ホール&オーツ「ウェイト・フォー・ミー」


僕は一度も観たことがないのだが、
10年ぐらい前に“いいひと”というドラマがあった。
ビッグコミックスピリッツで連載されていた
高橋しんの漫画を原案にしたものだ。

ミュージックシーンで「この人、いいひとなんだろうな」と思わせるのが、
僕のなかではジョン・オーツである。
ご存知、ダリル・ホール&ジョン・オーツのジョン・オーツである。

決してでしゃばらず、
ダリル・ホールの常に三歩後ろに立っているというその雰囲気は、
まるで良妻のようである。

伝え聞いた話なので真実かどうかは知らないが、
ダリル・ホールというのは相当なワガママ者らしい。
それをうまくコントロールして、
スターとしてダリルに華を持たせているジョン・オーツは
かなりのすぐれたプロデューサーであり、
マネージャーであると僕は踏んでいる。

さらに、黒人音楽に傾倒しすぎがちなダリルの音楽性を、
うまくポップソングに仕立て上げているのも、
実はジョン・オーツなのではないかと僕は思っているのだ。

1980年代の音楽シーンを振り返るとき、
ホール&オーツは絶対に欠かせないアーティストであろう。
一時期は出す曲・出す曲が立て続けにヒットし、
時代のヒットメーカーの名を欲しいままにしていた。

特に
1981年から84年はそうである。
僕の高校生時代とホール&オーツの黄金期は、ちょうどかぶる。


ホール&オーツでいちばん好きな曲といえば、
僕のなかでは『ウェイト・フォー・ミー』である。
この曲、イントロのギターがたまらなく素晴らしい。
このイントロを聴いただけで気持ちは
10代の頃へひとっ飛びである。

ホール&オーツは1980年代を席巻し、1991年に解散したが、
1995年に再結成した。

やはりダリル・ホールには
ジョン・オーツがいないとダメだったのであろう。

再結成以来、コンスタントに活動を続け、
2年前にも来日。
北は北海道から南は九州・福岡まで
10か所でライブツアーを行い、話題を集めた。

また2004年には彼らの代表曲のひとつ『プライベート・アイズ』が
ソニー・サイバーショットの
CMに使われるなど、
その名曲の数々はいまなお色あせていない。
事実、この
CMでホール&オーツを知り、
新たにファンになったナウなヤングも多いという。

いまの人たちには
ダリル・ホール&ジョン・オーツといったほうが
しっくりくるのだろうが、
僕はやはりホール&オーツという表現がいちばんしっくりとくる。

なので表題もホール&オーツとさせていただいた。

以前、僕よりひと世代上の渡辺祐氏に聞いたところによると、
ホール&オーツはその昔「ホールとオーツ」と呼ばれていたらしい。
サイモン&ガーファンクルをその昔
「サイモンとガーファンクル」といっていたのと同じである。

しかし、「ホールとオーツ」というのは、
なんだか語呂が悪くていただけない。
しかもロックっぽくない。
まるで双子の演歌デュオの「祐子と弥生」のようである。
(古い!!)

そう考えると、ネーミングって大事だなと
あらためて思わずにはいられない。

僕がネーミングを担当した商品も世の中にはいくつかある。
なかには消えてしまったものもあるが、
いまなお流通しているものもある。
その商品を使ってくれている人たちは、
もちろん僕のことなど知らないし、
もちろん僕もその人たちのことを知らない。

その知らない者同士がひとつの商品で人生を交差させる。
それは、ひとつのファンタジーだと思う。

これからもいろんな商品企画や広告で、
いろんな人の人生と交差したい。

今年の夏には僕の仕事環境も大きく変わる。
広告屋としての仕事を通じて、
もっともっと素敵な情報をたくさん届けるから、
みんな待っていてほしい。


2007.04