ハイポジ「身体と歌だけの関係」


男性諸君!
好きな女の子に愛を告白したら
「わたしのカラダが目的なんでしょ」といわれたら諸君はどう答える?
僕ならあらゆる限りの言葉を尽くして、
そんなことはないということを説得するだろう。
自分の言葉の
1つひとつを信じてもらおうと、
必死に努力すると思う。

では、本当にカラダが目的だった場合は、どうするか?
いまならきっと、正直に「ハイ、そうです」といってしまうだろう。
そのほうが後々、めんどうなことにならないからだ。
ウソは必ずバレる。
ましてや今の自分の価値観のなかでは、
そんなことをしてまで一時の快楽を得ようとは思わない。
僕も大人になったものだ
()

若い頃は、そうではなかった。
本能のおもむくまま好きでもないクセに、
いかに僕がキミのことを好きかということを切々と説き、
オトコの本懐
()を遂げたことも少なくない。
それで後々、めんどうなことになったり、
怖い思いをしたりしたこともある。

そのときの苦痛や苦悩は、
得られた快感と比較してもワリに合わないものだったと
自分自身の若気の至りについてつくづく思わされる。

しかし、女性から
「割り切った関係でいいから」と迫られたら、どうだろう?
昔から「据え膳食わぬは男の恥」というが、
いまの僕なら躊躇する。
「割り切った関係」を割り切れる自信がないからだ。
ついつい相手に対して、
感情移入してしまいそうな自分自身を知っているからである。

若い頃は、もちろんそんな風には思わなかっただろう。
その言葉に後先考えずホイホイと乗っていったはずだ。
そしてきっとまた、痛い目を見たことだろう。

 がんがんやって早くあきてね

 がんがんやって早くあきてね

 がんがんやって早くあきてね

 がんがんやって一緒のスピードで早くあきてね

この曲は、もりばやしみほと近藤研二によるユニット、
ハイポジが
1994に発表した『身体と歌だけの関係』の唄いだしである。
作詞は、もりばやしみほである。

さらに歌詞はこう続く。

 とことんやって早くあきてね

 とことんやって早くあきてね

 とことんやって早くあきてね

 とことんやって一緒のスピードで早くあきてね

 

 身体と歌だけの関係にしよう

 身体と歌だけの関係にしよう

 完全に秘密の関係でいたいから

 僕らの身体と僕らの歌だけの関係にしよう しようね


僕がこの曲を知ったのは、
早川義夫さんのライブにてである。
早川さんが唄うこの曲を聴いて、
僕はてっきり早川さんのオリジナルだと思った。
いかにも早川さんなら唄いそうな内容の歌詞だと思ったからである。

この曲について早川さんは雑誌のインタビューで、
「たまたまライブを観て、良かったから唄っただけなんです。
『この曲は僕が作りたかったなぁ』なんて曲は滅多にないけど、
あれは良かったですね」と語っていた。

『身体と歌だけの関係』の歌詞は「毎晩やって早くあきてね」
「朝晩やって早くあきてね」という世界が続き、
そして「歌だけがのこる 歌だけがのこる
ステキな僕らのステキな歌だけがそこにのこる」というフレーズで終わる。

僕はセックスというのは、コミュニケーションだと思う。
一緒に寝ることによって、
相手のことをより深く理解できる部分があると思うのだ。

人と人とのコミュニケーションが希薄になっている。
そう、語られているし、実際僕もそれを実感する。
一方、性を取り巻く状況はますますお盛んである。
僕はそれを性モラルの崩壊だとかなんだかんだと理屈をつけて、
嘆くつもりもないし、批判する立場にもない。
したい人は、朝でも晩でも真昼でも、がんがんすればいいと思う。

ただひとつ思うのは、いまを生きる多くの人たちは、
身体と身体を通して何を伝え合い、
何を理解し合っているのだろうか?
そんなことだ。


2007.07