KUWATA BAND「BAN BAN BAN」


先週の土曜日、浅草に行ってきた。
そう、三社祭を見に出かけてきたのである。
今年は宮神輿が出ないという残念なお祭りになってしまったが、
それでも三社祭と聞けばやはり血が騒ぐ。
というワケで、例年どおり呼ばれてもいないのに
「ワッショイ、ワッショイ」と今年も出かけた次第である。

浅草寺の前から浅草神社へと移動し、
町内神輿の宮入をしばし見学したあと、
僕は浅草
ROXなどがある六区のほうへ足を向けた。
ロック座でストリップを見学しに行ったのである。

というのはウソで、ロック座には目もくれず
(読者よ! 友よ!! 「ホントか?」とつっこむなかれ)
ロック座のちょっと先、
WINSのちょうど向かい側にあるスマートボール屋さんに行ったのである。

スマートボール屋さんといっても、
21世紀を生きるナウなヤングには分からないだろうが、
僕が子どものころはよく見かけたものである。
それが浅草には
1軒だけ残っているのだ。
しかも土・日だけの営業で。
5月に入ってから東京タワーで蝋人形を見たり、
水上バスで浅草に行ったりと、
行きそで行かないところに出没したり、
しそうでしないことをやったりしている僕だが、
スマートボールというのはまさに、しそうでしないというか、
やりたくてもなかなかできないことの
1つ。
せっかく土曜日に浅草に行ったのだからと、
久々に立ち寄ってみた次第である。

このお店は自分が打つ台を決めたところで、
200円で50発か300円で75発の玉(ちょいと大きめのビー玉)を買うというシステムになっている。
お金を払うと、お店の人がスマートボール台にゴロゴロゴロと玉を入れてくれて、
それを
1発ずつ弾いていくのだ。
台にある
5という穴に入ると玉が5発出て、
15という穴に入ると15発出る。
仕組みはそれだけだ。
パチンコ台のようにけたたましい電子音もなければ電飾もない。
実にシンプルな遊戯台である。
が、なかなか穴に入れるのは難しい。
滅多やたらには入らない。
だからこそ、入ったときはうれしい。

結局、僕は300円の元手で30分近く、ここで遊ばせてもらった。
一応、このお店では出た玉数に応じて、
お菓子やぬいぐるみなどと交換できるシステムになっているのだが、
目的は景品ではない。
僕は持ち玉が尽きるまで虚心坦懐、明鏡止水な心境で玉を弾いた。
まさに非生産的といえば非生産的。
だが、こんな贅沢な時間を過ごすのも悪くはない。

おかげさまでアタマのなかがいい塩梅になった僕は、
足どりも軽やかに帰路へとついた。

昨日は昨日で、朝から後楽園のWINSに出没していた。
賢明な読者諸君なら、もうおわかりであろう。
またまた
JRAのマスコットキャラクターである
ターフィーくんに会いに行ったのだ。

実は先週もWINSに出かけたのだが、
ターフィーくんには会えなかった。
ターフィーくんに会う、ただそれだけのために出かけたというのに残念ではあったが、
まあ先週の日曜日は小雨まじりの天気だったので、
ターフィーくんも
濡れてはいけないとお休みしたのかもしれないと自分なりに結論づけた。

しかーし!! 昨日は朝から快晴。
絶好の競馬日和である。
僕は張り切って後楽園へと向かった。
案の定、ターフィーくんはちゃんといた。
僕は道行く人に手を振ったり、
子どもたちに愛嬌を振りまいたりしているターフィーくんを見ながら、
しばしまた、のほほんと贅沢な時間を過ごした。

帰り道、ちょっと別ルートで帰ろうとしたら、
道路の向こう側の小学校のまわりでフリーマーケットを行っていた。
何気なく目をやった次の瞬間、僕の目はあるモノに釘付けになった。

薬屋さんの前によく置いてある、
あのオレンジ色のでっかいサトちゃん人形が置いてあったのだ。
「もしや、アレが売られているのか
!?」と僕は急ぎ足で道路を渡り、
その売り場へと向かった。
もし売り物で値段が手頃なら買っちゃおうと思ったのだ。

僕が住んでいるマンションは1フロアに1世帯しかなく、
玄関とエレベーターの間には
2畳ぐらいのスペースがある。
僕は前々から、ここにナニか存在感のあるものを飾ったらウケるだろうなと考えていたのだ。
サトちゃん人形もその候補に挙がり、
僕はネットオークションで探してみたことがある。
ちょうどそのとき運良く出品されていたのだが、価格は
10万円を超えていた。

