ブラック「ワンダフル・ライフ」


ようやく昨日、
1ヵ月間続いた“オアシス”という名の地獄仕事から解放された。
ここ
2週間のあいだに、お昼ごはんをちゃんと食べたのはわずかに2回。
今回もいい感じで痩せた
()

仕事がいち段落したところで、いよいよ行くことにした。
先月の健康診断において再検査をいい渡された血液検査にである。

この
1ヵ月間は、白血球をネタにずいぶんと笑い飛ばした。
心配するまわりの人々に対して
「白血病なんてのはだいだいにして美少年がなるもので、
オレみたいなヤツがなるわきゃないって」といっては笑いをとったものだ。

しかし、現実はそうではない。
白血病に美少年も厄年オヤジも関係ないのだ。
なる人はなるし、ならない人は一生ならない。
僕だけがならないなんて保証はどこにもないのである。

昨年、ガンにかかった同僚が、いま出社している。
完治したわけではない。
いまだ人工肛門をつけたままだし、
抗がん治療も続けなくてはならない。
もともと痩せてはいたが、いまはもっと痩せている。

2年前のいまごろは、
当時つき合っていたガールフレンドとの結婚を考え、
マンションも購入しようとしていた。
が、その年のクリスマス前後にそのガールフレンドと別れ、
翌年の春前にはガン告知である。

ある日、後輩のペーターが電車のなかで
「人生には
3つの坂があるといいますからね。
上り坂と下り坂、そしてまさかです」という話をしていたことがあったが、
したり顔のペーターにいわれるまでもなく、
まさに人生にまさかはつきものである。

人生は何ごとも起こりうる。
絶対的な安心なんて、何ひとつない。
だからその日一日を、
いや一瞬一瞬を精一杯生きようなんて説教臭いことをいうつもりはないが、
いつ何がどうなっても心残りのないような心積もりだけはしておきたいと思う。


僕は以前から、人生を楽しむ達人になりたい、と考えていたものだが、
40歳を過ぎてからはさらにそう思うようになった。
僕より年長者で人生を楽しんでいらっしゃる先輩たちがたくさんいる。
そうした方たちを見ていると、
辛いことやムカつくこと、悲しいこと、悔しいことが途中途中にあったとしても、
やはり人生っていいなと思わずにはいられない。

ブラックの『ワンダフル・ライフ』という曲は
1988年、オールド・フォレスターという新しいバーボンのCMソングに使われた。
「昨日までアメリカでしか飲めなかったバーボンがある。
オールド・フォレスター、入荷しました。」というコピーを書いたのは米嶋剛氏である。

僕はこの広告がかなり好きだった。
それはこのブラックの歌によるところが大きい。


人生は素晴らしい。
生きていれば昨日までアメリカでしか飲めなかったバーボンが飲めたりもするのだ。


で、検査結果は異常ナシであった。
前回の検査時には
14,000近くあったのが今回は7,000ぐらいであった。
じゃあ、前回のこの異常な数値の原因はナンだったんだ?となるのだが、
本当に思い当たることがない。
今日も「風邪を引いていませんでした?」と聞かれたのだが、
引いてはいなかった。

まあ、何はともあれ結果オーライである。
今回の一件で、少しはまた人生について真剣に考える機会が持てただけでも、
無意味な経験ではなかったと思う。


2007.06