尾藤イサオ「あしたのジョー」


昨日の朝は、土曜日に引き続き武道館まで行ってきた。
ビートルズが武道館で最初にコンサートを行ったのは
1966630日。
僕が生まれて
4か月後のことである。

128日の日記にも書いたように、
土曜日は武道館でオノ・ヨーコさん提唱による
「ジョン・レノン スーパー・ライブ」が行われた。
果たして今日は何が行われるやなどと考えつつ武道館の前に着いたら、
朝の
8時前だというのにすごい人だかりであった。
いったいナニが
!?今日、武道館で??と思い、
正面入口にまわったら空手の全日本選手権が行われる旨が看板に掲げてあった。

たしかに周りを見渡せば、
いかにも武道家といったオーラを発している老若男女が多い。
みんな背筋がシャンとしているのだ。
僕のようにホテホテ歩いている人など1人もいない。

しばし、開場前の様子を観察したあと、
僕もいっぱしの武道家になったつもりで
背筋を伸ばし胸を張りながら武道館をあとにした。
押忍!!

帰り道、ドーム前を歩いていたら、
またまた武道家然とした外国人の集団に出くわした。
この外国人たちはドームの周りを集団で走っていたのだが、
ガタイが明らかに違う。
いったい何者だろうと思いながらすれ違ったのだが、今日その謎が解けた。

今日の午後、所用を済まし講道館前を歩いていたら、
たくさんの外国人たちが集まっていた。
みんなイタリアとかフランスとかのナショナルユニホームを着ている。
きっと昨日まで行われていた嘉納治五郎杯東京国際柔道大会に参加した選手たちであろう。
昨日、僕がすれ違った外国人たちもたぶんこの大会の参加選手たちだったのだと納得した。

僕は武道というのを一度も習ったことがない。
子どものころ、ブルース・リーに憧れて空手を習いたいと思っていたのだが
近くに道場がなく、泣く泣くあきらめた。
ボクシングやキックボクシングを習いたいとも思ったが、それも実現しなかった。

いまになって考えると、
空手でも柔道でも剣道でもなんでもいいから
1つぐらい武道を会得しておけば良かったなと思う。
イザというとき、自分で自分の身を守るとなったら、
やはり自己流のケンカ術などよりは武道の心得が役に立つと思うからだ。
もちろんジョン・ノレンのように至近距離から拳銃で撃たれてしまっては、
武道の心得もなにも役に立たないが。

日本を代表する空手家たち、
そして国を代表して来日した柔道家たちを目の当たりにし、
僕は武道に思いを馳せた。

有名な話ではあるが、
ビートルズが武道館でコンサートを行うにあたっては、
相当厳しい反対意見があった。
なかには日本の精神を冒涜するなどという意見もあったという。
しかし、ビートルズがコンサートを行い、
その後チープ・トリックやボブ・ディランの武道館公演のライブ盤が
世界的に大ヒットしたことにより、
「ブドカーン」の名前は世界中に知られることとなった。
当時、ビートルズに対してまったく理解を示そうとしなかった当時の大人たちは、
その後どんな人生を歩んだのであろうか
?

数年前、偶然「THE BEATLES TOKYO DAYS」というボックスセットを見つけ、
衝動的に購入した。
いったいナニが入っているのだろうと、
宝箱を開けるようなワクワクした気持ちで開けてみたら、
ビートルズの日本公演のパンフレット、
7114:00公演のチケット、
そして武道館公演の模様を収めたライブ盤
CDなどが入っていた。

チケットは座席番号の印字がなくパンフレットも比較的キレイだったので、
たぶん復刻されたものなのだろうが、
ビートルマニアにとって貴重な逸品であることに変わりはない。

僕は興奮しながらパンフレットを手にとった。
ら、パンフレットには「日本側出演者」として
尾藤イサオさんや内田裕也さんの写真が掲載されていた。
この「日本側出演者」という言葉が実におかしかったことを憶えている。

たまたま昨日、武道館から帰ってきて新聞を読んでいたら、
尾藤イサオさんの娘さんである尾藤桃子さんのインタビューが載っていた。
「おやじのせなか」というコーナーで、僕が毎週楽しみにしている連載である。

このインタビューのなかで桃子さんは
「父、尾藤イサオの『芸』を尊敬しています」
「さんざん母親を泣かせるようなこともして、娘としては許せないところもある父です。
でも芸人、エンターテイナーとしては、超えられそうにないですね」と語っていた。

そりゃそうである。
ビートルズと共演したことのある日本人なんて、数えるしかしないのだ。
それだけでも尊敬に値する。

尾藤イサオの代表曲といえば『あしたのジョー』を挙げる人も多いだろう。
この曲の作詞をしたのが寺山修司。
実は今日
1210日は寺山の誕生日である。
僕が
10代のころ、もっとも影響を受けた男の72歳の誕生日である。
心のなかで静かに祝ってあげたい。


2007.12