フランキー・ヴァリ「君の瞳に恋してる」

ここ数年は、映画館で映画を観たことがない。
それどころか、家でも映画を観ることが極端に少なくなっている。

友人からケン・ローチの作品をすすめられたのだが、
いまだにノーチェックである。
テレビ番組を録画した
DVDもたまる一方で、
元旦に放映された“お笑いウルトラクイズ”もまだ観ていない。
“向井千秋物語”も“越路吹雪物語”も
去年の
F1総集編も録画しっぱなしでまだ観ていない。

読みたい本もたまる一方だ。
買ったのに、ちゃんと聴いていない
CDもたくさんある。
これじゃいけない、こんなんじゃいけないと思いつつ、
月日は確実に流れていく。
3月ももう中旬なのだ。

大好きな映画なのだが、
観るたびになんともイヤ〜な気持ちになる映画がある。
ロバート・デ・ニーロ主演の“ディア・ハンター”だ。
この映画が描いた狂気の世界は、
戦争の是非などの論議をはるかに超えている。
僕はこの映画を観るたびに
あらためて強く「戦争には絶対によくない」と思わされる。


この“ディア・ハンター”の挿入歌として効果的に使われていたのが、
フランキー・ヴァリの『君の瞳に恋してる』である。
のちにボーイズ・タウン・ギャングがカバーした、
あの曲のオリジナルである。

ボーイズ・タウン・ギャングのバージョンが発表されたのは、
たしか
1982年。
小林克也さんが
TBSラジオでやっていた
深夜番組で聴いたのが最初だった。

この曲は
80年代を代表する1曲となり、
いまもよく耳にする。
DJのピストン西沢も、
当時この曲をかければフロアは大盛り上がりだったと語っていた。

たしかにキャッチーだし、ノリもいい。
多くの人々に受け入れられるのも納得できる。
しかし、どうしてもこの曲は“ディア・ハンター”につながってしまい、
心から楽しめないのだ。
別にボーイズ・タウン・ギャングに罪はない。
すべては僕の心の持ちようなのである。

最後に“ディア・ハンター”を観たのは何年前だったであろう?
ひょっとしたら
10年ぐらいは経ってしまっているかもしれない。

仮に
10年だとして、
この
10年のあいだにも戦争はなくなっていない。
戦争で亡くなった人たちの多くは、
名もなき兵士であったり、
本来は戦争とは無関係であるべき市民たちである。

戦争さえなければ“ディア・ハンター”のワンシーンのように
『君の瞳に恋してる』を
BGMに、
仲間たちと楽しそうにパーティを行っていても不思議じゃない人たちなのである。


1975
4月のサイゴン陥落からもうすぐ32年。
2次世界大戦はおろか、
ベトナム戦争を知らない世代が増えている。
1991年、湾岸戦争の年に生まれた子どもはもう高校生である。

人類は本当に進化しているのだろうか?

 

2007.03