ベリンダ・カーライル「輝きのままで」


1980年代にはさまざまなガールズバンドがあった。
日本では以前にもとり上げたことのある
ZELDAが真っ先に思い浮かぶが、
アメリカのガールズバンドといえば、やはり
GO-Go’sであろう。

GO-Go’sはヴォーカルのベリンダを中心とする5人組で、
1982年にリリースした『ヴァケイション』は日本でも大ヒットした。

当時、僕のまわりにもGO-Go’sはいいねという友人が何人かいたが、
僕はイマイチ夢中になれなかった。
なので、
1985年にGO-Go’sが解散したということも知らなかった。

1987年、女性シンガーによる
ヘブン・イズ・ア・プレイス・オン・アース』という曲がヒットした。
よく耳にするこの曲、いったい誰が唄っているのだろうと思って調べてみたら、
ベリンダ・カーライルというシンガーであった。
そう、
GO-Go’sのベリンダであった。

ベリンダ・カーライルは
ちょいとポッチャリ系だった
GO-Go’s時代よりも顔つきがほっそりとし、
大人っぽくなっていた。
僕はなんか、昔の同級生の女の子に偶然出くわしたような感覚で、
ベリンダの顔を眺めていたことを憶えている。

アメリカ西海岸の元気娘たちというイメージで
人気を集めていた
GO-Go’sであるが、
内部ではメンバー間の不和をはじめ、
いろいろなことがあったらしい。
ベリンダもドラッグにどっぷりハマったすさんだ生活を送っており、
それが
GO-Go’s解散の一因ともいわれている。

そのベリンダが1986年、
結婚を機に立ち直り、ソロデビュー。
そしてその翌年にリリースしたのが、
上記の『
ヘブン・イズ・ア・プレイス・オン・アース』である。
この曲でベリンダ・カーライルは
GO-Go’s時代にも成し遂げられなかった
シングル全米ナンバーワンに輝いている。

さらに1989年には、アルバム“ラナウェイ・ホーセズ”をリリース。
このアルバムにはどういうワケかジョージ・ハリソンが参加しており、
オープニングナンバーの『輝きのままで』の間奏部分では、
まさに「ジョージ・ハリソンここにあり
!!」という
神がかったスライドギターを披露している。

僕はこの曲を聴きたいがためだけに、
『ラナウェイ・ホーセズ』を買った。
それほどまでに価値のある、素晴らしい演奏なのだ。

1991年、ジョージとクラプトンの来日直前に放映されたテレビ番組のなかで、
ジョージのスライドギターの素晴らしさについてクラプトンが語っていたとき、
こんな感じのやりとりがあった。

クラプトン「この前、ラジオで君のスライドギターによく似た演奏を聴いたよ」

ジョージ「僕の真似をする人はときどきいるよ。
     でも以前、ブロンドの女の子の曲で弾いたことはあるよ」

クラプトン「ああ、やっぱり君か!? 誰の曲だっけ」

ジョージ「うーん、誰だっけ??」

この直後、2人はベリンダ・カーライルの曲であることを思い出すのだが、
スライドギターの演奏を聴いただけで、
「ん!ひょっとしてジョージ?」とわかってしまうクラプトンもさすがである。

去年、たまたまベリンダ・カーライルがテレビ番組で
『輝きのままで』をライブ演奏しているのを観た。
もちろんギタリストはジョージではない。
間奏部分・・・ギタリストがスライドギターを演奏しだしたのだが、
とても同じ曲とは思えないほど、ヨレヨレでヘッポコなスライドギターであった。

しかし、このギタリストがヘタっぴぃなのではない。
ジョージ・ハリソンが素晴らしすぎるのだ。
なんてったって、あのクラプトンをして
「スライドギターでロックンロールを弾けるのはジョージだけだからね」
といわしめるスゴ腕ギタリストなのだ。

それはさておき・・・このテレビ番組のライブパフォーマンスにて、
ギタリストのスライドギターはヨレヨレであったが、
ベリンダ・カーライルのヴォーカルは伸びやかで実に素晴らしかった。
表情も輝いて、生き生きとしていた。
僕はそんなベリンダをはじめてひとりの女性として美しいと思った。

ベリンダ・カーライルだって、
ダテに人生の修羅場をくぐり抜けてきたわけではないのである。


2007.04