ブロンソンズ「マンダム 男の世界」


最近“
70s 日本の雑誌広告(ピエ・ブックス刊)という資料本を買った。
300ページを超すボリュームで価格は3,990円。
この内容で、この価格は良心的過ぎる
!!
近年稀なお買い得品であった。

この本はその名のとおり、
70年代に掲載された雑誌広告を集めたものだ。
ページをめくるごとに懐かしいやら新しいやらで、
買って帰ってきた早々、夢中になって見まくった。

1966年生まれの僕は、
70年代幕開けの頃はもう物心もついていたので、
リアルタイムで
70年代を体験した最年少の世代だと思う。

「高度経済成長期も終盤をむかえ、本格的な大量消費社会に突入し、
庶民の生活が豊かになりつつあった
70年代」(ピエ・ブックス 新刊案内より引用)
といわれているが、
僕が子どもの頃はまだまだバナナは高級な食べ物で、
パイナップルなんかひと房丸ごと誰かにもらった日には、
まるで宝物を見るようであった。
もちろん地域や個々の家庭によって多少状況は違うと思うが、
少なくとも僕のまわりはそんな感じであった。

僕はイチゴが大好きで子どものころ、
大人になってお金を稼ぐようになったら
イチゴを丸ごと
1パック食べてみたいと夢見ていた。
ある日、その夢をかなえる機会があったのだが、
1パック全部はさすがに食べ切れなかった。

家庭用ジューサーミキサーという商品が出てきたのも
70年代に入ってからだったと思う。
うちにはなかったが、友だちの家にはあった。
その友だちの家で飲ませてもらったイチゴミルクジュースは、
僕が少年時代に飲んだ飲み物のなかで
一番おいしかったといっても過言ではない。

イチゴジュースといえば、
神保町にある老舗の喫茶店“さぼうる”のイチゴジュースがこれまた絶品で、
僕はさぼうるに行くたびにイチゴジュースを頼む。
40オトコがイチゴジュースを飲んでいる光景は、
いやはやなんともな感じではあるが、
そんなことは知ったこっちゃない。
とにかく、さぼうるのイチゴジュースは絶品なのだ。

それはさておき、70年代の広告でいちばん印象に残っているのは、
チャールズ・ブロンソンが出演していた“マンダム”の
CMである。
アゴを撫でながら「ウーン、マンダム」と
この
CMを真似していた少年少女は多いはずだ。
かくいう僕もマジックでヒゲを描き、
マンダムごっこをやっていたバカ小僧の1人である。

同じような体験をしていた少年2人が大人になり、
本気でブロンソンごっこを極めたようとしたのが、
みうらじゅんと田口トモロヲによるユニット、
ブロンソンズである。

2003830日、
チャールズ・ブロンソンが亡くなってしばらくしたころ、
新宿のロフトプラスワンでこのブロンソンズによる「ブロンソン葬」が行われた。
モノ好きな僕は、友人と
2人でブロンソン葬に参列した。

この葬儀の最後に唄われたのが
ブロンソンズの『マンダム 男の世界』である。
マンダムの
CMソングにブロンソンズが詞をつけたカバーソングなのだ。

僕はこの『マンダム 男の世界』のメロディを聴くと
条件反射的に反応してしまう。
東京
MXで深夜によくやっている通販番組で、
懐かしいヒット曲を集めたコンピレ
CDの紹介をしているのだが、
ゴハンを食べながら見るともなしに見ているなか、
『マンダム 男の世界』が流れると、ついついハシが止まってしまう。

ブロンソンズのように広告から別のクリエイティブが生まれる。
それは広告制作に携わる者にとって、ひとつの夢である。


2007.04