五木ひろし「明日の愛」
昨日は朝から大忙しだった。
ナント、ペーターが転職するという。
転職先は広告代理店ではないのだが、
幅広い意味でいえば同じ業界内の、そこそこ名の通った会社である。
メールには5次面接を経て、朝の8時半から役員面接に臨み、
内定を頂戴したという。
転職先への出社日は来年2月21日。
退職願は今月14日に出すということだった。
僕が在職中からペーターも会社に対する不満や疑問をこぼしていたのだが、
まさかこんなに早く転職を決意するとは夢にも思わなかった。
思い切った決断をしたものだと感心しながらメールを読んでいたら、
タカハシさんにお願いがあると書いてあった。
この野郎は、まだオレを頼るつもりか!!と思いつつ続きを読んだら、
退職願の書き方を教えてくださいとのことだった。
ペーターは来年30歳になるのだが、
いまの会社に入社するまで正社員として働いたことがない。
だから退職願なんて書いたことがないのはわかるが、
曲がりなりにも来年30歳。
そんなことも知らないでどうすると思いながらも、
僕は仕事を中断してペーターの退職願をつくってあげた。
このあたりが「お人好しのトシ」と呼ばれる所以である。
本当に厄介な性格だと我ながら思う。
けど、仕方がない。
正直いって僕は嬉しかったのだ。
8時半からの役員面接を終えてスグ、僕に報告してきたのだ。
僕が前の会社にいるころ、ペーターとはいろんな話をした。
その話をペーターはペーターなりに咀嚼し、
そして自ら考え行動を起こし、その結果を真っ先に僕に知らせてくれたのだ。
僕はその気持ちがなにより嬉しかった。
ペーターが退職願を提出する12月14日といえば、
赤穂浪士の討ち入りの日である。
ペーターにとっては、まさに討ち入りにいく心境であろう。
すぐにテンパるクセがあるペーターのことだ。
舞い上がってヘマしなきゃいいなと親兄弟でもないのに心配でしょうがない。
去年の12月14日の日記に僕はノストラダムスのことを書いた。
ノストラダムスの大予言の恐怖におののいていたほぼ同時期、
小松左京氏の“日本沈没”を原作としたドラマがTBSで放映された。
日曜日の夜8時からだった。
このドラマの主題歌は五木ひろしの『明日の愛』というものだったのだが、
これがまた実にもの哀しい歌で、
僕はこのドラマのオープニングを観るたびに暗澹たる気持ちになったものだ。
今月、ナントこのドラマ“日本沈没”がCSで再放送される。
少年時代は怖くて怖くて仕方がなかったが、
大人になったいまはもう怖くもなんともない。
いまこそ積年の恨みを晴らすときである。
録画してでも観てやろうと考えている。
日本沈没が騒がれていた当時、
たしか1998年に日本が沈没するといわれていたと記憶している。
来年は2008年。
日本沈没をまぬがれてから早くも10年である。
ペーターも来年は、大きな変化を迎える。
なにもかもが未経験で飛び込んできたいまの会社と違い、
転職先では広告代理店の営業経験者という立場での入社だ。
まさに真価が問われる年になるだろう。
ペーターには激励を込めて
「まっ、小さくまとまんなよ」と本城裕二ばりに声をかけてあげるとしよう。