チャック・ベリー「ジョニー・B・グッド」


4年前の今日の早朝、僕は東京駅にいた。
改札に向かおうとしたら、がたいのいい男数人が警官に連れられ、
僕と同じように改札に向かっていた。
なんだろうと思って近づいてみたら、
その男たちの腰には縄がかけられていた。
この日、僕は護送というのを初めて見た。
この後、男たちは新幹線に乗せられ、西へと向かって行った。

そんなことを思い出しながら朝刊をめくっていたら、
生活欄に僕が大好きなケーシー高峰さんの記事が載っていた。
ケーシーさんは
2005年に舌ガンを煩い、舌の手術をした。
漫談師にとってしゃべられなくなるのは死を宣告されるのと同じである。
しかし、ケーシーさんはガンと闘い、ガンを克服し、
いまも元気に舞台で得意の医学漫談を披露している。

記事によると2004年の秋、
ケーシーさんは舌の左側面に白いポチッとしたものを見つけたという。
口内炎かなと思ったそうだが痛くないのでそのまま放置していたら、
白いポチッはだんだい大きくなり、
翌春にはその大きさが
2センチになっていたという。
痛まないが固く盛り上がって、
ものを食べると歯や頬の内側に当たって違和感があったそうだ。
そうしているうちにお酒がまずくなり、
なにを食べても味が半減したように感じはじめ、体重も減ったという。

そして、歯科医の姪に「白板症だと思う。大きな病院へ行って」といわれたそうだ。
白板症とは、口腔の粘膜の一部が白変する病気で、
1割近くがガンに移行すると記事には書かれていた。

実は僕も、この白板症を煩ったことがある。
3年ぐらい前、舌の中心部に白いポチッとしたものを見つけたのだ。
舌先でその部分に触れると、そこだけ感触が違っていた。
痛くはない。
しかし、どう見てもその舌は異常であった。

僕は舌ガンを恐れた。
理由があった。
僕の大叔父の
1人が舌ガンで亡くなっているのである。
大叔父も最初は口内炎だと思っていたそうである。
しかし、それはガンであった。
そして、かつて大塚にあった癌研病院で手術を受け、舌を全部摘出した。
僕も見舞いに行った。
もちろん口はきけず、人相も大きく変わっていた。
一時は退院したのだが、再入院となり、そのまま帰らぬ人となった。
いまから
20年前のことである。

そんなことがあったので僕はガンのなかでも、とりわけ舌ガンを恐れていた。
それが現実として自分の身にも起きようとしていたのである。
僕は恐怖心と闘いながら、口腔外科を訪れた。
診察してもらった結果は、ガンではなかった。
が、今朝の新聞記事にもあったように
場合によってはガンに移行する危険があるといわれた。

「で、どうすりゃいいんですか
?」と震える声で先生に尋ねたところ、
先生は陽気な声で
「まあ、しばらく様子を見て、もし白い部分が大きくなったら考えましょう」といった。
そして後日の比較検討の資料として、僕の舌を写真に撮った。

それから今日に至る訳だが、舌の白いポチッは多少あるかなという程度で、
以前より小さくなっている。
これなら大丈夫だろうということで、いまは安穏と暮らしている。

そういや先日、これまた僕の大好きな毒蝮三太夫さんが、
朝日新聞に月イチで折り込まれている
「私の財産」というタブロイド判のフリーペーパーにおいて、
ご自分の闘病生活について語られていた。
毒蝮さんは
2年前に腸閉塞で入院し、手術を受けたそうだ。
それまで病気知らずだった毒蝮さんは、
病気をしてみて、あらためて健康は財産ということを実感すると語られていた。


ケーシーさん同様、毒蝮さんも病を克服し、
いまも元気にラジオやテレビで「汚ねぇババアだなぁ」などと毒舌を吐いている。
大の毒蝮ファンの僕としては、実にうれしい限りだ。

毒蝮三太夫という芸名は立川談志師匠がつけた。
「本名の石井伊吉
(いしいいよし)じゃ誰もおぼえちゃくれないだろう」ということで、
毒蝮三太夫と名づけたというのは有名なハナシである。
一方、ケーシーさんは医師を主人公としたテレビドラマ“ベン・ケーシー”からケーシーを、
そして女優の高峰三枝子さんの大ファンだったことから高峰をとったという。

毒蝮三太夫にケーシー高峰。
お二人ともすごい芸名である。
そして、そのすごい芸名に名前負けせず、
いまも芸能界という浮き沈みの激しい世界の第一線で活躍されているところが素晴らしい。

しかもその芸風は、まさにオリジナル。
唯一無二の、誰もマネのできない芸風を確立している。

僕は21年前に一度だけ毒蝮三太夫さんに会ったことはあるが、
ケーシーさんを生で観たことがない。
ぜひ一度、ケーシーさんの舞台を観てみたいものだ。

毒蝮さんとケーシーさんは、いつまでも元気に長生きしてほしい。
心からそう思う。

偉大なるロケンロールオリジンの一人、
かの『ジョニー・
B・グッド』などで知られるチャック・ベリーは
先月で
81歳を迎えた。
ケーシーさんは
73歳、毒蝮さんは71歳。
まだまだいけるぜ、ゴーゴーゴー♪


2007.11