爆風スランプ「嗚呼!武道館」


昨日は、近所の牛天神さんの納涼大会であった。
焼き鳥、枝豆、焼きそば、コロッケ、イカ焼きなど
近所の人たちによる屋台が出てにぎわいを見せる、
僕のなかでは夏の一大イベントのひとつだ。

牛天神さんは、湯島天神さんのような大きな神社ではない。
春日通りからかなり入り込んだところにヒッソリとある小さな神社である。
でも僕は、この牛天神さんのコマーシャリズムとは無縁の
知る人ぞ知る感や地域密着型の親密感が好きで、
機会があるごとにお詣りをする。

昨日の夕方、桜新町→銀座での用事を済ませた帰り道、
牛天神さんに寄った。
納涼大会は
5時スタートなのだが、
僕が立ち寄ったときにはすでにたくさんの人がやって来ていた。
昨日も暑かったので、僕はノドがカラカラだった。
夕方である。
ノドが乾いたといったら、もうビールしかなかろう。
僕は
1250円の生ビールを頼んだ。

「まだはじまったばかりだからね、キンキンに冷えてるわよ」と、
いつも牛天神さんの催し物のときに見かける
威勢のいいおばちゃんから渡された生ビールは、
本当にキンキンに冷えていて思わずうなりたくなるぐらい美味しかった。

人によって好みはあると思うが、
僕は凍る寸前までキンキンに冷えたぐらいのビールが好きだ。
上野の駅前にあるレストラン「聚楽台」の生ビールがなぜ東京一美味しいかというと、
ビールの温度にあると思う。
「聚楽台」のビールは、いつもいい感じで冷えているのだ。
老若男女入り交じり、地方色豊かななか「聚楽台」でビールを飲むのは、
僕にとっての“小確幸”
(by村上春樹)である。


今朝も週末恒例の早朝ジョギングへと出かけた。
牛天神さんはどうなっているかなと思って、ちょっと立ち寄ってみた。
境内には屋台の枠だけが残され、あとはキレイに片づけられていた。
牛天神さんの夏も終わりである。

せっかくだからお詣りしていこうと思ったのだが、
一心不乱にお祈りしている中学生らしき男の子がいたので、
邪魔しちゃ悪いかなと思い、お詣りをせず牛天神さんを後にした。

朝の8時に天神様に一生懸命お祈りしている男の子。
きっと受験生なのだろう。
僕の経験からいえば、受験なんて成功しようが失敗しようが
人生なんとでもなるものなのだが、
当事者にしてみれば人生の一大事であろう。
すがれるものがあるなら、何にでもすがりたい気持ちはわかる。

かくいう僕もそうであった。
高校受験を間近に控えたある日、父が僕にこういった。
「きっと受かるよ」と。
なぜなら、僕が毎朝仏壇に手を合わせているからだという。
ウチは浄土宗というだけで、
とりたて何かの宗教団体に属しているわけではないのだが、
ご先祖様の供養だけは子どもの頃からその大切さを説かれてきた。
その一環として、
朝出かける前に神棚と仏壇に手を合わせるのを自分の習慣とした。

特に何かの目的があったワケではない。
誰かに指示されたワケでもない。
ある日、自発的にそれを習慣としたのだ。

毎日、仏壇に手を合わせている人間が、
受験に失敗するワケがないというのが父のいい分だった。
僕は、このころすでに父親を憎んでいた。
しかし、その父の言葉は、僕を大いに励まし、大きな支えとなった。

人を勇気づけるのも言葉であれば、
人を傷つけるのも言葉である。
僕はそのことを痛いほど学んできた。

今朝、牛天神さんにいた男の子に、
僕は「大丈夫。きっとうまくいくさ」と心のなかで励ましながら、
ヨタヨタと走り出した。

今日もいつものように武道館の前を通ってきた。
1988年、『ランナー』の大ヒットで紅白歌合戦にも出演した爆風スランプが、
武道館ではじめてライブを行ったのは
1985年の1213日である。
僕ははっきりいって、熱心な爆風スランプのファンではない。
なのになんでこんなことを憶えているかというと、
武道館ライブに先立ち発売された『嗚呼
!武道館』というシングルの歌詞に
その日付が盛り込まれていたからだ。

『嗚呼!武道館』のプロモはTVKの“ミュートマJAPAN”で何度も流され、
僕はそれを見ているうちになんとなく歌詞を憶えてしまったのだ。

19851213:爆風スランプ初の武道館公演

受験には絶対に出てこない、どうでもいい知識である()


2007.08