勝手に観光協会「ばってんバテレン」


ここ数週間、僕は一昨日の日曜日をひたすら心待ちにしていた。
理由はただひとつ。
写真を撮る、ただそれだけのためにである。
といっても、ドスケベな写真ではない。

ひょんなことから僕は、
JRAのキャラクターであるターフィーくんと同じTシャツを手に入れた。
パッチモノでもなければ、手づくりでもない。
左の袖口にはしっかりと
JRAのロゴがプリントされ、
首元にはある馬主団体のエンブレムがついている、れっきとしたシロモノである。


この
Tシャツを手に入れたとき、僕はある計画を立てた。
そう、この
Tシャツを着て、ターフィーくんと写真を撮ろうと考えたのだ。

一昨日の日曜日からいよいよ秋競馬のG1レースがはじまった。
G1レース開催日には後楽園のWINSに必ずターフィーくんが登場するので、
この
Tシャツにはじめて袖を通し意気揚々とWINSへと向かった。

11時を少し回ったころ、
ターフィーくんがいつもの係員のオジさんと女性スタッフの方とともに姿を現した。
僕はすぐさまターフィーくんのそばに近づき、
女性スタッフの方に
「今日はおそろいの
Tシャツを着てきたんですよ」とエヘラエヘラしながら
上に羽織っていたシャツを脱ぎ、
Tシャツ姿になった。

僕のこのTシャツ姿を見て、ターフィーくん係のオジさんは
「おっ、すごい
!!」と感嘆の声を上げた。
僕はしてやったりという気分で、念願のツーショットを撮ってもらった。

ターフィーくんを好きな人はたくさんいると思う。
このミクシィにもきっとコミュニティがあるだろう。
しかし、ここまでやる人間が果たして何人いるだろうか
?
ひょっとしたら、こんなことをしたのは僕が人類史上はじめてかも知れない。
あの、みうらじゅんだってターフィーくんはまだノーマークかも知れない。
ことターフィーくんに関してはたぶん、
みうらじゅんを確実に上回っていることだろう。
な〜んて、ご満悦な気分で念願を果たした僕は
WINSをあとにした。

この前日、僕はまたまたエンケンこと遠藤賢司のライブに行っていた。
ライブのなかでエンケンは、
みうらじゅんと安斎肇による勝手に観光協会のことを話題に挙げていた。
みうらじゅんはエンケンのトリビュートアルバムのプロデュースをしたことがあり、
安斎肇はエンケンの“四畳半ロック”という
デビュー
30周年記念CDのジャケットデザインを手がけている。
勝手に観光協会の
2人はエンケンと旧知の仲なのである。

928日の日曜日、エンケンは青山ブックセンター本店で
荒井良二氏との絵本“ボイジャーくん”の出版記念イベントに出演したあと、
荒井氏たちとカラオケに行き、
その後、勝手に観光協会がゲスト出演した
「カラフルロスタイムショー」の打ち上げに参加したという。
トークのなかでエンケンは、みうらじゅんが
J-WAVEを下ろされたことを話した。
下ろされた理由というのが、
みうらじゅんがエレベーターのなかにタバコを捨てたことがバレたかららしい。
そのあまりにもみうらじゅんらしい、おバカな降板理由に会場は爆笑の渦に包まれた。

また、安斎肇についてはとにかく遅刻魔だということを話していた。
ナント、
6時間遅刻したこともあるという。

そんな話題をおり交ぜながら、エンケンは勝手に観光協会の歌について
「よく聴くと、けっこういい曲が多いんだよね」と話していた。

勝手に観光協会は、その名のとおり
頼まれてもいないのに勝手に全国各地を視察し、
ご当地ソングや観光ポスターなどをつくることを目的に結成されたユニットで、
これまでに
CD3枚・DVD6枚を発表している。

僕がこのユニットを知ったのは、いまから7年前であった。
友人が「ラジオに、みうらじゅんが出ていて、勝手に観光協会という名で
『ばってんバテレン』というヘンな歌を唄っていた」と教えてくれたのである。

僕は以前よりひそかに、みうらじゅんをリスペクトしていた。
自分が興味を持ったことに対し、それをとことん追求する姿勢に共感したのである。


みうらじゅんの“青春ノイローゼ”という本に、
みうらじゅんがかつて幼少期から
10代を過ごした京都の街を散策したときの文章がある。
その文章を読んだ僕は、またひとつのある計画を立てた。
今度、京都に行ったら
この文章に載っているところを全部まわってやろうと思ったのである。
そして、それを勝手に観光協会のことを教えてくれた友人に頼んで
Web上で公開してやろうと思ったのである。

残念ながらそのWebはいまではもう見ることはできないが、
たぶん原文はフロッピーディスクに入って我が家のどこかに眠っていると思う。
歩きながら撮影した画像を添付したオリジナル原稿は
Word60ページ以上にも及ぶ大作であった。

