忌野清志郎「君が代」


今日はアースデーである。
アースデーは
1970年の422日、
米スタンフォード大学の学生の呼びかけにより、
2千万人の人々が健康と環境維持のためのデモを行ったことに端を発し、
環境問題への関心を示す行動を起すための日として、
全世界に広まっていったとされている。

僕がこのアースデーのことを知ったのは、
1990年のことであった。
地球の名を冠したとあるメーカーが、
このアースデーに絡めて企業広告を出したいという依頼を受け、
制作を担当させていただいたのだ。

僕はこの広告で
「地球があるから人間です。」というキャッチコピーを書いた。
そしてボディコピーで、地球環境を守ることが企業にとって、
そして人々にとっていかに大切なことかを書いた。
こういう企業メッセージは、ともすると説教くさくなるので、
その点に細心の注意を払い、
何度も何度も一言一句をチェックしながら、
書き直したことをつい先日のことのように憶えている。

あれから17年。地球環境はよくなったのか?
そんなふうに実感できている人は少ないと思う。
まず気候がヘンである。
毎年、感じることなのだが、
東京は秋がどんどん短くなっているのではないだろうか?

心地よい、爽やかな秋を感じることが、
年々減っているような気がするのだ。

つい数日前まで「暑い暑い」といって
Tシャツ1枚で歩いていたのに、
あっという間に「寒い寒い」といって、
冬物のジャケットをタンスから引っ張り出すことがもう何年も続いている。

先週1週間の天気だって、どう考えてもおかしい。
4月半ばだというのに、冬のような寒さで、
僕はコートこそは着なかったものの、
厚手のジャケットを着て出勤していた。
以前ならこの時期にはもう、クリーニングに出しているようなジャケットを着て、
「寒い寒い」といいながら出勤したのである。
どう考えても、まともじゃない。

僕は環境保護に対して、なにかの団体に加入しているとか、
なにかの運動を行っているということはしていない。

以前、中村敦夫さんの国民会議に参加していたとき、
とある女性議員とゴミ問題で言い合いになったことがある。
その人はゴミ問題に対し専門的に取り組んでいる人で、
根はいい人なのだが酒グセがめちゃめちゃ悪くて、僕に絡んできたのだ。

彼女いわく「あなた(←僕)は、ゴミ問題についてなにも活動していないじゃない。
そういう無関心な若いヤツが多いから、
ゴミ問題は深刻化を増すばかりなのよ」ということだった。

僕はその意見に対し、
ゴミ問題というのは個人レベルで、
たとえばゴミの分別をキチンとするということが大切なのであって、
議員の政治的なテーマにするとか、
市民運動を行うことが必ずしも大切なわけじゃないという話をした。

「じゃあ、あなたはゴミの分別はキチンとやってるの?」といわれたので、
そのぐらいのことはもちろんしっかりやっているといった。
ら、彼女は「あなたの分別なんて、いい加減そうね。
ゴミ問題の深刻さなんて、なにもわかってないでしょ」と吐き捨てられ、
僕はついにキレた。

僕「じゃあ、○○さんはこれ以上ないってくらいに、ちゃんとやってるんですね?」

議員「そうよ。もちろんじゃない」

僕「じゃあ、聞きますけど、ゴムって不燃ゴミですよね。
  ということは、あなたはセックスした後、
  相手がコンドームを捨てるときティッシュといっしょに捨てたら、
  ちゃんと拾って分別する人なわけですね」

この僕の反論は、人によっては屁理屈と思うだろうし、
セクハラ的な発言ととる人もいるかもしれない。
しかし、僕はこの議論で間違ったことをいったとはいまだに思っていない。

ものごとの本質というのは、こういうところにあるのだ。
なにも大所高所から見ることだけが真実ではないのだ。
他人にとやかくいうのであれば、
その本人はコンドームひとつもしっかりと分別するぐらいの心構えと
その実践力がなければならないのである。

僕は誰かに声高にゴミ問題について語ることはしない。
しかし、ホッチキスの針ひとつでも、しっかりと分別して捨てている。
そんな僕を見て、僕が勤務している会社の経理担当者は
「タカハシさんて、几帳面なんですね」といった。
その言葉に対して僕はこう返事をした。
「僕はこう見えても、けっこうアースコンシャスなんですよ」

今日もあちこちで、環境に関するさまざまなイベントがあるだろう。
啓蒙という点ではイベントの意義は認める。
しかし、大切なのは継続である。
未来的には、人類は地球以外でも生きていけるようになるかも知れない。

でも少なくてもいまは「地球があるから人間」なのだ。
そして、それを自分たちの代でめちゃくちゃにしてしまわないように、
自分の愛する子どもや孫・そしてその先の子孫たちが
この地球で豊かに暮らしていけるように、
一人ひとりができることからできる範囲内で環境保護に取り組んでいったら、
きっと大きな効果が表れると思う。

コスモ石油は1990年から毎年この日に
アースデー・コンサートを行っている。
2003年には佐野(元春)くんと忌野清志郎という顔合わせが実現した。

清志郎はこのコンサート中、
自慢の愛車
(自転車)でステージを走り回っていた。
環境問題に対して
意識の高い発言や活動をしているミュージシャンは数多い。
しかし、武道館のステージを
自転車で走り回っている清志郎の行動は、
どんなミュージシャンや活動家の発言よりも雄弁なものに思えた。

そしてこのコンサートで清志郎は、
1999年に発売中止になったいきさつがある
『君が代』のパンクバージョンをゲリラ的に演奏。
このコンサートの模様を生中継していた
TOKYO FMを大混乱に陥れた。

アースコンシャスと反逆心。
一見、相反するもののように思えるが、
それはしっかりと同居できるものなのだ。
清志郎を見ていると、そのへんのバランス感覚が実に見事だと思う。

 

2007.04