チープ・トリック「甘い罠」

日本武道館といえば、
いわずとしれたロックの殿堂である。
1966年、ビートルズがここでコンサートを行って以来、
内外のビッグアーティストたちがここでコンサートを行ってきた。

この武道館の名を一躍世界に広めたのがチープ・トリックである。

1978年の初来日公演の模様を収めたライブアルバム
At Budokan”は全米4位のプラチナディスクとなり、
チープ・トリックとともに「ブドカーン」の名も
世界中のロックリスナーに知られることとなった。


そもそもこのアルバムは、日本限定盤で発売された。
それをチープ・トリックの友人が
このなかの
1曲をラジオで流したところ突然、爆発的にヒットしはじめ、
みるみるうちに全米
7位まで上昇。
アルバムも日本からの逆輸入盤が飛ぶように売れ、
あわててアメリカでも発売したという。


その
1曲というのが『甘い罠』である。


この当時、
NHKでヤングミュージックショーという番組を放送しており、
海外アーティストのライブをよく放映していた。
チープ・トリックの武道館公演の模様もこのテレビで放送された。
(ように記憶しているのだけれども、間違っていたらごめんちゃい)

王子さまのようなヴォーカリストにカッコいいベーシスト、
おっさんのようなドラマー、そしてヘンなキャラのギタリスト。
この
4人が奏でる音楽は、中学1年生のタカハシ少年をも魅了した。
なかでもいちばん好きだったのが、この『甘い罠』である。


僕もさっそく“
At Budokan”を買いたかったのだが、
お小遣いが足りなくて買えなかった。

うーん、ほしい。でも、お金がない。
そんな僕に救いの手を差し伸べてくれたのが、
僕同様にチープ・トリックのファンになったクラスメイトの
Sである。

Sがある日、イリーガルな手法で
At Budokan”のカセットテープを近所のレコード店から仕入れてきたのだ。


そのカセットテープを、ステレオとラジカセをつないでダビングし、
毎日のように聴いた。
持つべきものは友だと思った。


今年の
10月、チープ・トリックが3年ぶりに来日した。
まさに、いざ鎌倉!ならぬ、いざ渋公
!! 
僕が行かなきゃ、コンサートもはじまるまいという勢いで、
チケットを入手した。

そして「チープ・トリックのコンサートに行くから休ましてくれ」
と事前に専務を脅したおかげで、当日は
6時に会社を抜け出すことに成功。
1時間半という短い公演ではあったが、十分すぎるほど幸せな時間を満喫した。

もちろん『甘い罠』も演奏された。
この曲をはじめて聴いてから
28年。
オリジナルメンバー
4人が奏でる
このロックンロール・クラシックは、まったく輝きをなくしてなかった。


2008
年は僕にとって、北京オリンピックの年ではない。
チープ・トリックの武道館公演から
30年目の節目の年なのだ。
できれば、ぜひ
1日だけでもいいから武道館でコンサートを行ってほしい。
いまの僕の切なる願いのひとつだ。

 

2006.12