ウケを狙うために10万円。
僕は悩んだ末に、あきらめた。
いくらウケるためとはいえ、その金額はやはり高すぎた。

そのサトちゃん人形を見つけたのだ。
しかもフリマなら格安価格で手に入るかもしれない。
僕はツイている。
そう思い自分自身を祝福しながらイソイソとその場へ近づき、
コレは売り物ですか
?と聞いた。

「ええ、そうですよ」とそのフリマの主は僕に答えた。

僕は思わず、心のなかでガッツポーズをつくった。
そして、いくらかと聞いた。

3万円で買ってください」

その主は平然と僕にいい放った。
負けたと思った。
世の中、そんなに甘くはないなと思わずにはいわれなかった。
オークションに比べたら安いことは安いが、それでもやはり高かった。
僕はスゴスゴとその場を立ち去った。

失意のなか帰宅し、ホヘーッとしながら競馬中継を見ていた。
馬券を買う気はハナからなかったのだが、
パドックの様子を見ていたら急に馬券を買ってみようという気になったのだ。

新聞で9番のウオッカという馬が1番人気だということは知っていたのだが、
他の馬についてはナニもしらなかった。
が、どうも
6番の馬が良さげに見えたのだ。
で、僕は前々から名前を知っていた福永祐一騎手の乗る
3番と6番、
そして武豊騎乗の
9番に賭けることにした。

といっても馬連の複勝で100円ずつ、
300円というショボイ賭け方なのだが、問題は金額ではない。
当たるという結果が重要なのだ。
僕は大急ぎでパソコンを立ち上げ、
300円分の馬券を買った。

ら、当たったのである。
僕が「むむ、コレは
!!」と目をつけた6番の馬が1着になり、
ウオッカが
2着に入ったのだ。
馬連
6-9の配当は1670円だった。
この馬券を
2,000円分買っていればサトちゃん人形が買えたのに、
なんてことは考えなかった。
当たった、というその事実だけで僕は十分に満足だったのである。
いってみれば自分が立てた仮説を実証できた、そんな満足感だった。

そんなこんなで、この週末は遊びほうけていたので、
今週はしっかりと働かなくてはいけない。

今日の朝刊にサザンオールスターズが
来年から無期限の活動停止に入る旨の記事および広告が出ていたが、
こちとらそんな悠長なことをいっていられる身分ではないのである。

以前、僕はサザンについて「金の匂いのするバンド」と批判したが、
今回の活動停止発表も
今年のツアーや新曲発表を盛り上げるための演出のように思えて仕方がない。
だいたいサザンは、
80年代半ばから活動したり休んだりの繰り返しだった。
サザンが活動を休止している間、
桑田佳祐は
KUWATA BANDを結成し『BAN BAN BAN』をヒットさせたり、
ソロで活動したりしていた。

そんな過去の事実があるから、
いまさら活動休止を発表する必要があるのか僕はついつい疑問視してしまうワケである。

僕が大好きなチープ・トリックのギタリストで
スポークスマンでもあるリック・ニールセンは、
あるインタビューのなかでこう語っていた。
「大金持ちにはならない」「超カッコよくはならない」そして「働き続けること」
これがチープ・トリックだと。

先月24日の来日公演では日本武道館を満員にしたチープ・トリックではあるが、
いまも数百人規模の会場でライブを精力的に続けている。

聞けばサザンはデビュー30周年の記念ライブとして、
日産スタジアムで
4日間の公演を行うらしい。
延べ動員観客数は
40万人ぐらいになるだろう。
まあ、お祭りなのだから、
大きな会場で多くの人々を集めて盛大にライブを行うのもいいと思うが、
どうも僕には「これで売上げが何百億円見込める」という
ビジネス臭さが感じられて仕方がない。
うがった見方をすれば、今年いっぱいの活動内容はおろか、
数年先の活動再開までのスケジュールもが決定済みなのではないと思えるのだ。

サザンファンに怒られるのを承知でいえば、
サザンオールスターズというのはもはやロックではなく、
1つのプロジェクトなのである。

たいした蓄えもなければ名声もなく、
ましてや印税など一銭も入ってこない僕は、
リック・ニールセンの言葉のごとく働き続けるしかない。
働き続けるといっても、
僕のやっていることなど長ドス一本の渡世人稼業である。
木枯し紋次郎ではないが、
明日がどうなるかなんて知っちゃいねえのである。

それは不安ではないかと聞かれれば、正直に不安だと答える。

この不安とは、これからずっと付き合っていかなければならない。
せいぜい僕ができることは、
その不安に追いつかれないように、逃げて逃げて逃げ切るだけだ。

大の競馬ファンでもあった寺山修司も逃げ馬が好きだった。
自分の人生とよく逃げ馬を重ね合わせていた。

風を切って颯爽と走り続けていれば、きっといい風が吹いてくる。
僕は、それを信じる。


2008.05