一昨日、2月14日の公開に先がけて
宮藤官九郎監督・宮�ｱあおい主演の話題作にして
タカハシカツトシ第1回出演作品(!!)である“少年メリケンサック”を観てきた。
公開前なので映画についての詳細は控えさせていただくが、
前評判どおりの、かなり、相当、おもしろい映画であった。

ただ映画全体として観た場合、あまりにも前半部分に勢いがあった分、
終盤はちょっと息切れ気味かなという印象を受けた。
サッカーの試合でいえば後半25分まで3-0で勝っていたのに、
残り20分でたて続けに点を取られ、
終わってみたら3-3の引き分けだったという感じである。

この映画には80年代の日本のパンクシーンをリードした
アナーキーの仲野茂やスターリンの遠藤ミチロウ、
スタークラブの日影晃なども出演している。
が、3人ともパンクとは全然関係のない役どころである。

のだが、スクリーンに映し出されたこの3人を観て、僕はまさにパンクだ!!と思った。
パンクとは別に髮を逆立てたり、
セックス・ピストルズの音楽を聴くことだけがパンクではない。
生き方そのものがパンクか否かなのだと僕は思って生きてきた。

型にはまらないことがパンクだと僕は信じている。
遊び心がパンクにとって大事なことだと思っている。
だから、パンクロッカーとまったく無関係の役で
この映画への出演を快諾した3人の姿に、
パンクとしてのあり方をあらためて教えられたような気がするのだ。

そういった意味でこの“少年メリケンサック”は、
映画の本筋とはまた別の部分でも、実に観どころの多い映画だと思う。

日本のパンクバンドの魁といえば、僕のなかではアナーキーである。
1980年、アナーキーのデビュー曲『ノット・サティスファイド』をはじめて聴いたとき、
生意気にも「ついに日本にもこんなバンドが現れたか」と思ったものだ。

このアナーキーを痛烈に批判していたのが遠藤ミチロウである。
それに対して仲野茂も負けてはいなかった。
1982年に公開された石井聰亙監督の“爆裂都市”にスターリンが起用され、
アナーキーが起用されなかったことに腹を立て、
映画の打ち上げの席に殴り込みをかけたという逸話も残されている。

このようにしばらく犬猿の仲であったミチロウと仲野茂だが、
後に“爆裂都市”の企画にも携わった泉谷しげるの仲介によって和解したという。

その2人が奇しくも
“少年メリケンサック”で共演していると思うと、実に微笑ましい。

宮藤官九郎は、この“少年メリケンサック”のクランクイン直後、
“爆裂都市”を観て「負けていない、大丈夫」と思ったということをブログに書いていた。
血なまぐさくはないが暴力の臭いにあふれていた“爆裂都市”と、
コメディタッチの“少年メリケンサック”を並べて批評することは難しいが、
たしかに映画として“少年メリケンサック”は“爆裂都市”に負けてはいないと思う。

アナーキーがデビューした1980年、中学2年生だった僕はもうすぐ43歳になる。
“少年メリケンサック”で佐藤浩市が演じた
「高円寺のシド・ヴィシャス」ことアキオは50歳という設定である。
佐藤浩市が魅せてくれた50歳のパンクロッカーは、とてもカッコよかった。
あらためて僕も、あんな50歳になりたいなと思った。
型にはまらず、遊び心を忘れず、年齢を重ねていきたいなと思う。

80年代、アナーキーやスターリンをリアルタイムで聴いていた人の多くは、
すでに40代・50代である。
生きるためには妥協もしてきたと思う。
いまも苦悩のまっただ中にいる人も多いだろう。

“少年メリケンサック”は、そんな人たちに観てほしい。
きっと、何かを想い出させてくれるはずだ。

2009.01