日吉ミミ「世迷い言」
先週の木曜日、
夕方から渋谷に打ち合わせに出かけた。
風邪っぽいので、
できれば出かけたくはなかったのだが、
そうもいっていられない。
ノドの痛みとダルさと闘いながら、
ホテホテと打ち合わせに出かけてきた。
が、せっかく打ち合わせに出かけたというのに、
先方が決めておくべきことをほとんど決めておらず結局、
今日の18時から改めて打ち合わせを行うこととなった。
忙しい上に、具合が悪いなか無駄足となってしまった徒労感に打ちひしがれながら、
ふたたびホテホテと帰ってきた次第である。
体調はますます悪化してきたので、
帰り道、葛根湯とのど飴を買って帰った。
これで、ひと晩ぐっすり寝れば大丈夫!!と思い、早めに寝た。
翌朝、目が覚めたら全快どころか、さらに具合が悪くなっていた。
熱を測ったら37.3度ぐらいだった。
僕は平熱が低いので、37度台となるとかなりしんどい。
おまけに鼻はぐしゅぐしゅするし、ノドはますます痛い。
セキも出てきたせいか、ノドどころか胸あたりまで痛くなっていた。
ことここにいたっては勝負ありである。
潔く敗北を認めて、善後策を講じるしかない。
僕は近所の病院へと駆け込んだ。
そして、懇願するようにして注射を打ってもらった。
注射の際、どうしても腕の血管が浮き出なくて、
手首近くの骨の部分に打たれた。
めちゃめちゃ痛かった。
自慢ではないが、僕は血管については自信があった。
これまで血管が浮き出なかったことなど一度もない。
あるときなどは看護婦さんに「いい血管ですね」とほめられたぐらいだ。
しかし、今年に入ってから血管の具合が悪い。
金曜日もさることながら、
以前、白血球の再検査に行ったときも血管がなかなか浮き出なくて、
看護婦さんにお手間をとらせてしまった。
40歳を過ぎて、急に血管が細くなってしまったのだろうか?
幸いにして、土曜日はあわてて仕事をする必要もなかったので、
ほぼ1日中静養していた。
おかげでだいぶ楽になり、昨日は仕事を再開することができた。
熱もようやく収まった。
まだちょっとセキが出たり、鼻声だったりするのだが、
アタマはだいぶクリアになったので仕事に支障はない。
土曜日、久々に聞く自分の鼻声に、
僕はある歌を想い出した。
日吉ミミの『世迷い言』という曲である。
ちょっと鼻にかかった歌声の歌手というのは古今東西数多くいるが、
僕にとって鼻声の歌手の代表格といえば日吉ミミである。
僕らが小学生のころ、
わざと鼻にかけた声でよく日吉ミミのモノマネをしたものだ。
『世迷い言』は、1978年に放映されていた
故・久世光彦氏プロデュースのドラマ“ムー一族”の挿入歌として使われ、
日吉ミミ本人も毎週出演し、この歌を披露していた。
作詞は先日亡くなられた阿久悠さんで、作曲は中島みゆきである。
変なくせだよ 男にふられたその後は
なぜだかきまって風邪をひく
真夜中 世の中 世迷い言
上から読んでも下から読んでも
ヨノナカバカナノヨ
阿久悠さんによるこの歌詞、
回文で歌詞をしめるという技法もさることながら、
その回文のクオリティの高さには
自称・回文マイスターの僕も脱帽である。
ヨノナカバカナノヨ
まさに真理を突いている。
あらためて阿久悠さんの才能を賞賛せずにはいられない。
久世さんも亡くなった、阿久悠さんも亡くなった。
人はいつかは死ぬし、その過程では病気にもなる。
風邪をひかなかったこの1年半、
僕はもう永遠に風邪などひかないと思っていた。
しかし、そんなことは絶対にないということを
今回、身をもって知らされた。
ヨノナカバカナノヨ
馬鹿な世の中なら、その馬鹿を存分に楽しみたい。
そのためにも、やはり健康がイチバンである。