アース・ウィンド&ファイアー「セプテンバー」


昨日の午前中、東京ドームの前をホテホテと歩いていたら、
22番ゲート前に御神輿が出ていた。
大のお祭り好き、根っからのワッショイ野郎の僕である。
御神輿が目に入ってしまった以上、見過ごすことはできない。
ということで、急いでその御神輿へと近づいた。

現在、東京ドームでは都市対抗野球大会が行われている。
ので、てっきり僕はどこかのチームの応援団が応援の一環として
景気づけに御神輿を担いでいるものだと思って近づいたのだが、そうではなかった。
大会を盛り上げるためのイベントのひとつとして、
東京のある地域の人たちが御神輿を担いでいたのだ。

それにしてもドーム前で御神輿である。
これは、そうそう見られるものではない。
前日の土曜日は浅草のサンバカーニバルが行われたのであるが、
残念ながら僕は行くことができなかった。
サンバカーニバルに行けなかったのは残念であるが、
こうしてドーム前で御神輿が見られる幸運にワッショイワッショイしながら、
しばし御神輿を眺めていた。

その後、ふと目を転じてみたら、
前方になにやらステージが設けられていることに気がついた。
そのステージの正体はナント
!!あの筑波山名物「ガマの油売り」であった。
見世物小屋を筆頭に、僕はこのテのものには目がない。
さっそく僕は、そのステージ前へと向かった。

この「ガマの油売り」も都市対抗野球大会のイベントの一環で、
11時から実演が始まるという。
ステージの袖では、袴姿に一本指しの女性口上師がスタンバイしていた。
「ガマの油売り」なんて
21世紀の今日、そうそう見られるものではない。
僕が最後に「ガマの油売り」を見たのは、
20世紀のはるか昔のことである。
図らずも遭遇した「ガマの油売り」に対し、
ありがたや、ありがたや、嗚呼ありがたやと思いつつ、
僕はその伝統芸の口上に酔いしれた。

口上はわずか10分ぐらいであったが、
僕はまさにありがたいものを見させてもらったとホクホク顔で
口上師の方に拍手喝采を送った。
ら、いましがた実演を終えたばかりの口上師の方が僕のほうに歩いてきた。

「兄ちゃんタダ見はダメよ。
見物料としてガマの油買っていきなさい」といわれたのだ。

というのはもちろんウソで、
にこやかな顔をして僕に話しかけてくれたのである。

聞くところによると「ガマの油売り」は筑波のほうに保存会があって、
80名近くの会員がいらっしゃるという。
なかには
100歳になる人もいるというではないか。
100歳で、ガマの油売りである。
どちらか片方だけでもすごいのに、
その両方ときたら、これはもう人間国宝クラスである。

100歳で現役の『ガマの油売り』とはすごいですねぇ〜♪
やはり元気の秘訣はガマの油ですか
?」と僕が軽口を叩いたら
「そりゃそうよ」と口上師の方は大笑いしてくれた。
そして「あなたみたいに若い人が熱心に見てくれていたので
うれしくてねぇ」とおっしゃってくださった。
僕は決して若くはないのだが、
やはりそんな風にいっていただき喜んでもらえるのはうれしいものである。

さらに「興味があったら
筑波で講習会もやっているので一度いらっしゃいよ」と誘われてしまった。
ふーむ
!! 「ガマの油売り」ができるコピーライターというのも悪くないなと
一瞬心が動いてしまった僕はお調子モンである。

しばし立ち話しているなかで、
僕が近くに住んでいるというと口上師の方は
「明日もやっているから、よかったら来てみて」とおっしゃられた。
また見ることができるのか、「ガマの油売り」をばと思った僕は、
ついつい元気よく「ええ、ぜひ」と応えてしまった。

約束した以上は、キチンと約束は果たさなくてはならない。
ということで、僕は今朝
10時に東京ドームへと出かけていった。
「ガマの油売り」の実演は
10時から始まると聞いたからだ。

月初めの月曜日の朝だというのに
ドーム前は都市対抗野球の第
1試合を観戦しに来た人々、
さらには第2合に出場するチームの応援団の人たちで混雑していた。
その間を縫うようにして、僕は昨日と同じ場所へと向かった。

今朝の「ガマの油売り」は、
昨日の方ではなかったがやはり女性の方が口上師であった。
残念ながら野球観戦や応援の準備で忙しいのか、
ステージ前にいるのは関係者以外では僕
1人だった。
これじゃ口上師の方がかわいそうだなと思ったのだが、
逆にいえば僕が独占して実演を見物しているのである。
それはそれでありがたいことだと思いつつ、
またまた昨日と同じように口上師の方の名人芸に拍手喝采を送った。

実演が終わったら、今度は関係者の男性の方に話しかけられた。
聞けば口上師は日替わりで数名の方が実演されるという。
僕に話しかけてくれた関係者の方は今朝茨城からやって来て、
11時から実演を行うとおっしゃられていた。

こうして僕は8月最後の日と9月最初の日に「ガマの油売り」を見物したのだ。
前述のとおり、「ガマの油売り」は、そうそう見られるものではない。
実にありがたいものなのだ。
そんなありがたいものを
8月の終わりと9月の初めに見ることができるなんて、
なんともいい節目ではないか。

振り返れば7月から8月にかけては、
どうも歯車がかみ合っていない感じがしたものだ。
仕事で腹が立つことも多かった。

先日もそうである。
とあるキャンペーンの企画を依頼されたのだが、
それはすでに途中まで進行しているものだった。
たぶん、途中まで自分たちがやっていたものがニッチもサッチもいかなくなって
丸投げしてきたのだろう。
事実、その途中まで進行していた企画内容はズサンとしかいいようがないもので、
ABCDという4つのキャンペーン要素があるとすると、
ABを立てればCが成り立たず、
なんとか整合性をつけて
ABCをまとめようとすると
今度は
Dが成り立たないというシロモノだった。
いったいナニをどう考えれば、
こんな企画になるのかを僕はその仕事の担当者に問うた。
答えのかわりに帰ってきた言葉は、
すでにクライアントからも
OKが出ているので、
なんとかこの方向性でまとめられないものかというものだった。

そこで僕は1つひとつ丁寧に、でも口調は厳しく、
この企画のズサンさを挙げていった。
担当者もようやくそれに気づいたようで、
最後のほうは涙目になっていた。
スケジュール的にも厳しいことだし、
僕はこの仕事を断ろうと思った。
しかし、渡世の義理もあれば売上げもほしい。
スケジュールは組み直し、
いまある企画の矛盾部分については
僕が修正を加えていいことを条件に結局は引き受けた。

キャンペーンの開始は1022日からなので、
今月いっぱいが勝負である。
毎日が充実したいい
9月にしたいものだ。

9月になるとよくラジオから
アース・ウインド
&ファイアーの『セプテンバー』が流れてきたものだが、
この曲は
12月に9月のことを想い出している歌である。

気がつけば今年も残り4か月。
ということは、僕の
3年間にわたる厄年生活も
いよいよカウントダウンに入ったといっても過言ではあるまい。
20代の厄年のときは自然気胸なる病気で入院・手術したが、
おかげさまで今回の厄年は大過なくここまで来ている。
来年の節分まで、このままなんとか逃げ切りたいものである。


この文章を読んでくれるいるみなさんのなかにも、
9月の始まりをひとつの区切りとしてとらえている方もいると思う。
今年の
12月にこの9月を振り返ったとき、
素敵な想い出が数多く思い浮かぶことをお祈りしたい。


2008.09