は「ナイ」と踏んでいたのである。
なので、仮にスクリーンヒーローを押さえていたとしても、
単勝か複勝でない限り当たりにはならなかった。
さらにいえば、単勝
9番人気だったスクリーンヒーローを押さえておきながら、
1番人気を分け合ったウオッカとディープスカイを押さえずに負けたとしたら、
それは相当に悔しい思いをしたと思う。

このようにあまりにも見事な負けっぷりだったので、
僕はむしろスッキリした気持ちになれたのだ。
が、まわりの多くの人たちは、ああだこうだとしきりに悔しがっていた。
馬券が外れたのは、すべて自分自身の責任なのにである。

混戦のジャパンカップを制した
スクリーンヒーローとデムーロ騎手がメインスタンド前に戻ってきたとき、
僕は勝者を称える意味で拍手をした。
そのとき、僕の隣でレース結果をグチグチと嘆いていた見ず知らずのオヤジが聞こえよがしに
「空気を読めよ」といった。
僕はこういうヤツが大嫌いである。
すべての勝負事は戦い終わってノーサイドなのだ。
負けたら潔く負けを認め、勝者を称えるべきだと僕は思う。

しかし、残念ながらそう考えない人は多いみたいで、
スタンドからの拍手はレース前の盛り上がりがウソのようにまばらなものだった。
僕はあらためて、日本ってイヤな国だなと思った。

とはいえ、別に僕自身の価値観を他人に押しつけるつもりはサラサラない。
拍手するのも自由なら、しないのもまた自由である。
が、自分の信念に基づいて行動したことを、見ず知らずの他人に、
しかも「空気を読めよ」などという軽薄な言葉で避難されるのはガマンならない。

次の瞬間、僕は「空気を読めよ」といってきたその声の主に対し、
映画“ブラック・レイン”の冒頭シーンにおける
松田優作のような狂気をはらんだ目を向けてあげた。
なんてったって、こちとら「ラウフォー」なのである。
勝者は称えるというオレの信念に文句があるんだったら、
東京競馬場に集まった
10万人以上を相手に
ハデに立ち回ってやろうかぐらいの勢いなのである。

オヤジは慌てて僕から目をそらし、
一緒に来ていた自分の仲間たちとまたもやグチグチと恨み節を続けていた。

まあ、こういうご時世なので見ず知らずの人に対し、
あまり挑発的な態度はとらないほうがいいのだろうが、
こればかりは性分だから仕方がない。
さらにいえば自分の信念とすることを、
納得させられるだけの理由なしに否定されても
エヘラエヘラしていられる人間になることを僕は恐れる。

なんてことを考えていた昨日から一夜明けた今朝、
パソコンを立ち上げてヘッドラインニュースを見ていたら
ラウドネス
(LOUDNESS)のドラマー、
樋口宗孝氏が肝臓ガンのために昨日亡くなったというニュースが出ていた。
ラウドネスは日本最初のヘビメタバンドといわれ、
海外でも高い評価を得ていた。
ヘビメタはあまり好まなかった僕ではあるが、
10代のころヘビメタ好きの友人宅で何度か聴かされたことがある。
たしか『クレイジー・ナイト』という曲を何度も聴かされたと憶えている。

偶然にしてはでき過ぎている思いもよらぬLoudつながりのニュースに触れ、
僕は悪い夢でも見ているような気分になった。
ヘンなハナシだが、
昨日の朝突然「ラウフォー」なんて突拍子もない概念を思いついたことが、
なにか虫の知らせだったような気がしたのである。

夢中になって聴いたバンドではないとはいえ、
やはり知っているミュージシャンが亡くなるというのはショックである。
樋口宗孝氏のご冥福を心から祈りたい。合掌

と、ここまで書いてアップしようと思ったら、
「アラフォー」とエド・はるみの「グ〜
!」が
今年の流行語大賞になったというニュースが出ていた。
そんなにいいのか
? 「アラフォー」が!? ハッ!!


2008.12