ルー・リード「ワイルドサイドを歩け」

自称ボヘミアンの僕は、
「ワイルドサイドを歩け」を座右の銘としている。
そう、ルー・リードの代表曲だ。

アメリカをヒッチハイクして縦断中に眉を抜き、
すね毛を剃って“オンナ”になったフロリダ野郎のホリー。
裏部屋でみんなに「ダーリン」と呼ばれ、かわいがられながらも
常に冷めたアタマをキープしていたロングアイランド出身のキャンディをはじめ、
人生の裏街道を歩いている人たちが、
けだるいメロディラインに乗って続々と登場する。

僕がこの曲をはじめて知ったのは、記憶にない。
正直にいえば
10代〜20代前半の頃は、この曲に対してあまり興味がなかった。
この曲を意識的に聴くようになったのは
1990年代に入ってからである。
だから僕は遅れてきた“
Walk on the wild side”野郎なのである。

聴き続けるうちに、大好きになった。
20代後半から30代前半にかけて僕は、
ボヘミアン気取りで『ワイルドサイドを歩け』のコーラス部分を口笛で吹きながら、
よく真夜中の歌舞伎町の裏通りをひとりで闊歩したものだ。
怖いものなど、なにもなかった。

ボヘミアンの定義について、
ビート詩人の故アレン・ギンズバーグは
佐野(元春)くんのインタビューでこう答えている。

「ボヘミアンとは、インターナショナル・マナーをもち、
自分の心、自分の肉体、自分のセックス、自分のアート、
自分の結婚、自分の生活、自分の人生をよく把握している人のこと。
そして、自分の検閲からも、自分自身の抑制からも、
自由で、実験の心を持ち続ける人なんだ」

僕はこの言葉について、こう解釈した。
「ボヘミアンは、まず人に迷惑をかけるな。
そして自分を律し、アタマでっかちにならず、常に冒険心を抱け」と。


このギンズバーグの言葉を知ったのは
20歳そこそこの頃だったと思うが、
当時よりもいまのほうがやはりズシンと自分のなかに響く。

40歳ともなれば、ちょっとした地位だとか、財産だとか、
守るべきもののほうが増え、なかなか冒険などできるものではないと思う。
が、僕は違う。たいした財産もなけりゃ、自慢じゃないが運転免許すらもっていない。

そんな僕でも、人生でこうしたいという理想はもっている。
その理想の実現のためにも、僕はもうひと勝負もふた勝負もしなきゃいけない。
そしてその勝負に出るタイミングのタイムリミットは、
そろそろ近づいている。
50になってからじゃ、とてもじゃないが遅いのだ。

もちろん理想を追い続ける、その道のりは楽じゃないだろう。
でも『ワイルドサイドを歩け』の心意気で臨めば、
何ごとも大丈夫なような気がする。

Doo, doo, doo, doo, doo, doo, doo, doo♪


2006.12