加川良「教訓T」


僕が尊敬してやまない不良オヤジ、
ロバート・ハリス兄が最近、東洋経済新報社から新著を出した。
タイトルは“ワイルド・アット・ハート”。
「眠ってしまった冒険者たちへ」という副題がついたこの本には、
ロバート・ハリス兄が
59年の人生で培ってきた
人生哲学や人生訓があふれんばかりに記されている。

60近いオヤジの人生哲学や人生訓なんて、
説教臭くてついつい敬遠しがちだが、
ロバート・ハリス兄の言葉は僕にさまざまなヒントを与えてくれる。
ダテに世界中を放浪し、
破産も刑務所暮らしも離婚も
(しかも2!!)経験してきたワケではない。
人生の経験値が、そんじょそこらのオトナとは全然違うのだ。

ロバート・ハリス兄は人生において楽しいことも他人の数倍経験している分、
痛みや悲しみも同様に経験している。
そうした他人の何倍もの濃さ・太さの経験のなかで培われた生き様だからこそ、
読む者の心にスッと入っていけるのだと思う。

人生は理屈で語るものではないのだ。

この“ワイルド・アット・ハート”…今日の午前中、
仕事の合間にちょっとだけ読み出したら止まらなくなってしまい、
100ページほど読んでしまった。
全体のちょうど半分である。
今日は
13:30に人と待ち合わせをしていたので、
慌てて残りの仕事の段取りをつけ、慌ただしく出かけるハメになった。

今日はとある出版社の広告担当のイマガワさんとお会いした。
以前からの知り合いなのだが、
退職してから会うのは今日が初めてである。
僕より
11歳上の52歳。
頭にはだいぶ白いものが目立ってはいるが気持ちは若く、
僕はイマガワさんと会うとついつい話し込んでしまう。

今日も
3時間以上も話し込んでしまった。

15:30に別件でデザイナーと打ち合わせる予定だったのだが、
午前中にメールと電話のやりとりで用が済んだので、
そのスケジュールをバラしておいて良かった。

イマガワさんとは仕事の話はちょこっとだけし、
あとは延々世間話に花を咲かせた。
ここ数日は、働かなきゃ働かなきゃと
何かにせき立てられているような日々が続いたので、
いい気分転換にもなった。
たまには、こんな日もあっていい。

イマガワさんとの話のなかで加川良の話題が出た。
僕は正直いって加川良についてはさほど詳しいワケではない。
が、
1971年に発表されたデビューアルバム“教訓”の1曲目
教訓』は印象深い曲である。

 命はひとつ人生は1回だから 命をすてないようにね

 あわてるとついフラフラと 御国のためなのと言われるとネ

 青くなってしりごみなさい にげなさいかくれなさい

 〈中略〉
 
死んで神様と言われるよりも 生きてバカだと言われましょうよネ

 きれいごとならべられた時も この命を捨てないようにね

 青くなってしりごみなさい にげなさいかくれなさい

  (作詞・加川良)

歌詞を読んでいただければわかるとおり『教訓』は、
女性の視点から書かれた反戦歌である。
奇しくも今日は終戦記念日。
あらためて命について考えながら、イマガワさんと別れ帰路についた。

そういや、昨日の朝日新聞に2年前、
ガンで余命あと
1年半と宣告された渡辺成俊さんが出された
“そんな軽い命なら私にください”という本の紹介記事が載っていた。
記事によるとこの本は、
渡辺さん自らの「生」への思いをつづったメッセージ集で、
いじめに悩み、死への願望を募らせているかも知れない
10代の心に
「生きる意味は必ずある」とストレートにぶつかっていく内容とのこと。

これまで渡辺さんはご自身の体験をもとに中学校を中心に
65回の授業を行い、
その感想文は
2万通を超えたという。
記事の最後には「明日がないという人に、生きてみないとわからないといいたい。
強がりだけど、それが私の生き様なのです」という渡辺さんの言葉が紹介されていた。


人それぞれいろいろな生き様がある。
戦争で若い命を散らした兵士の方たちにも生き様はあっただろうし、
現代を生きる
10代の少年少女にも生き様はある。
でも命は
1つ、人生は1回なのである。
なにも死に急ぐことはない。

僕の人生において他人に偉そうに語れることなど何もないが、
どんなに辛いことがあったとしても、それが永遠に続くワケではない。
生き続けていれば絶望した日々のことなど、必ず過去のこととなる。
そして絶対に楽しいことが待っている。

僕のささやかな人生訓である。


2007.08