ジェファーソン・エアプレイン「あなただけを」


僕が観てきた映画のなかで、
最高におバカな映画だったのは
ジョニー・デップ主演の“ラスベガスをやっつけろ”である。

ハンター・
S・トンプソン原作のこの映画は、
ストーリーはほとんどない。
ジョニー・デップ扮するジャーナリストと
ベニチオ・デル・トロ扮する弁護士が
ラスベガスへレースの取材に出かけ、
ラスベガスのホテルで
ドラッグ三昧の数日間を過ごすという内容の映画である。


僕はこの映画をまず試写会で観た。
そしてあまりの素晴らしいバカっぷりに感激し、
劇場で観た。
さらには
DVDを借りて観た。
監督は“鬼才”テリー・ギリアム。

この映画のすごいところは、
ドラッグによるエフェクトを
音と映像で限りなく表現している点である。
そのリアルな音と映像のため、
観ている人のなかには気分が悪くなった人もいるという。

特にジョニー・デップが
LSDをキメた、
ジェファーソン・エアプレインのライブシーンの
モワ〜ンとした音と映像の世界は圧巻であった。
1969年製作の“イージー・ライダー”では
技術的に描ききれていなかった
LSDによる幻想世界を、
見事に表現していたと思う。

ジェファーソン・エアプレインの“シュールリアリスティック・ピロー”、
ビートルズの“サージェント・ペッパーズ”、
そしてドアーズのデビューアルバム、
サイケデリックなこの
3枚がほぼ同時期に発売されたことから、
1967年の夏は「マジック・サマー」と呼ばれている。

ジェファーソン・エアプレインの
“シュールリアリスティック・ピロー”からは
『ホワイト・ラビット』や『あなただけを』がヒットし、
“ラスベガスをやっつけろ”のなかでも効果的に使われていた。

マジック・サマーの3枚のなかで
僕がいちばんアシッドっぽさを感じるのは、
やはりジェファーソン・エアプレインである。
僕は『あなただけを』を聴くたびに、
体験したことのない
60年代末から70年代初頭にかけての
フラワームーブメントに思いを馳せたものだ。

“ラスベガスをやっつけろ”の原作者、ハンター・S・トンプソンは
「ゴンゾージャーナリズム」の先駆者として知られている。

ゴンゾージャーナリズムとは、
取材対象に対し傍観者として取材するのではなく、
その内部に入り込んで自己の体験をもとにルポルタージュするもので、
実際トンプソンはヘルス・エンジェルスの実態を取材する際、
彼らと行動を共にしたという。
そのスタイルは、なんとも無頼でカッコいい。

僕の夢のひとつに、
ノンフィクションを書いてみたいというのがある。
いつの日かそのチャンスがきたらゴンゾージャースリズムの手法を使って、
臨場感のあるルポルタージュを書くのだ。

ちなみに僕の俳号は、言蔵(ゴンゾー)という。

といっても、
別に句会にはいって本格的に俳句をやっているわけではなく、
ただ趣味で個人的にやっている範囲なのであまり偉そうなことはいえない。

以前、僕の誕生祝いに句帖を贈ってくれた友人がいる。
僕は毎日
1句以上の俳句をつくり、
1年間かけてその句帖をいっぱいにし、
翌年の誕生日、その句帖をくれた友人にあげた。

世界にたったひとつだけの、
僕の自作直筆による実に貴重な句帖である。

しかし“なんでも鑑定団”に出品したところで、
なんの価値もないところが無念じゃ
()


2007.03