その膨大な量の原稿を渡された友人が唖然としていたのはいうまでもない。

僕は一度だけ、みうらじゅんにサインをもらったことがある。
僕同様にジョージ・ハリソンをこよなく愛するみうらじゅんに敬意を表し、
そのときジョージ・ハリソンの名曲『美しき人生』の
Tell me what is my life without your love”という一節がプリントされたTシャツを着て行った。
そして、みうらじゅんにサインをもらった際にその旨を伝えると、
みうらじゅんは「ジョージはいいよねぇ」としみじみ語った。
ジョージのことでみうらじゅんと心を通い合わせたと勝手に思い込んだ僕は、
さらに調子に乗って
「みうらさん、サインと併せて一筆“ナマステ”と書いてもらえませんか」と
図々しくお願いした。
みうらじゅんは、もちろん快諾してくれた。

そんな隠れみうらじゅんフリークの僕であるから、
勝手に観光協会の
CDが発売されたときは早々と購入した。
青森県のご当地ソング『斜陽の恋』をはじめ岩手県の『哀愁ちゃナイト』、
山形県の『ガッタ山形』など全
19曲入りのCDであった。
もちろん友人がラジオで聴いた熊本県のご当地ソング
『ばってんバテレン』も収録されていた。

エンケンも誉めていたように、この勝手に観光協会の曲はかなりいいものが多い。
メロディもなかなかなのだが、歌詞がバカバカしくていいのだ。

たとえば、鹿児島県のご当地ソング『ヘルシー音頭』の歌詞はこうである。

 ドンドンドン ドドンガドン

 オイドンドン 西郷どん

 ヘルシーライフもいいけれど

 それじゃおなかがちょいヘルシー

 黒豚 トンコツ 角煮にラーメン

 そりゃそりゃそりゃ桜島

  (作詞:勝手に観光協会)

こうしたご当地ソングを聴きながら、僕はまたまたあることを思いついた。

ひょっとしたらオレにも書けるかもしれない、
というおバカな思いつきをしてしまったのである。

そう考えたら止まらなくなった。
ちょうど近々、福島県の会津に行く用事があったので会津の歌を書こうと思い、
すぐさま作詞活動を開始した。

題して『BAN BAN 磐梯山』♪

読者よ! 友よ!! どんな歌詞か、見てみたいか?
そうか、見たいか。しょうがねえなぁ。心して読んでほしい。

これだ!!

1.       野口英世はどんな人  

あの娘がそんなこと言うもんだから

二人で飛び乗る磐越西線

山へ向かってローカル線

猪苗代湖が見える頃

右手にババンと磐梯山

バンバンバババン磐梯山

バンバンバババン磐梯山

オイラはあの娘に黄熱病 

 

2.       白虎隊は悲しいわ

あの娘がそんなこと言うもんだから

足を伸ばして会津入り

息を切らせて飯盛山

墓参をすませて日新館

ならぬものはなりませぬ

いいこと言うけど正之侯

いいこと言うけど正之侯

今宵はおあずけ会津士魂

 

3.       わたしのタイプはしょうゆ顔

あの娘がそんなこと言うもんだから

うまいしょうゆの喜多方へ

馬車に揺られてノレンをくぐりゃ

思わずお腹がグーグーグー

グーな味だぜ喜多方ラーメン

グーな味だぜ喜多方ラーメン

オイラの股間もちぢれ麺

   (作詞:タカハシカツトシ)


この歌詞ができてすぐ、僕は嬉々として友人に見せて回った。
誰もが呆れていた。

しかし、僕はこんなバカなことをする自分が大好きだ。
きっと、みうらじゅんも同じだと思う。
大きく違うのは、みうらじゅんはこうしたことを仕事につなげているのに対して、
僕はまったくといって仕事に結びついてないというトホホな点である。

でも、いいのである。
仕事は仕事。遊びは遊びなのだ。
ただ、いくつになってもターフィーくんとお揃いの
Tシャツを着て一緒に写真を撮ったり、
BAN BAN 磐梯山』を作詞したりという
バカバカしいまでの遊び心は忘れたくないなと思う。

一昨日の日曜日、ターフィーくんとのツーショットを撮った後、
僕は総武線〜武蔵野線と乗り継ぎ、中山競馬場へと向かった。
この秋、最初の
G1レースである
「スプリンターズステークス」を観戦しに行ったのである。

生まれてはじめての中山競馬場だ。
もちろん予想もバッチリして行き馬券も買った。
4頭をピックアップして複勝・馬連・枠連で計1600円分。

当たった。
1着のスリープレスナイトの複勝馬券が1枚だけ。
配当は
130円だった()


2008.10