ジローズ「戦争を知らない子供たち」


今年から
429日は“昭和の日”と改められた。
平成元年以降、
429日は“みどりの日”であったのだが、
昭和の日普及委員会のオフィシャルサイトによると
「多くの国民の要望を受け、平成
17年に国会で祝日法が改正され、
平成
19年より『昭和の日』とすることになりました」のだそうだ。
で、“みどりの日”はどこにいったかというと、
1988年以降“国民の休日”であった54日に移行したという。

まあ祝日が多いのに異議はないのだが、
みどりの日を昭和の日に、
そして国民の休日をみどりの日にする意味がさっぱりわからない。
ウソかホントか知らないが、
54日が国民の休日となった背景には、
日本船舶振興会の初代会長であった笹川良一氏の誕生日だから
という話を聞いたことがある。
それが本当であれば、
みどりの日などという名称は一種のごまかしのように思えてしまう。

ましてやわざわざすっかり定着している“みどりの日”を他日に移してまで、
“昭和の日”を制定する必要があるのだろうか?

僕はどうも、政治的な意図というか陰謀を感じずにはいられない。

その陰謀とは、戦前回帰である。
限りなく昭和を美化し、「多くの国民の要望」という大義名分のもと、
日本を戦前の状態にもっていこうとしているように思えて仕方がないのである。

僕の祖父はガダルカナルで戦死した。
僕の父は、自分の父の顔を写真でしか知らない。
戦争未亡人となった祖母は、
僕の父親が戦死した祖父とのあいだにできたただ一人の子どもであったことから
そのまま高橋家に残り、婿をとった。
その再婚相手が僕をかわいがってくれた祖父である。

いってみれば僕には血縁上の祖父と、
育ての祖父がいるというわけなのだ。

父には、妹と弟がいる。
ともに再婚した祖父と祖母とのあいだにできた子どもである。
僕にとっては、祖父違いの叔母と叔父ということになる。

なので血の連続ということでいえば高橋家の純粋な直系は
父と僕と、そして僕の弟となる。

僕は長男なのだが10代の頃、親と折り合いが悪かったこともあり、
長男としての一切の義務も権利も放棄した。
遺産もいらないといってある。

これからどんなことが起ころうとしても、
実家をいっさいアテにはしないし、
もちろん絶対に迷惑をかけるようなこともしないつもりで生きている。

両親も僕に対してはあきらめているようで、
弟を実質的な長男として生活している。

弟は15年前に結婚したのだが、子どもができない。
ありとあらゆる方法を試したのだが、それでもダメらしい。

何年前だか忘れたが、母親から
弟が僕に精子を提供してもらえないだろうかといっているという話を聞かされた。
僕の母親はたまに話をつくる人なので
()
本当に弟がそういったのか、
それとも母親が独断で僕にいったことなのか真相は薮の中なのだが、
とにかく僕に対してそんなことを申し入れてきたのである。

僕は即座に断った。
仮に、人工授精で弟夫婦に子どもが生まれたとする。
僕とっては甥か姪である。
しかし、それはあくまで戸籍上の話であって、
DNA的には僕の子どもなのである。
そんなことを知りながら僕は伯父としてふるまう自信がないし、
そこまで血の連続にこだわる必然性があるのだろうかと思ったのだ。

戦争は僕の実家のような、
名もないただの一家の運命すらこんな風に複雑に変えてしまう。
日本はその歴史を絶対に繰り返すべきではないし、
世界中から戦争なんてなくなればいいなと思う。

ジョン・レノンはすべての兵士が下半身すっ裸で闘ったら、
その馬鹿らしさに気づくはずだという発言をしていたが、
僕もそう思う。

どうしても戦争で雌雄を決さなければならないような対立が生まれたら、
スイスの大自然を舞台に首脳同士が野球拳で勝負すればいい。

国民の多くが戦争体験を知らず、まさに1971年に大ヒットした
ジローズの『戦争を知らない子供たち』となっている
2007429日、
血の連続という宿命を背負わされている天皇家の家長であった
昭和天皇の誕生日に僕はあらためて強く戦争反対を訴える。


2007.04