浅田美代子「しあわせの一番星」

1214日といえば、
なんといっても赤穂浪士討ち入りの日である。
武士道を生きる指針とし、
尊敬する人物は?と問われたら
「新撰組副長・土方歳三」と元気よく答える僕にとって、
赤穂浪士は外すことのできないテーマのひとつなのだが、
今日は別の話題をとり挙げる。

ノストラダムスだ。

1214日はノストラダムスの誕生日らしいのだ。
僕がノストラダムスを知ったのは
1974年の春である。


よく晴れた心地よい日曜日。
僕は祖母と、長女を出産したばかりの叔母のお見舞いに出かけた。
病院に行く前、僕は祖母からテレビランドという雑誌を買ってもらった。
仮面ライダーとかウルトラマンとか、
そういうヒーローものの写真がいっぱい載っている少年向けの人気雑誌だった。

叔母の病室に入り、
あたたかな日曜日の日差しを受けながら、
僕は買ってもらったばかりのテレビランドを開いた。


巻頭特集のタイトルは「
19997月。人類は滅亡する」であった・・・。

もし、この当時のテレビランド関係者がいたら、
僕は問いたい。
何ゆえあって、こんな特集を組んだのか?

しかも巻頭で!! まさに「責任者出てこい」という心境である。

気にしたくないことなのだが、
知ってしまった以上気になってしまう。
僕にとってノストラダムスの大予言は、まさにそれだった。
この年の夏休みに公開された映画まで観にいったほどだ。

僕は33歳で死んじゃうんだ。
そんな恐怖におののくタカハシ少年の心の支えとなっていたのが、
浅田美代子である。

読者よ! 友よ!! 笑うなかれ!!!!!
当時、僕は浅田美代子に夢中だったのだ。

死ぬときは僕ひとりじゃないんだ。
浅田美代子も一緒に死んじゃうんだというワケのわからない理由で、
自分を鼓舞していたのである。

僕が浅田美代子のファンになったのは、
同じくこの年の夏休みに公開された映画を観てである。
タイトルは『しあわせの一番星』。
浅田美代子の
5枚目のシングルと同名のこの映画の主演は、
もちろん浅田美代子だった。

祖父に連れられて観にいったこの映画で、
タカハシ少年は浅田美代子に恋したのである♡

浅田美代子はこの年、
“あした輝く”という映画にも主演している。
里中満智子原作のこの映画は志垣太郎が相手役で、
キスシーンまであった。
そのシーンを見たタカハシ少年の心は、
まるで失恋小僧のようであった。
キスシーンの前にビスケットを食べるというシーンがあったせいで、
僕はその後ビスケットをいっさい食べなくなり、
志垣太郎がテレビに出ているとチャンネルを変えた。
おまけに里中満智子の名前を見るのも聞くのもイヤになった。

そんな傷心のタカハシ少年に、
さらに追い討ちをかけたのが吉田拓郎とのロマンス、
そして結婚である。
僕が吉田拓郎を絶対に聴かなかったことはいうまでもない。

浅田美代子は、
1983年にTBSのドラマで芸能界に復帰した。
このときも大喜びしたものだが、
いまでは浅田美代子より風吹ジュンのほうが大好きである。
オトコ心も移ろいやすいのだ。

1974年といえば長嶋茂雄が引退したり、田中角栄が失脚したり、
ウォーターゲート事件でニクソン大統領が辞任したりと、
歴史的にみても大きな出来事があった年なのだが、
僕にとって
1974年といえば、ノストラダムスと浅田美代子ということになる。


それにしてもノストラダムスの大予言を日本に知らしめた五島勉という人は、
いまいったい何をしているのだろうか?
もしチャンスがあったら
「あなたにとってノストラダムスの大予言とは何だったのですか?」と聞いてみたい。
本当にビビッたんだから。


2006.12