エルヴィス・コステロ「アリスン」

コステロといえば、
たいていの人はエルビス・コステロを思い浮かべるだろうが、
僕はついつい子どもの頃大好きだった
アニメの“アボットとコステロ”を思い出す。

ひょろりと細くて背の高いアボットと、
太っちょで小さなコステロがまき起すドタバタ劇を
僕は弟と一緒にお腹をかかえてゲラゲラ笑いながら観ていたものだ。

たしか
1987年だったと思うが、この“アボットとコステロ”が
なぜかテレビ東京で再放送された。
テレビ東京はたまにこういううれしいことをやってくれるから侮れない。

僕は会社の同僚からその情報を聞き、毎日録画していた。
その面白さは全然色あせてなく、
観るたびに子どものころのようにゲラゲラと笑えた。

エルビス・コステロのコステロは、
この“アボットとコステロ”からとったという説があるが、
一方では母方の姓であるというハナシもある。
真偽は不明だ。
ちなみにエルビスはプレスリーのエルビスであるという。
なんとも、ヒトを喰った芸名をつけたものだ。

エルビス・コステロは1977年、
ニック・ロウのプロデュースによりデビューした。
デビュー当初はパンキーな曲が多く、
1978年の初来日のときは学ラン姿で銀座にトラックで乗りつけ路上演奏を行うなど、
まさに「怒れる若者」というか「イカれた若者」ぶりを発揮していた。

そのコステロの曲のなかで、
僕がいちばん好きなのが『アリスン』である。
この曲は木村拓哉が出演したなんかのドラマでも使われていたそうなので、
知っている人も多いと思う。

自分ではない、ほかの男性に愛されている愛する人を静かに見つめる、
切ないオトコの心情をしっとりと歌った美しいバラードである。

横恋慕というのは実にやっかいなものではあるが、
クラプトンの『レイラ』しかり、ストーンズの『アンジー』しかり
名曲が数多く生まれているのも事実である。

仮に結果的に、すぐれた作品をつくれるという保証があったとしても、
僕はやっぱり横恋慕なんてしたくない。

ジェラス・ガイな僕のことだ。
きっと、耐えられないだろう。


2007.01