10cc「アイム・ノット・イン・ラヴ」


先日チラリと書いたロバート・ハリス兄の最新著書に、
キャロル久末さんの話題が書かれていた。
キャロルさんは
J-WAVE草創期からのナビゲーターの一人で、
僕も彼女の番組をよく愛聴していた。

このキャロルさん、
最近めっきり名前を聞かなくなったなと思ったら、
ナントいまはほとんどリタイヤし、
40代にして悠々自適の生活を送っているという。

といっても別に宝くじに当たったとか、
莫大な遺産を相続したというワケではない。
ハリス兄の本によるとキャロルさんは、
以前よりアメリカ人の旦那さんと共同でプロダクションを設立し、
CMプロデューサーやディレクターとして働きながら、
2人でリタイヤできるだけの資産を蓄えてきたという。

そして
34年前に完全にリタイヤし、
現在はメキシコに質素な家を借り、
旅をしたり、好きな絵を描いたりしながら人生を謳歌しているそうだ。

「この前はフランスに行って、
友達の家に泊まりながらヨーロッパを旅したわ。
改めて自分が『どこにでも行ける』ことを実感しながら、
毎日を過ごしているの」というキャロルさんの言葉が紹介されていた。
(ロバート・ハリス著“ワイルド・アット・ハート”東洋経済新報社刊より引用)

キャロルさんは、以前より素敵な大人の女性だなと思っていたが、
このことをハリス兄の本で知り、ますますその思いを強くした。

さらにハリス兄の本には、こんなエピソードが紹介してあった。
帰国していたキャロルさんがロスに向かうというか帰る際、
ちょうどピークシーズンだったので航空運賃が割高だったという。
そこでキャロルさんはどのルートで帰れば
いちばんチケット代を安く抑えられるか丹念に調べ上げ、
結局
6時間余計にかけてソウル経由の飛行機で帰ったという。

これをケチととるか利口ととるかは人それぞれだと思うが、
僕は実に賢いやり方だなと思った。
キャロルさんも
6時間長く飛行機に乗っている分、
たっぷり本が読めるからいいじゃないと語っていたという。

僕は正しいお金の使い方というのは、
小さく節約して大きく使うことだと思う。
日々の細々としたものを節約し、
そうして貯めたお金を景気よく使うのだ。
よくシャンプーや洗剤が残り少なくなってきたら
水を入れて使うという人を「セコい」などと馬鹿にする人がいるが、
僕はそうは思わない。
そういう使い方はサイフにやさしいばかりでなく、
環境にもやさしいと思うのだ。
なにひとつデメリットはない。
大いに奨励すべきことだと思う。

だいたいそんな風にしてモノを最後まで大事に使い切る人は、
お金だってムダに使ったりはしないだろう。
よほどの守銭奴でない限り、
そうして貯めたお金を生きたことに使うセンスの持ち主だと思う。
僕はそういうお金の使い方に憧れる。

キャロルさんだって、
夫婦で一生のんびり過ごせる分だけの蓄えがあるのだ。
何も
6時間かけて2万円・3万円を節約する必要はない。
でも、キャロルさんのそのお金と時間の使い方は、
すごく優雅だと思った。

キャロルさんがJ-WAVEでナビゲーターをしていたとき、
10ccの『アイム・ノット・イン・ラヴ』が番組内でかけられた。
その際、キャロルさんは
10ccのバンド名の由来が、
男性がエクスタシーに達した際に発する平均的な量×メンバー
4人分で
10ccということをいった。
僕は
10ccについてはあまり詳しくなかったので、
そのキャロルさんの言葉をすっかり信じた。

しかし、このハナシは実は“つくり”で、
真相は
10ccが契約したレコード会社の社長が見た夢に
「世界で最も偉大なバンド、
10cc」と書かれた看板が出てきたので
縁起を担いで
10ccと名付けたという説もある。

どっちの説が正しいかは知らないが、
10ccのバンド名の由来について
サラリと公共の電波で語れるキャロルさんはさすがであった。
まさに大人の女性である。

僕も人生の理想は、ある程度の資産を蓄え、
仕事の目処がついたら日本を離れ、海外で暮らすことである。

キャロルさんのような人生に少しでも近づけるよう、
まだまだ頑張らねばと思った。

2007.08