バングルス「マニック・マンデー」


プリンスがアルバム“チェリームーン”を発売したのは1986年。
このアルバムからシングルカットされた『キッス』が全米
1位に輝いていたとき、
2位だったのがバングルスの『マニック・マンデー』である。
実はこの『マニック・マンデー』・・・プリンスが
クリストファーという変名を用いて提供した曲なのである。

バングルスは1981年にロサンゼルスで結成されたガールズバンドで、
1984年にデビュー。
デビューアルバムを聴いたプリンスがギター&ヴォーカルのスザンナを気に入り、
『マニック・マンデー』を提供するに至った。

『マニック・マンデー(Manic Monday)』・・・直訳すれば躁的月曜日である。
振り返るに、もう長い間、躁的な月曜日なんて迎えていない。
月曜日は午前中にくだらない会議が延々と続き、
仕事に支障をきたしたものだ。
日曜日の夜になると「ああ、また月曜日か」と何度思ったことか。

まさに“I wish it was Sunday.’Ccause that is my funday.
という『マニック・マンデー』の歌詞どおりである。

社会人として決して健全ではない。
僕の知り合いの会社は、
社員が毎週月曜日は自主的に
8時前に出社するそうだ。
この会社・・・
2年前は10人規模ぐらいの会社だったのだが、
現在では
40名を超え、今春には初の新卒採用もした。
もともとマーケティングの会社だったのだが、
さまざまな新規事業を立ち上げ、幅広い事業展開をしている。

新規事業といっても、
創業当初からの事業コンセプトはブレていない。
創業時のコンセプトにのっとって事業を拡大しているのだ。
だから、うまくいっているのだと思う。

辞める会社の悪口をいってもしょうがないのだが、
僕が勤務する会社はその真逆である。
僕が勤務する会社の社長は、広告代理業には一切興味がない。
もともと会計士だったのだが、
会計士がつまらなくなって転職を考えていたとき、
たまたま知り合いの広告代理店の社長から「ウチに来ないか」と誘われ、
広告代理店の営業マンになった。
そこで
3年ぐらい勤務した後、
会社に内紛が起きて社員の大半が辞めることになり、社長も辞めた。
そして当時のクライアントにも出資してもらい、
いまの会社を立ち上げた。
創業当時のメンバーが専務と
GMである。

たまたま広告業界に入り、そのまま起業した。
しかし、社長の目標は新しい広告代理店を設立することではなく、
起業することそのものだったのだ。
そして、若き
30代の有名社長の仲間入りをしたいのである。
そのためには広告代理店なんかをチマチマやっていてはダメだと常々いっていた。
新しい事業を興さなきゃとずっといっているのだが、
何ひとつカタチになっていない。

なぜか?
それは志がないからだと思う。

社長の事業スタンスは
「こういうことがやりたいからみんな協力してくれ」ではなく、
「なんか儲かる話はないかみんな」なのである。

今年に入って、会社は
いろんなビジネスパートナーを紹介してくれるというコンサルと顧問契約を結んだ。
つい先日まで、大手化粧品会社の役員と太いパイプを持つ若い女性社長と組んで
新しいフリーペーパーを出すといっていたのだが、
話は出資に関する話がこじれポシャったらしい。
この女性社長は資金の半分を、
僕が勤務する会社が負担してくれると思っていたらしいのだ。
よくある話である。

新規事業に関しては以前チラリと書いた化粧品を販売するほかに、
格安印刷や
DM、プライバシーマークのリースなどの代理店を行うなんて話も聞いた。
飲食に関するサイトを立ち上げるという話もある。
まさに、なんでも屋だ。

そんな会社の噂を耳にするにつけ、
僕と親しい社員は口々に「ウチの会社はどこにいこうとしてるんでしょう」という。
その気持ちは痛いほどよくわかる。

退職願いを提出した際、
僕は専務に「僕はこの会社の社員でいることより、
広告屋であることを優先したい」といった。
もともとデザイナーである専務は、
そんな僕をうらやましいといったが、本心はどうだかわからない。

ウチの会社の営業マンはいま10人近くいるのだが、
もともとはみんな広告業界未経験者である。
広告に対する情熱が感じられるのは、
516日の日記でとり上げたペーターぐらいである。

営業マンたちは会社がどこに向かおうがかまわないかもしれないが、
デザイナーたちはそうはいかない。
みんなデザイナーになりたくて、デザイナーになった人たちなのだ。
会社がどんどんどんどん広告代理業から離れていったら、
いまいるデザイナーたちはどうなってしまうのだろうか?

僕はそれが心配だ。

新撰組をこよなく愛する僕が、
新撰組から一番学んだのは「志」である。
それは僕の人生の指針でもある。

いま勤めている会社の社員として迎える月曜日も、
早いものであと
5回である。
せめて来週からは晴れ晴れとした気分で出社するように心がけよう。

それがきっと、有終の美というものにつながると僕は考える。


2007.06