原田芳雄「ドント・ウォーリー」

去る1110日、僕は会社で悔しい思いをしていた。


この日は、俳優・原田芳雄さんの
歌手デビュー
30周年の記念ライブが行われていたのだ。
原田芳雄さんのライブなんてなかなか見られるものではない。
僕は
12年前に一度見たことがあるだけだ。
せっかくのチャンスなのに、
しかも
30周年記念の特別なライブなのに、仕事で行けない。
会社で入稿前の原稿をチェックしながら、なんてこったと悔しい思いをしていたのだ。


原田芳雄さんをはじめて知ったのは、
たぶん中村敦夫さん主演の“木枯らし紋次郎”を見たときだと思う。
僕がまだ
5歳のときだ。いつからファンになったかは、
正直いってよく覚えていないのだが、
中学生の頃には「よし!オレも大人になったら、あんな大人になろう」と憧れていた。


僕は
1966年の219日生まれで、
原田芳雄さんは
1940年の229日生まれである。
その差
26
僕にとって原田芳雄さんとは「
30代の理想像」であり、
40代の理想像」であり、「50代の理想像」であった。
そして、もし僕が
60代まで生きていられたら、
原田芳雄さんのような
60代になりたいなと思う。


6
年ほど前、僕がしょぼくれていたとき励ましてくれた人の言葉を
僕は大切にして生きている。
その人は僕の母親より年上で、
旦那さんが若い頃に家を出て行ったきり戻らず、
そのまま旦那さんのご両親とお子さまたちとずっと一緒に生活をしてきたという、
かなりハードな人生を歩んでこられた方なのだが、
その人は僕にこういった。

「タカハシくん、あなたはカッコいい大人になりなさい。
オトコってね、歳を取るごとにだんだんカッコいい男がふるい落とされていって、
40代・50代になったときは、カッコいいオトコがホントに少なくなるの。
だから、タカハシくんはこれからもいろんな経験をいっぱい積んで、
カッコいい
40代・50代になりなさい。
きっと若いオトコの子がどんなにがんばったって、
そのカッコ良さには追いつけないはずよ」


正直いえば、僕は別に長生きしたいとは思ってなかった。
10代の頃は27歳で死ねるものなら死にたいと思っていた。
6年前も、そうだった。別にいつ死んでもいいさと思っていた。


が、この言葉をかけられてから、
僕は自分が
40代・50代になったときが楽しみで仕方なくなったのだ。
40代・50代の自分自身を見てみたいと思ったのだ。


さて、それで実際
40歳になってみてどうか?
果たしてカッコいい40代になっているかと問われれば、
正直いって僕にはわからない。
まあ、赤点ギリギリといったあたりであろうか?

が、人生は長い。オブラディ・オブラダなのだ。
これから、もっともっとカッコいい
40代・50代、
そして
60代を目指して自分自身を磨き、輝かせていきたいと思う。

その前にはいつも
26年分先を行っている原田芳雄さんがいる。
追い抜けるかどうかはわからないが、
せめておいてけぼりだけは食わないようにしようと思う。

原田芳雄さんの歌のなかで『ドント・ウォーリー』という曲をよく聴く。
「明日の風の中で昨日のことを
 おまえは破り捨てる 
Don’t Worry(作詞・安藤芳彦)という歌を聴きながら、
歯を磨きつつ、鏡に映る自分自身を見る。

そこには「カッコいい大人になるためには、
疲れている場合じゃないよな」と励まされている自分自身が映っている。

この曲、おすすめです。


2006.11